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3.11後の広告(2)(マーケティング/出頭則行)

11/11/28

東日本大震災の後、日本の広告はどう変わったのか、どう変わっていくのか、
世界中が注目していますが、今日もその話を続けましょう。

日本では、従来から企業の名前(コーポレートブランド)を打ち出した広告が
多かったのですが、震災後はコーポレートブランドを強調した広告が更に増加
しているように思われます。多くの広告が、企業と社会の関わりを語った上で
商品を打ち出しています。ある意味、広告主は社会との関わり、社会における
レゾン・デートルを語ることなしには商品を語れない時代になりつつあります。
かつては消費者に安心感(製造元保証)を与えるために企業ブランドが使われ
ていましたが、今の使われ方は企業と社会との関わり(コミットメント)という
意味で、広告メッセージが随分と社会的になっています。

世界的な潮流でみても、広告メッセージは社会性を帯びてきているといえるで
しょう。例えば、象徴的なのは、世界最大の広告の祭典である「カンヌ広告祭」
が、今年から名称を変えています。昨年まではインターナショナル・アドバタイ
ジング・フェスティバル、まさに国際広告祭でしたが、今年の6月からインター
ナショナル・フェスティバル・オブ・クリエイティビティとなり、アドバタイジング
という名称を落とし、創造性の祭りとしています。これには、アドバタイジング
というプロモーショナルなメッセージを超える、色々な社会的問題を解決する
ためのクリエイティビティという含意があると思います。一方、NPOやNGOも、
マーケティングコミュニケーションを大変活発に行うようになりましたが、当然
彼らの設立趣旨からいって、そのメッセージは社会的なものです。

殊に、メディアの世界の変化は非常に大きく、20世紀末まではマスメディア
が主流でしたが、世紀の変わり目にインターネットが出現し、最近になって
ソーシャルメディアが登場してきました。ソーシャルメディアでは、その名前が
指し示すようにこの媒体上で流通するメッセージは必然的に社会性を帯びます。
使用者たちはソーシャルメディアを通して社会的なイベントや問題に参加して
いるということがいえます。世界的な潮流からいっても、広告メッセージが
社会性を帯びてきているのは日本だけではないといえるでしょう。

マス広告に接する時は、消費者は不特定多数がこの広告を見ているという意識
をもつでしょうが、ソーシャルメディアから発する広告は、自分を巻き込んでいる
(involvement)という感覚になるのではないでしょうか。ブランドの作り方も変わ
ってくるでしょう。メディアの環境は、この20年くらいで激変しました。1997年が
インターネット元年といわれていますが、2000年くらいまではマスメディアの
時代です。マスメディアを使った広告は基本的に、買ってもらうように、あるいは
愛してもらうように説得する広告です。インターネットが登場して、2000年頃から、
リレーションシップ・マーケティングということが言われはじめました。One to One、
パーミッション広告などカスタマー・リレーテッド・マーケティング(CRM)といわれ
るものは、全てインターネットがもたらしたもので、顧客個人個人との関係性の
構築を目的としています。

インターネットの延長上で、個人個人が横に関係を結びあうソーシャルメディア
が登場し、ブームを起こしつつあります。その最中に3.11が起ったわけです。
東日本大震災後の被災地の連絡網としてツイッターやフェースブックなどの
ソーシャルメディアが大活躍したことは記憶に新たです。その名称から明らかな
ように、ソーシャルメディアは社会性が中核となるメディアです。使っている人
たちは、既にソーシャルなイベントに参加したり、ディスカッションに参加した
りしているわけです。このような媒体環境の変化の中で、ソーシャルメディアが
メディアミックスの重要な部分を担うことになるわけですから、広告メッセージ
自体が社会性を帯びることは必然と言えます。特に、3.11後の日本で、この
ことが顕著に表れてくるのではないでしょうか。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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