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予算(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

13/01/17


前回は予算の基本的な性格を説明しました。今回は、実態が予算からかい離した場合の修正活動である、コントローリングについてお話します。

企業に於いては、景気の浮き沈みや競合の攻勢などによって、実際の販売成績が予算から乖離することは珍しくありません。そうした場合、単に予測を変更するように予算の数字を変更して乖離を埋めるということは通常は許されません。その代わりに、様々な打ち手によって実態が予算に近づくように、実態の方を修正する努力が求められるのが普通です。こうした、基準との比較、基準に近づけるための活動をコントローリング活動と呼びます。

企業の予算の場合、対外的に公表するための財務諸表を作成するのは年次、半期、或いは四半期毎などですが、その財務諸表に反映される実態の数字が基準である予算から乖離しないようにするためには、実際のビジネスについての改善活動を逐次行う必要があり、そうしたコントローリング活動を支える管理レポートの作成はより頻繁に行われなければならないことになります。

また、こうした改善活動を行うためには、乖離が生じている原因をなるべく具体的に把握する必要があります。原因を突き止めた上で、それを正す、或いは代替的な手段を講じる訳ですが、原因を把握するためには、管理レポートはある程度詳細なものであることが必要です。最終的な財務諸表はルールにより定められた内容を中心に記載されていますが、内部者である経営者やその他の管理者が原因を究明したり、打ち手を検討するためには、それだけの内容では全く不十分です。また、レポートの形式も財務会計に基づく財務諸表と、管理会計に基づく管理レポートでは大きな違いがあります。

管理レポートを用いてまず行わなければならないのは、差異分析です。例えば、営業利益が予算を下回った場合、それが収入の落ち込みによるものか、費用の上ぶれに依るものか、或いは、どこの支社の営業利益が原因かといったところから始めます。収入の落ち込みが原因であった場合、それは販売価格の低下によるものか、或いは販売量が予算を下回ったためか、さらに販売量が下回っていたとしたら、それは市場全体の落ち込みに依るものか、それとも当社の市場におけるシェアが落ち込んだためなのかを分析します。更に、シェアが落ち込んでいたとしたら、主にどこの地域でのシェアダウンが原因か、このように原因を細分化してゆき、例えば、営業所単位、或いは営業所の課、係単位まで原因を遡ることも可能です。

以上のような作業を通じて、原因が特定出来たら、それに対する打ち手を講じます。例えば、どこかの支店の営業力が弱いようであればそれを組織に補強する、或いは、その地域に集中的に広告・宣伝費を投入する、或いは、収入の落ち込みをカバーするために、その支店のコスト削減を徹底させる、などといったことが考えられます。

このように、予算の策定から始まって、実施、そして実績を基準である予算と比較分析して問題点を発見、そして問題点に対する対処行動をとる、こうしたサイクルをPLAN,DO,CHECK,ACTIONの頭文字を取ってPDCAサイクルと呼びますが、予算を策定することの最大の意味、メリットは、実はこのPDCAサイクルを通じた改善活動であるといっても過言ではありません。

これは私達個人の生活にも応用できます。計画を立て、実際がその通りに行かなければ、何が原因だったのかを考え、それを改めれば良いのです。曰うは易しと言いますが・・・。


纏めの一言は
「予算を策定することの最大の意味、メリットは、PDCAサイクルを通じた改善活動である」

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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