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公共プロジェクトの効率性基準

実積寿也 産業政策、通信政策、通信経済学

12/08/24


■公共プロジェクトと民間プロジェクト
今回は、公共プロジェクトの効率性基準について考えます。普通、プロジェクトの実行にはコストが必要で、それによりベネフィットの発生を期待します。出来るだけベネフィット、つまり収益が多い方が望ましいことは当たり前で、投下コストを下回る収入しかあげられないプロジェクトはやってはいけない、というのは民間企業の経営者としては当然の考え方です。

では、政府が行うような公共プロジェクトも果たして同じ基準が妥当かどうかというのが今日の問題です。


まずは、民間と公共との違いを知る必要があるでしょう。掛けたコストよりも、より多くの利益が出るプロジェクトというのは国の面からも非常に重要です。そもそもコストというのは、国の場合、税金や国債などの国民からの支出によって賄われるので、それを上回るメリットがあれば最終的には減税に繋がったり、あるいは国債の償還が行えたりすることになります。これは非常に素晴らしい話ですが、

そのプロジェクトを本当に国や地方公共団体がやる価値があるかどうか、が問題になります。
 
 
経済学の観点からすると、掛けたコストよりも望ましいメリットが期待できるようなものであれば、民間にやってもらった方が、効率的である場合があります。そういう場合、国や政府が出しゃばってプロジェクトをやることはそもそも必要ありません。

ただし、ベネフィットがコストを上回る全てのプロジェクトが民間主体で出来るわけでなく、公共機関がプロジェクトの主体とならなければいけない場合もあります。それは、国民あるいは利用者の支払う料金=対価が、コストを負担した主体に返ってこないようなプロジェクトです。これは国がやるべきであろうと考えられています。

■警察サービス
例えば、警察サービスがあります。日本の警察は非常に優秀で、例えば夜酔っ払って公園で寝る時に、明日雨が降ったらどうしようと普通考えますが、他の国だと明日も無事に目が醒めるだろうかということを心配しなければいけない場合もあります。

世界一流の警察サービスのおかげで我々は日々安心して生活をすることができますが、こういったサービスには本来コストが掛かっているので、通常の民間の主体が提供するようなサービスであれば、当然対価を支払うという事になります。

ただ、警察サービスは、合理的に考えると誰もお金を払わないサービスという側面を持っています。自分の家の隣に住んでいる人がお金を払って警備サービス、例えば夜中1時間に1回の割合で警察官が巡回するようなサービスを受けていたとします。警察官が巡回すると、道路を挟んで反対側に住んでいる住人や隣の家に住んでいる私たちも同時に警備されることになりますから、私たちはサービスのメリットをお金を払わずに受けることができます。

無料で利用できるものに、わざわざ対価を払わないというのは合理的な考え方です。

しかし、世の中みんながそういう考え方をすると、結局誰も警察サービスに対してお金を払わなくなってしまいます。その結果、必要なコストが賄えないのでサービスを提供する人もいなくなり、我々は警察による良好な治安という便益を受けられなくなります。

■公共プロジェクトの判断基準
こういったサービスが、民間企業で運営出来ずに国や地方公共団体の出番となるサービスの一例になります。

公共サービスの場合は、料金というものを徴税権を用いて税金として強制的に徴収することが出来るので、社会的には価値があるけれどその為の料金を誰も払おうとしない、といったプロジェクトをコスト割れを心配することなく実施することが出来ます。

ですから、「この公共プロジェクトは十分な収入を上げることができず、赤字になることが決まっているから価値がない」という批判は的外れで、現実、あるいは経済学的に考えれば、赤字になることが決まっているサービスだからこそ政府がやる価値があるということになります。

ただ、問題は、そのプロジェクトに本当に価値があるかどうかの判断が、政府や地方公共団体の視点からはなかなか難しいということにあります。

民間企業が市場において提供するサービスに関しては、それを利用したいと考える消費者が、それに対してきちんと料金を払うかどうかというところで、最終的にそのサービスが社会にとって必要かどうかが判断されます。政府のサービスの場合はそれが無料で提供される為に、そういった消費者からのレスポンスを政府の側で直接認識する機会が失われ、場合によっては非効率、あるいはコストを上回る便益を生まないようなプロジェクトが実施されるということにも繋がりかねません。

■まとめ
従って、公共プロジェクトは、誰が費用を負担するかということを心配しないでよいというメリットがある一方で、そのサービスが本当に効率的か、本当に目的を達成することが出来るのかということをきちんと評価しなければいけないという側面があります。

公共プロジェクトに対して色々批判もありますが、目に見えない利益、お金を払わずに得ている利益を全部考えた上で、そのプロジェクトにかけられたコストを上回る便益が本当に発生しているのかどうかを我々は考えなければいけません。

加えて、その便益を生む為にその公共プロジェクトが本当に効率的にサービスを提供しているのかどうかを我々は判断していかなければいけないということになります。

今週のキーワードは、「お金で買えない価値がある」ということです。

分野: |スピーカー: 実積寿也

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