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中韓FTA交渉が本格化(国際企業戦略/永池克明)

12/02/21

中韓FTA交渉が本格化

前回は、韓国の輸出入の動向から、韓国が2011年の輸出入は好調で、一方で、
日本が2011年の貿易収支が31年ぶりに赤字になったという比較をしながら、
韓国のFTAの戦略のことをお話ししましたが、今日はその続きで韓国と
中国の自由貿易協定が本格化していくという話です。

韓国は、既に7つの国とFTAを締結していますが、この程中韓のFTA交渉を
本格化するというらしいという話がいます。これが本格的に発効すると、既に
発効が確実視されている韓国とアメリカの貿易額よりもさらに巨額の中韓の
貿易規模からみても、韓国からアメリカへの輸出にドライブがをかかる可能性が
あります。ただ、中国と韓国の間でいろいろ微妙な問題もあり、相当厳しい交渉
になるのではないかと予想されます。

具体的に言いますと、韓国の領海内に中国の漁船がやってきて、いろいろな
トラブルが起きています。それに農業問題、あるいは、超安値の機械器具など
中国製がどんどん流入しています。それで、韓国市民がかなり恐れていること
もあり、これを交渉でうまくおさめることができるかが焦点です。いずれに
しても中国は韓国にとって最大の貿易相手国であり、貿易障壁がなくなれば、
韓国の更なる飛躍、輸出の増加に寄与すると期待されます。

日本は中国、韓国とのFTAをまだ締結していません。いまアメリカとのTPP
交渉に臨もうとしているところですが、アジアとの自由貿易へのポジショニングの
点で日本はかなり遅れています。そういう意味では中韓が交渉を開始したとなると、
日本としても心穏やかではいられません。

東アジアは、欧米への輸出でなんとか成り立つメカニズムでこれまで成長して
きましたが、いまや東アジア貿易経済圏の域内市場は相当大きくなっており、
おそらく10年もしないうちに世界最大の経済圏になる可能性があります。したがって
東アジア市場向けの輸出やビジネスは、これからの日本や韓国にとっても重要な
ファクターになってくるでしょう。ビジネスチャンスでもあり、飛躍の成長戦略を
実現する大きなテコになってくると思われます。

中韓のFTAの今後の手続きはたくさんありますが、まず政府間の事前協議が
あります。それから中国と韓国の間で通産関係の大臣級の会談が行われます。
一方で経済産業省や総務省など貿易関連官庁の実務者会談があり、そこで整備を
した上で、政府、学会、業界関係者たちが参加し公聴会を開いて、その妥当性が
検討されるため、まだまだ時間がかかるでしょう。韓国とアメリカのFTAでは、
1年で一応交渉がまとまりましたが、EUとの本交渉では3年5ヶ月も要しました。
特に日本と同じく韓国も農業問題や中小企業の問題について市場開放交渉でうまく
粘って、少し時間を稼げるかとなると、中国は韓国と非常に近い国であるゆえに、
FTAの長所短所がよく見えるわけので、交渉も微妙かつ難航するでしょうから、
少なくとも3年ぐらいはかかるのではないかと思います。

一早くアジアで中韓がFTA交渉を妥結すれば、先約済みの国々が出てきて、
日本が最後に出て行っても農業問題などで交渉がなかなか進まない可能性が
あります。出遅れると日本にとって非常にまずいので、なんとかしないと
いけないでしょう。

前回の話も含めて、韓国の対外的な貿易戦略は日本にとって、参考にすべきところが
多くあります。例えば、日本がTPPを前に進めていく上で一番大きい問題の一つは
農業問題で、日本の農業従事者の反発が大きいのですが、韓国でも同じことが起こっ
ています。韓国にも与党と野党があり、農業問題も侃々諤々議論をしてきましたが、
韓国と日本の大きな違いは、韓国の与野党双方が超党派的に韓国はどうあるべきか
ということから共通項を考えようという機運が高まり、結局アメリカとのFTAに
ついては収斂する方向で事実上妥結したと考えてよいでしょう。

日本の場合にも、現在のように与野党が党利党略に終始して互いに批判しあうだけ
ではなく、あるべき真の日本の進路という超党派的な立場からの、もう少し高い
レベルでの議論をすべきであり、現状には苛立ちを感じます。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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