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企業の衰退と再生

久原正治 経営学 (経営戦略、経営組織、日米比較経営、金融機関経営)

12/11/19


前回「企業の寿命」について、企業が経営に失敗した際に衰退しないためには再生が必要だとお話しましたが、今日は「企業の衰退と再生」という話をしたいと思います。近年、今まで優良だと言われていた企業が危機に陥るパターンがよく見られますが、これには三つの理由があると言われています。

経営者の失敗
第一には経営者の失敗。それはどういうことかと言うと、経営者というのはどうしても長期独裁的なものになって、周りの意見に耳を傾けない場合があります。それで色々なリスクを軽視して楽観視することで経営判断を間違ってしまう。場合によっては損失が出たら隠蔽する人もいます。

環境変化への対応の遅れ
第二の理由は競争環境の変化に気付かないことです。日本企業はテクノロジーばかりを重視してしまいがちですが、特にグローバルな時代では周りは大きく変化しているので、会社が親方日の丸的で危機感が無いと経営に失敗します。これに気付いて環境に適応していないといけません。

伝統的な企業文化
第三の失敗の理由は、会社、企業の文化にあります。失敗し危機に陥る企業というのは伝統的な企業で、その文化とは例えば先の親方日の丸的な文化や、官僚的で現状を維持してあまり革新を起こさないという文化が挙げられます。

最近日本企業にこうやって経営に失敗していく事例が特に増えていると思います。しかし失敗したけれど再生に成功した企業として、例えば日産とJALがあります。
 
 
 
経営再生の事例1:日産
1970年頃までトヨタとトップのシェアを争っていた日産が何故失敗したかというと、日産のほうがどうしても組織が官僚的で社長の力が強くなり過ぎてしまっていたからです。1970年代、日産は本来アメリカに工場を作るべきだったのに社長がどういうわけかヨーロッパに巨額の投資をして経営に失敗し、結果1990年代には銀行からも見放され、ダイムラーやフォードからも救済を得られず最後に泣きついたのがフランスのルノーという会社だったという経緯があります。

しかしここから日産は急激に再生します。これは有名なカルロス=ゴーンという日本の文化を大事にする辣腕の経営者が日産に来てからのことですが、彼がアメリカ企業じゃなくてフランス企業の人で日本の文化に合っていたことも一因でしょう。そのフランス企業が来たことによって、今や日産はがらりと変わって再生し、割といい車が出る企業になり利益も出ています。

経営再生の事例2:JAL
最近だとJALが経営難に陥りました。これは親方日の丸的な企業文化で失敗した典型的な事例で、経営者も従業員も皆、ナショナルフラグで潰れるってことはないと思っていたのでしょう。お客さんは黙っていても乗ってくれると考える体質の会社で、ある時突然潰れてしまった。

そこに稲盛和夫という非常に優れた民間の経営者が来て、皆の意識、文化を「JALはお客さまの為にある」という風に変えます。これにスチュワーデスもパイロットも整備士も皆協力し「お客さんの為にどうするか」ということに全体が纏まりました。そして社長も新しくパイロット出身の植木義晴社長に代わって、パイロットが飛行機に何かあったら全責任を取るというように会社に何かあったら自分が全責任を取るので一緒にやりましょう、と言ってJALは強くなり、利益もANAよりも出るようになって再生に成功しました。
 
 
 
日本企業の未来の展望
今日本で最大の問題は、エレクトロニクス企業の経営が急激に悪化してきていることです。これはなぜかというと、環境変化に気が付かずに間違った商品や分野に大きく投資し、いいものを安く作れば売れるという勘違いが原因です。これは典型的にはシャープが挙げられ、更にパナソニックが二期連続8,000億近くの損失を出しています。ここで急速にシェアを増やしたのはサムソンで、これは逆に優れた経営者のおかげです。意思決定が早く、環境変化に対応する経営をやっており、現状この競争に日本のエレクトロニクスは負けています。そこで、これから再生をどうできるかがポイントになります。

いろんな企業の例を挙げてきましたが、やはり企業の文化が最終的には大事になってくるでしょう。日本の大企業は大きくなりすぎて官僚化している気がします。日本の会社に優れた経営者が出てきて、JALがパイロットに経営を任せたようにもっとスピード感のある経営をやる必要がある、ということです。

分野: 経営学 |スピーカー: 久原正治

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