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貿易収支の赤字は心配無用

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

12/12/26

今日は、日本の貿易収支についてです。日本は貿易立国だとか輸出立国だとか言われていますし、日本製品は品質が良いとも言われていますから、輸出がとても多いのかと思っている方も多いと思いますが、実は輸出と輸入は大体同じくらいなのです。昨年の大震災の後は、工場が止まって輸出が出来なかったり、原子力発電所が止まったために石油や天然ガスを輸入して発電したりしましたから、貿易収支は赤字になってしまいました。輸出よりも輸入の方が多かったのです。
昨年度の輸出は65兆円、輸入は70兆円で、差額は4兆円の赤字でした 。1兆円という数字は、1の後にゼロが12個ついた数字ですが、イメージが湧かないでしょうから、大人一人あたり1万円だと思って下さい。日本人の大人の数は、大体1億人なので、1兆を1億で割って、大人一人当たり1万円というわけです。
先ほどの数字に戻りましょう。昨年度の日本の輸出は、大雑把に言えば、大人一人あたり65万円、輸入は70万円で、差し引きした貿易収支はマイナス4万円でした。今年度も同じくらいになりそうです。
輸出の多くは機械類です。自動車、コンピューター、設備機械などは日本が得意とする分野で、日本製品の品質の高さは世界中が認めています。鉄やプラスチックなどの素材も、品質が高いので世界中で売れています。もっとも、日本製品は価格も高いので、誰でも買えるというわけではありません。消費者としては比較的豊かな人々を対象としています。一方、設備機械などは、壊れにくい事などが評価されています。
輸出の半分はアジア諸国向けです。アジアの国々の消費者も最近では豊かになり、日本製品を買う人も増えています。また、アジア諸国が欧米先進国に製品を輸出する際に、日本製の部品を使ったり日本製の設備機械を使ったりするケースも多いようです。
日本の輸出は、リーマン・ショックの前は85兆円、すなわち大人一人あたり85万円ほどありましたが、昨年度は65万円になってしまいました。原因の一つは、世界的に景気が悪くなったことです。リーマン・ショックで悪くなった分はある程度戻ってきましたが、今度はヨーロッパの債務危機という問題が深刻化して、これも世界の景気に悪影響を与えています。これについては、近いうちに御話します。
輸出が大きく減った今ひとつの原因は、円高です。リーマン・ショックの前は1ドルの物を輸出すると120円になっていたのが、最近では80円にしかならないので、輸出企業が赤字になってしまい、輸出をやめてしまう例が増えたのです。
輸入の話に移りましょう。輸入は、大体半分が工業製品で、残りの半分が原料や燃料や食料などです。特に多いのが燃料で、石油や石炭や天然ガスなどだけで輸入全体の3分の1くらいを占めています。
洋服や家電製品などは、比較的安いものはアジア諸国からの輸入品が多くなっています。アジア諸国の方が日本よりも人件費が安いので、アジアで作った物の方が値段が安いのです。そこで、高級品は日本から輸出して、比較的安いものはアジアから輸入する、という分業が行なわれているのです。
欧米先進国からは高級品を中心に輸入していますが、彼等の得意としている物と日本が得意としている物が比較的似ているため、欧米先進国からの輸入はそれほど多くありません。
資源の輸入は、中近東諸国から石油などを、豪州から石炭や鉄鉱石などを輸入しています。
相手地域別に貿易収支を見ると、資源国との間では赤字、それ以外の国との間では黒字となっています。資源国以外に対しては黒字なのですから、まだまだ日本の競争力は強いと言って間違いないでしょう。
ところで、日本は貿易赤字になってしまって大丈夫なのでしょうか。心配をしている方も多いと思いますが、少なくとも当面は大丈夫です。日本はこれまで、貿易収支の黒字分を使って外国の国債や株式などを買ってきましたから、そこから莫大な利子や配当が毎年はいります。こうした利子などと貿易収支を合計したものを経常収支と呼びますが、こちらは昨年度も大幅な黒字でした。
将来は、少子高齢化が進み、現役で働く人が足りなくなって貿易収支が大幅な赤字になり、利子や配当では埋められない時代が来るかもしれませんが、早くても10年か20年か先の事でしょう。それほど心配する事はありません。
今日のキーワードは「貿易収支の赤字は心配無用」です。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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