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国際企業間連携の活発化と合従連衡 (久留米大学・国際企業戦略論/永池 克明)

11/10/14

今回は、国際企業間提携の活発化と合従連衡についてお話します。合従連衡は耳慣れないかもしれません。合従連衡というのは業界再編のようなものです。企業と企業が結び付いたり、離れたりすることによって、たくさんの企業が1つの業界にひしめいている状況からだんだん収斂・集約化されていく過程で、企業と企業が色々な形で連合したり離反したりといった動きがあることを合従連衡と言います。

リーマンショック後、世界経済は厳しい状況が続いています。その中でも日本企業にとっては超円高や高率の法人税、日本政府のFTAへの取り組みの遅れなどもあり、2重苦、3重苦、4重苦という、は大変厳しい状況にあるといえます。そういう中で、国際企業間の連携をどのようにしていくべきかということです。ここで申し上げる事例を通して、今の国際的な企業間の連携、提携と合従連衡が活発化しているかということをお話しします。

■日台企業間 

まず、日本と台湾の企業間をみていきます。日本と台湾というのは以前からかなり親密な関係で、委託生産を頼んだりして色々な形で関係が深かったのですが、皆さんが良く知っている極めて重要な分野で連携が盛んになっています。例えば薄型テレビやスマートフォンといったハイテクの一番最先端の部分で、提携の関係が進んでいます。ソニーと薄型テレビで、鴻海(ホンハイ)精密工業と提携しました。鴻海は世界最大のEMS企業(電子機器の大量生産受託専門企業)です。また、鴻海はとアップル、鴻海とデルの間でスマートフォンの委託生産を行っています。それから任天堂、あるいはソニーと鴻海とのゲーム機の提携がありますし、HPとデルというアメリカの2社と鴻海がパソコンでつながっています。要するに、鴻海というのは世界最大の電子機器の大量生産の専門企業なのですが、世界中の有名な企業と提携しながら委託生産を一手に引き受けているということです。液晶パネルにおいて今までずっとトップを走ってきたシャープも、大型のものについてはこの鴻海の子会社の奇美電子と相互にパネル供給をしながらコスト競争力を高めるという戦略をとっています。

近年、台湾企業は、コストダウンをするために製造拠点をほとんど中国に移しています。そうしないとコスト高になってしまいます。日台企業間というのは、どちらかというと対サムスンなど、韓国勢との対抗戦ということで日本と台湾が組むことも多くなっています。

■日韓企業間 

韓国と日本の企業はある意味で非常に因縁の深い企業同士ですが、サムスンと東芝は、半導体など色々な面でライバル関係にあります。昔からかなり提携関係で深い関係があったわけですが、システムLSIという分野においても今回東芝とサムスンが国際戦略提携をして、自社生産のシステムLSIを生産はサムスンに委託し、東芝は開発だけはやるという形にしました。このLSIに関しては今採算が悪いということもあって、経営資源を得意なフラッシュメモリーなど方に集中する戦略です。フラッシュメモリーに資源を投入することで、これは逆にサムスンを追い抜くという形でやっているわけです。

あとは、次世代携帯電話、スマートフォンの技術に関して。これについても、日韓の企業間で連携があります。ドコモとサムスンと富士通という日韓の3社が、スマートフォン向けの中核半導体の共同開発をするということです。これは巨額な設備投資、研究開発投資を要しますので、やはり三社でやった方が一社当たりの投資額が少なくて済むということです。期間的にも、資源の節約的にも、スピード的にもその方がよいという判断ですね。

■日中間企業提携 

これはごく最近ですが、NECとレノボがパソコン事業で合弁会社を作りました。これもNECは端末やサービスにシフトして、組立生産といったような付加価値の低いところは中国と組んでそっちの方でやっていただくことによって国際競争力、価格競争力を高めるということを狙っています。業績も今はちょっと低迷していますので、そういう意味でも、余計に資源の選択と集中を迫られているということで、その一貫だと考えられます。

■東芝―日立―ソニー連合による事業統合 

その他の例を挙げます。外国の企業と連携するということだけでなく、日本国内企業で提携をして海外に対抗するというケースです。日本の企業も相当前からですが、何でも自社だけでやるというステージではなくなっていること、特に最近になって資源の集中と選択をはっきりしていかないといけないということで、その傾向がますます高まっているというわけです。
最近の例では官(政府)主導で中小型液晶パネルに関する提携話があります。大型パネルでは台湾と韓国にほとんど牛耳られてしまって厳しいのですが、中小型液晶パネルは色々な端末やスマートフォンなどに使われる有望な部分なので、これは何とか日本勢が死守したいということです。そのため、東芝と日立とソニーが連合し、産業革新機構という政府機関から資金支援を受けて、官民連携オールジャパンで対抗しようということです。ポイントは技術を共有し、スピードを上げるということです。これで3社を合わせると世界トップになります。これが1つの活路ということがいえます。

■スズキとVWの包括提携解消 

一方、提携関係解消という話もあります。最近でいうと、スズキとフォルクスワーゲンが包括提携解消という話がありました。国際提携、あるいは提携戦略というのは、ある意味でくっ付いたり離れたりということでフレキシビリティがありますので、あまりうまくいかないのを無理矢理引きずることもないということで、スズキは決断したのだろうと思います。そういったものを使って、自社でできないことを補っていく戦略を上手く使い分けていくということが重要だと思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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