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映画で学ぶ経営:組織の中で生きる人間の幸せ、日米比較

久原正治 経営学 (経営戦略、経営組織、日米比較経営、金融機関経営)

12/10/18

アメリカ映画と日本映画を見比べると、アメリカの経営と日本の経営の違いをよく理解できます。
今日は二本の映画を取りあげて、考えてみます。

大企業サラリーマンの悲哀:「アパートの鍵貸します」
「アパートのカギを貸します」は1960年に発表された映画で、アカデミー賞で作品賞など五部門を取りました。ジャック=レモンが主演し、恋人役をシャーリー=マックレーンが演じました。

舞台はアメリカの非常に大きな保険会社で、ジャック=レモンはそこの大部屋でタイプを打つ下働きをしています。しかし彼は、何とか出世をして、個室を持ったオフィサーになりたいと考えています。

そこで、会社の上役にゴマをするために自分の部屋の時間貸しをします。この上役は、社内不倫をするためにジャック=レモンから部屋を借りて、その部屋で彼女と一時過ごしてから最終電車で郊外の自宅へ帰っていました。

1970年くらいまでは、アメリカの会社は日本の会社と全く一緒で、長期間勤めて出世しようとすると、ゴマすりが非常に重要なファクターだったのです。

ところでジャック=レモンは、恋人であったはずのシャリー=マックレーンが、この上司と不倫をしようとしていることに気がついてしまいます。そして彼は次第に、大会社の中で寂しさを感じ、また、出世競争に飽きていきます。最後には、会社を辞めることになります。

このようなタイプの会社は、アメリカでは1970年代以降長続きせず、日本でも最早このような会社は長続きすることはできなくなりました。

リストラの時代に生きる:「マイレージ、マイライフ」
そしておよそ50年後の2009年には、「マイレージ、マイライフ」というアカデミー賞をいくつか取った映画が上映されました。

主演のジョージ=クルーニーは、社員の首を自分では切りたくない会社に代わってリストラを行う専門会社に勤めています。彼は、リストラ請負人として、年がら年中飛行機に乗って方々の会社を訪ね、首切りをやるのです。

アメリカでは、いやな仕事をアウトソースして、メインの仕事だけに自分たちの労力をしぼるといった形が、2000年代に入って一般化しているのです。ジョージ=クルーニーは年間に322日も出張しているので、飛行機が家のような生活を送っています。

そのうちにこのリストラ会社は、出張する人のコストが高いために、コンピュータで面接するシステムを入れようとします。このシステムは結局は失敗に終わるのですが、ジョージ=クルーニーは、リストラを仕事とする会社でリストラされそうになるのです。

ここに現代のリストラ時代のサラリーマンとしての悲哀をみることができます。また一方で、「アパートの鍵貸します」もそうですが、映画の中ではユーモア喜劇的な面がたくさんでてくるのが救いです。いずれにしても、アメリカのサラリーマンは、いつの時代も大変のようです。

チームワーク健在の日本の組織:「踊る大捜査線 ザ・ファイナル」
日本の会社組織について考えるならば、皆さんにはぜひ「踊る大捜査線 ザ・ファイナル」をみていただきたいです。ご承知の通り、この映画には二人の主人公がいます。一人は、織田裕二演じるノンキャリの青島警部補。もう一人は、東大出のキャリアである室井です。

青島警部補は、現場で目の前の犯人を逮捕しようとしても逮捕令状が出ないという場面に出くわし、「現場で事件起きてんだ」と、「会議室で起きてんじゃない」と叫びます。本部では、だらだらと会議が続いています。

そこで室井は、「自分は現場が正しいと思うことをできるようにするんだ」、「自己判断で動いてください」、「責任は私が取る」などと言うわけです。

こういう台詞を聞いていると、日本の組織にはいろいろな問題があるけれども、現場と本部とにわかり合える人がいれば、チームワークをもって融通無碍に問題解決していくことができるのではないかという気になります。

この点、悲哀を感じるアメリカのサラリーマンとは異なります。室井のようになろうという上司が出てくれば、日本の会社もよりよくなっていくのではないでしょうか。

分野: 経営学 |スピーカー: 久原正治

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