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財務数字とリスクマネジメント

中村 裕昭 国際企業分析、経営リスクマネジメント

12/12/10

今日は、財務数字とリスクマネジメントの関係についてお話をしたいと思います。

財務数字とは、会社の財務諸表などで発表される数字のことで、たとえば「売上高」や「資本金」など様々な数字があります。一般的には、一人当たりの売上高が伸びていれば、元気のある企業であるとか、自己資本の比率が高まれば、安定度が高まったとみるなど「数字のトレンドを分析する方法」や、様々な「財務指標で分析する方法」などがあります。しかし、そうした財務数字の分析そのものはひとまず財務分析の本に譲って、今日はリスクと財務数字の関係について考えてみたいと思います。

つまり、会社のリスクが、会社の数字とどのように関わっているかを考えてみようというわけです。会社のリスクは、何らかの形で数字に現れます。しかし、数字とリスクの関係を読み解くのはなかなか難しいことです。企業がリスクをとると、「ネガティブな効果」が現れる、つまり財務数字が悪くなる可能性もありますが、「ポジティブな効果」が出る、つまり財務数字が良くなる場合もあります。

たとえば、企業の売上高が伸びているということは、本当に良いことだと言えるのでしょうか。一般的には良いことでしょうが、実は必ずしもそうとは言えません。具体的な例でいきますと、スーパーマーケットなどの小売業の売上高が増えた場合、増えた理由が分からなければ、良いか悪いかの判断はできません。悪い例として、既存店が猛烈な競争に晒されて振るわないため、仕方なく他地域に新店舗を出して何とか売上げを伸ばしたということがありえます。ところが新規店舗にはコストもかかり、大変大きなリスクが伴います。出店直後はなんとか売上が立ったとしても、将来的に屋台骨を揺るがす程の損失が出るかもしれません。一方、良い例として、既存店の品揃えの工夫や、マーケティング戦略の成功によって、競争相手が撤退したためにその企業の売上が伸びていたというのであれば、これは良い売上高伸長だった、ということになります。

売上アップの良し悪しを見極めるにはどうすればよいのでしょうか。ここで、「経営のリスク」が登場します。つまり、経営にはリスクという不確実性が伴っているので、今見ている経営事象にどのようなリスクがあるのかを洞察することによって、数字の意味が分かってくるということです。つまり売上高を見る場合、売上が立つために、企業がどのようなリスクをとって経営行動を行っているかについて洞察を行ってみると、色々なケースが見えてくるということです。

もう少し具体的な例で示してみましょう。たとえば、「製造業」の中小企業で、「売上高は堅調に伸びている」が、「従業員数が急激に減っている」という企業があったとします。こういう企業の場合、良いケースとしては、「製造ラインに新たに新鋭機を入れて、機械化を進め、今までよりも少ない人数で良い製品を多く製造販売をする事ができて、売上高も伸びている」という場合です。一方、困ったケースとしては、たとえば「熟練工が多く退職してしまったので、製造が最早できなくなって、結局他の同業他社から製品を買って、販売会社みたいな形になってしまった」という例です。こうなると、売上はある程度伸びるかも知れませんが、製造をやっているわけではありません。場合によっては、製造ができなくなったにもかかわらず売上が立っているということで、架空売上を立てているかもしれないのです。売上高と従業員数という数字だけをとっても、そこに潜むリスクを検討すると、これだけの洞察ができるわけです。

こうした洞察力を鍛えるには、実際に多くの事例に当たることが肝要ですが、それには長年の経験が必要になります。また、ただ毎日漠然と仕事をしていては洞察力を磨くということはできません。こうした洞察力向上の訓練に有効なのは、経営雑誌や新聞で色々な事例をよく読んで、経営のリスクが企業にどのような影響を及ぼすのかといった点を観察し、上手くいった事例や失敗事例などを、広く頭の中に入れて、世の中ではどのようなことが起こり得るのかということをよく知っておくことです。更に、その事例が自社または取引先であったらどのような事態が発生するかというように、その新聞や経営雑誌に書いてある事例を当事者として考えてみることで、洞察力は鍛えられるのではないでしょうか。

今日のキーワードは、「財務数字の洞察」です

分野: 国際企業分析 経営リスクマネジメント |スピーカー: 中村 裕昭

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