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投資評価

平松拓 企業財務管理、国際金融

12/08/10

今回は、企業における投資の意思決定の為の評価についてお話します。

最近、新聞の経済面などでわが国の企業が海外に新たに工場を建設する、或いは海外の企業を買収するといった記事を目にすることが多くなってきました。これ等は、企業が将来の利益のために行う「投資」に他なりませんが、投資活動は別に企業だけがするものではありません。ラジオを聞いている皆さんも、自分を磨くためにお金や時間をかけることがあるのではないでしょうか。私どもの九州大学ビジネススクールには多くの社会人が通ってきていますが、仕事を持ちながらビジネススクールに通うなどというのもその一環、即ち個人にとっての「投資」と考えられます。

それでは皆さんは、どういう「投資」なら行って、どういう「投資」は止めておくでしょうか。人にもよるでしょうが、個人の場合には、「投資」の成果としての将来のリターンを具体的に数字で評価して判断するというようなことをする人は多くないと思います。これに対し、企業が投資を行う場合には、その投資がどれだけ価値を生み出し、企業の価値を増加
させるのか、その点をきちんと評価することが求められます。

具体的には投資の評価はどのような方法で行われるのでしょうか。幾つか方法がありますが、最も簡単な方法としては、「その投資を行った場合に、これから支出せねばならない追加的なキャッシュの合計(やった結果支出せねばならないキャッシュの合計と、やらないでも支出されるキャッシュの合計との差)と、その結果得られる追加的なキャッシュの合計(やった
ことで得られるキャッシュの合計と、やらないでも得られたキャッシュの合計との差)を比較する方法」が挙げられます。もう一つは、「今後支出する追加的なキャッシュの合計を、今後得られる追加的なキャッシュで回収すると考えた場合に、一体何年で回収できるかを計算する方法」です。両者はともに単純な考え方ですが、前者に比べると後者は、不確実性が高まる遠い将来に得られるキャッシュをそれ程当てにしていないという違いがあります。

これらの方法は単純ながら、実際の企業で用いられており、投資に対するリターンの目安を見極めるには有効な方法と言えます。しかし、これら2つの方法は共に時間の要素を無視、或いは軽視しているという問題点があります。つまり、同じ金額のコスト、収益でも発生のタイミングで価値が異なるという事です。身の回りのことでも同じことが言えます。例えば、皆さんが銀行に預金をすれば将来は利子が付いて増えて返ってくることを期待するでしょうし、銀行から借入をすれば将来の返済に伴うリスクが勘案されるので、預金よりもずっと高い利子を含めた金額の返済を覚悟せねばなりません。これらは満期が先になればなる程、リスクの高い話であればある程、利子の部分が増えて大きな金額となります。これを逆に考えると、
同じ100万円でも将来の100万円は現在の100万円よりも価値が少ないと考えるべきということになります。これが時間の要素ですが、この2つの方法の場合、その点が考えられていません。

それでは時間の要素を考えたものとしては、どのような方法があるでしょうか。そうした方法として次の2つがありますが、いずれもキャッシュフローに関してやや複雑な計算する必要があります。第一の方法は、将来的に得られるであろうキャッシュのフローが投入するキャッシュの金額に対して何%の複利で回っているかを計算し、それが企業として期待する利回り以上であるかを確認する方法(内部収益率法、IIR法)です。もう一つは、将来的に得られるであろうキャッシュのフローと、投入するキャッシュの金額の双方を現在の価値に引き直して(つまりは複利計算の逆を行うこと、「割り引く」と言う)、前者から後者を差し引いた結果により判別する方法(割引現在価値法、NPV法)です。この場合に用いる利率は、内部収益率法で比較対象として用いる利率と同じものです。

これ等2つの方法は共に時間の経過の効果を織り込んでおり、ほぼ同じ意味を持ちますが、内部収益率法では利率の大きさを比較、割引現在価値法では、差し引いた結果がゼロ以上か未満かで投資可否の判断をします。いずれもM&Aなどの大型の案件にも利用される、ごく一般的な投資の評価手法です。ただ、これらの方法も含めて投資評価一般の難点は、何と言ってもそれ等の計算の前提となる、将来のキャッシュフローの発生が、何時、どれだけあるかを正確に予測するのが難しいことです。実際はそこが投資評価の最重要ポイントであり、M&Aの成功、失敗もそこに大きくかかっています。

冒頭で、個人の場合には投資について数字を用いて評価をすることまではしないだろうということを言いましたが、ある程度割り切って、主観的に見積もった数字による計算結果を受け入れてやれば、実は個人の場合でも役に立つケースは色々あると思います。内部収益率法や割引現在価値法と迄は言わないまでも、最初の2つの方法で試しに今後の自分の投資評価をしてみてはどうでしょうか。いつもとは違った期待感ややる気が生まれてくるかもしれません。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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