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新興市場

星野裕志 国際経営、国際物流

12/08/31

先進国の市場は、安定的にいつまでも成長し、存在するわけではありません。人口減少や経済成長がとまることもありえますし、また中での競争も激しい。不況などさまざまな状況によって、市場が縮小していくかもしれません。このように、いつまでも魅力的な市場がそこに存在するとは言えませんので、企業は常に進出すべき新しい市場を探さねばなりません。

たとえば車の例で見てみましょう。アメリカの不動産バブルに端を発したプライムローンの問題やリーマンショックによって、アメリカにおける車の市場で、売れ行きが一気に低下しました。その背景には、先ほども述べました通り、市場規模が縮小したこと、競争が激しくなったこと、不況によって購買力が低下したこと、需要が減少したこと、ガソリン価格が急騰したことといった、様々な理由が複合的に絡んでいました。そうなると自動車メーカーは、新しい市場として、インドや中国と言ったBRICsに目を向けていきました。

1970年代、80年代であれば、NICsとよばれた新興工業国が新しい市場として着目されました。これは、後にNIEsとよばれるようになりましたが、アジアの台湾、韓国、香港、シンガポールなどを指しました。2000年前後からは、BRICs、すなわち、ブラジル、ロシア、インド、中国の四カ国が注目されるようになりました。このBRICsという言葉を作ったのは、投資銀行のゴールドマンサックスですが、今度はネクストイレブン(NEXT11)として、次に期待される11カ国を紹介しています。ベトナム、フィリピン、インドネシア、韓国、パキスタン、バングラデシュ、イランとアジアが続いて、ナイジェリア、エジプト、トルコ、メキシコ。この11カ国を新興市場、まさにこれからの魅力的な市場として捉えています。

また、既になくなられましたが、アメリカの著名な研究者であるプラハラードという研究者が、BOP(Bottom of Pyramid)という考え方を提唱しました。世界人口が、今丁度70億人を超えたところですが、一日の収入が2ドル以下の人口は40億人位いるとのことです。その70億人をピラミッドに見立てると、底辺を構成している人たちを、ボトム・オブ・ピラミッドと呼び、新しい市場として期待できるとしたのです。しかし、彼らに購買力があるのかどうか疑問が残ります。プラハラード氏は、自身の出身地であるインドのムンバイ、昔のボンベイですが、ここを例にとって考えています。スラム街と富裕な層が住む住宅街を比較すると、スラム街で購入されている商品や公共サービスの方が、実は割高だと言うのです。一見すると不思議に思えるでしょうが、その理由を考えてみますと、スラム街には多国籍企業や大きな企業の販売のチャンネルがないのです。そうすると、いいものを安く買いたくても、スラム街に住んでいる人たちは買うことができない。一方で富裕層が住む地域には、たとえば外国企業から投資されているスーパーマーケットなどがあって、そこで安く品物を購入することができます。自身が居住している地域の外に出て行くということはあまりないので、割高の商品であってもそれを買い続けることになります。

このような現象が世界中でおきているとすると、底辺層にいる人たちへアプローチする方法を考えれば、多国籍企業にとって新しい市場になり得るというのが、ボトム・オブ・ピラミッドの考え方です。これが上手くいくためには、いろいろな創意工夫が必要でしょう。たとえば、彼らが購入できるような商品を作り出さなければなりません。これまで先進国の市場で販売していた商品を持って行っても、高すぎて買っていただけないからです。デザインや品質、機能を少し減らしてでも、一日2ドル以下の収入で暮らす人びとの手が届く商品を用意しなければなりません。そして、商品と並んでもう一つ重要なことは、販売方法を考案することです。

今日のキーワードは、「BOP:新興市場とは新たに進出すべき市場」です。

分野: 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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