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第2回 (続)モノづくりの変化:モジュラー化、オープン化

永池克明 国際経営論、経営戦略論、アジア産業論

12/12/04

第2回 (続)モノづくりの変化:モジュラー化、オープン化

(1)製品のモジュール化(Modularity)
 単機能で独立した部品同士を組み合わせて全体システムを構成するという設計構想をモジュラー型アーキテクチャといい、システムをこうした部品(モジュール)に分割することをモジュール化といいます。その対象は製品の物理的構造だけに留まらず、システム設計や生産工程、組織など多岐にわたります。

パソコンはCPUやメモリ、ハードディスクなど標準化されたインターフェースによって接続されているモジュール化製品の典型といえます。 モジュール化は、(1)製品の複雑さを低減、(2)部品の組合せ自由度を向上、(3)設計変更時の部分的対応が可能といったメリットに加え、独立した部品開発を可能にしたため、部品ごとに特化したベンチャー企業の創出を促しました。1990年代の米国におけるIT産業の飛躍的な成長は、モジュール化によるところが大きかったといえます。

一方、モジュール化に対する概念として統合化(インテグラル、integration)があります。統合化では、システム全体の最適化を目指した各部品設計者間での調整が重要となります。日本の自動車産業が高度な「擦り合わせ」によってその競争優位性を維持してきたように、従来から日本は統合化を得意とし、モジュール化に強い米国と対比されてきました。

しかし、トヨタ自動車が1990年代後半から一部の部品生産をモジュール化するなど、日本企業でもコスト削減を目指す中でモジュール化の検討が進んでいます。各モジュール内を高度に統合化するなど、従来からの強みである高い擦り合わせ能力を活かしたモジュール化の導入が重要となっています。

(2)オープン化
オープン化とは、システムの構築、改善、維持に必要とされる情報が公開され、社会的に共有される動きであり、逆にクローズ化とは、そうした情報の社会的共有化が制限される動きを指します。
  
たとえば、近年のパソコンは、CPU(中央演算装置)、ハードディスク、メモリ、モニタ、キーボードなどの独立的な構成要素群に分解でき、インターフェースがルール化しているモジュール化製品であり、かつ、そのインターフェース・ルールが社会的に共有化されたオープン化したアーキテクチャとなっています。こうしたアーキテクチャの製品では、各構成要素(モジュール)の開発と生産における国際分業が進みやすくなります。近年のEMSの台頭と成長は、そのようなアーキテクチャの変化を背景としたものです。このため、比較的コストの安い国や地域に立地するEMS企業に、先進国のパソコンメーカーや電子機器メーカーの注文が集まります。HPやデルのパソコンやアップル社のi-pod、スマートフォン(i-phone, i-pad)の携帯オーディオ機器などの製造のほとんどは、台湾の鴻海精密工業などEMSが製造受託しています。

日本メーカーは長い間、多くを自前で設計・製造・組立を行ってきましたが、これには毎年巨額の設備投資が必要で固定費が巨大になります。製品ライフサイクルも短縮化し、回収が困難です。近年では、EMSなどの積極的な活用なくしては経営が困難になりつつあります。民生用電子機器などは生産をEMSなどにアウトソーシングするか、撤退し、付加価値の高い、日本の長所が生かせる分野にシフトすることが重要になってきています。

日本企業がその強みを生かせる分野は、モジュール化された部分と熟練技術を生かした摺合せ(インテグラル化)を生かした部分との融合した、容易に他国がまねできない製品や、ハイブリッドな複合技術を駆使した製品や、それを応用した環境関連、新エネルギー関連、水ビジネス、健康関連、途上国に必要なインフラ関連、内視鏡などの医療関連などたくさんあります。かつての繊維産業のように古くなった産業は、新興国や途上国に譲り、より付加価値の高い、日本の強みを生かせる分野へアップ・グレードしていくことが日本の製造業、とくにデジタル家電産業には必要です。

作り方を出来るだけ簡単にしても、非常に重要な部分のコアコンピタンスには、他の追随を許さない技術を盛り込みトッピングすること、それから環境に優しい省エネルギーで安全・安心というコンセプトを盛り込んだ商品などを作っていけば、日本企業がやれる余地はまだまだ十分にあると私は思います。

分野: アジアビジネス 国際経営 経営戦略 |スピーカー: 永池克明

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