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地域の再生を考える(6)―九大卒業生をいかに引き付けるか

久原正治 経営学 (経営戦略、経営組織、日米比較経営、金融機関経営)

12/06/22


前回は大分県竹田市の話で、地域を盛り上げていこうというリーダーに、30代が多いという話でした。今回は福岡には九州大学を始め様々な大学があって、学生は地元に就職するかと思いきや実はそうでもない、という話をしていきます。

■地域(九州)はなぜ衰退したのか
日本経済は戦後東京にあらゆる資源を集中させることで成長してきました。資源の中でも特に人材に関して、九大など九州トップクラスの大学を出た人が東京の一流大企業にまず就職し、地元に残りたい人は地元の安定した役所や公益企業に就職をする。これが従来の人材の流れでした。そういう中で地域の経済というのは段々衰退していってしまったという背景があります。

東京に人材が集中するこの状況というのは、今の状況と昔で少し意味合いが違います。戦後は東京に人材を集中しないとなかなか日本が、戦争に負けた後、世界経済にキャッチアップするのは難しいということで、あらゆる物を東京に集中させていました。

しかしその後東京中心が染み付いてしまって、地方からなかなか新しい企業が生まれず、もし生まれたとしても大きくなったら本社を東京に移してしまうという傾向が定着し、中央との格差が段々開いてしまいました。そういう中で地域というのは東京で儲かったお金をばら撒いてもらって色んなプロジェクトをやってなんとか衰退を止めていた、というのが現状です。また、大企業の本社の集中もそうですが、文化も東京に集中しています。なんでも東京発信で、例えば福岡から折角良い芸人が出てもみんな東京のテレビ局に出るようになってしまいます。

その辺も大きいような気がしますが、九州大学を始めとする地方大学の卒業生がなかなか地域に根付かないのは何故でしょうか。


■九大生の就職先
どちらが先かというのはありますが、やはり地域に魅力的な企業が無いことが原因として挙げられます。ちなみに2010年度の九大の経済学部の卒業生を見てみると、就職した約190人のうちの100人以上がいわゆる大手の金融機関、役所、それから公益企業の御三家に就職していて、残り80人ぐらいのうちの8割ぐらいが東京の大企業に就職しています。

そうすると地元で生産やサービスを担う企業には10人ちょっとしか就職していないということになります。

九大生の多くは九州で父母が教育投資をして育てるのですが、結局その成果のほとんどが東京に行ってしまって、帰って来ないという問題があります。両親にしてみても息子や娘が東京へ行くより自分の側、地元で働いてくれる方が心的にも絶対良いと思いますが、結局地元には安定した市役所、あるいは公益企業ぐらいしか九大生が就職するところがなく、昔だったらブリジストンや出光は九州の企業でしたが世界的企業になる為に本社は東京に行ってしまいました。


■新たな産業が出てこなくなった九州
その後戦後を見ても三井ハイテック、ゼンリン、ロイヤル、ベスト電器、こういう企業が九州から出てきたのですが、やっぱり東京中心でないとなかなか競争に勝てないということで本社を東京に移したりあるいは東京の企業に株式を買われたりして、段々九州に本社がある企業は少なくなっていきました。これはやはり人材や情報が東京にいないと逆に集まらないということもあったということです。

しかし、これからは中国とか韓国、アジアがとても盛んになってきていて、特に九州はアジアに近いので、地の利を生かしてもっと九州に本社が集まってもいいような気もします。

ところが、海外に進出する為には東京の情報、いくら韓国とか中国が近くても、そこの本当の情報は東京に集まっていて、福岡からすぐに行っても、結局向こうは東京の本社と色んな話をすることになってしまいます。


■地域に人材が還流する仕組みづくり
そういった地域に人材が還流する仕組みを作っていくには、昔から地域にある伝統的な地場産業や立派な自然や医療、そういうものを組み合わせて新しい産業を興していくことが絶対に必要です。東京は飽和してきているので、そういうものが出来てくればそこに地域に人材が根付く可能性が出てくると思います。

とにかく若い人にとって地域が色んな意味で、魅力のある場所にならなきゃならないということで、地域の環境は段々東京より地域が住み易い環境にはなってきていますが、まず働く場所で十分な所得が得られる場所を九州に作っていく必要があります。

何でも東京が一番という何となく染み付いている固定概念を外すためにも、地域は将来を担う若者に投資したら、それを地域で回収する為に地域に働く場、所得が得られる場を共に作っていき、若い人が「東京しか魅力的な文化も働く場所も無い」と言って九州から出て行く状況を直さなくてはいけません。

分野: 経営学 |スピーカー: 久原正治

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