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イノベーション・エコシステムと産学官連携(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

12/11/29

・前回に続き、今回も国が打ち出した基本戦略『イノベーション・エコシステムの確立に向けて早急に措置すべき施策』について解説してみたい。
 
 
 
・この基本戦略では、エコシステム内で活動する人材の育成も重視されており、「産学官連携コーディネーター」や「リサーチ・アドミニストレーター」の育成が謳われている。

・「産学官連携コーディネーター」とは、企業の研究開発ニーズと大学内研究者とのマッチングを図ったり、それを実際の共同研究契約やライセンス契約に落としこんでマネジメント出来る人材を指す。言わば、「百貨店の外商担当」のような仕事だ。学内の研究成果に精通し、また、企業側にも顔が広く、異なる価値観を持つ産と学とをwin-winの関係にまとめ上げる力が必要だ。

・また、「リサーチ・アドミニストレーター」とは、大学において研究資金や知的財産の管理を総合的にマネジメントする、専門性の高い職種である。

・今回の国の基本戦略では、「センター・オブ・イノベーション」において、出口を見据えた分野横断的な活動を行う必要があることから、コーディネーターやリサーチ・アドミニストレーターにも、より幅広い視点で異分野融合に対応できる能力が求められる。

・このようなサポート人材は、エコシステムには不可欠な役割だといえる。
 
 
 
・一方で、基本戦略の中に決定的に欠けているのは、イノベーションを推進するエンジン、つまり中心人物は誰か?という視点だ。

・世の中にまだ存在しない技術を使って、まだ顕在化していない人々の欲求に応えるイノベーションを実現するには、変化の中に機会を見出し、困難を乗り越えながら、主体性を持って事業を強力に推進する「アントレプレナー」が不可欠だ。iPSを例にとれば、山中教授はアントレプレナーの一人だ。

・上記で述べたコーディネーターやリサーチ・アドミニストレーターは、事業を推進するエンジン、つまりアントレプレナーではない。彼らは、あくまでも周囲で支援するサポーターなのだ。

・では、「センター・オブ・イノベーション」のどこにアントレプレナーが存在するのだろうか?

・ひとつは、最先端の科学を生み出し、社会への普及を考える大学の研究者、つまりアカデミック・アントレプレナーだ。iPSの山中先生がこれに該当する。もうひとつは、連携する企業側で、科学技術の成果を儲かるビジネスへと結びつける責任者、つまりコーポレート・アントレプレナーだ。あるいは、既存企業ではなく、ベンチャー企業を創業するアントレプレナーがその役割を担うかもしれない。

・いずれにせよ、アカデミックとビジネスの両面から擦り合わせたビジョンを提示し、リーダーシップを発揮して周囲のエネルギーを結集し、変化や困難をむしろ楽しみながら、できるだけ早くゴールに辿り着いてイノベーション創出を果たすアントレプレナーは、まさにエンジンの役割を果たす。このエンジン次第で、拠点からのイノベーション創出のスピードもインパクトも全く変わってくると言っても過言ではない。

・国は、せっかく「イノベーション・エコシステム」と称する基本戦略を打ち出すのであれば、エコシステムの中心人物であるアントレプレナーの存在にもっと目を向けるべきではないだろうか?
 
 
 
まとめ:国が提示した、「イノベーション・エコシステム」を機能させるには、エコシステムの中心的プレーヤーである「アントレプレナー」の存在が不可欠だ。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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