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IFRSの概念フレームワーク (財務会計/岩崎 勇)

11/10/19

今回は、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards: IFRS)の,
概念フレームワークについて、会計目的を中心としてお話していきます。


■概念フレームワーク
IFRSでは、例えばリースの会計基準や固定資産、棚卸資産の会計基準など、
個別的な会計基準を設定するための基準として概念フレームワークが設けられています。
この概念フレームワークは「会計の憲法」と呼ばれており、
これが個別の会計基準を設定する場合に審議会のメンバーの共通認識の土台となっています。
これに沿うように新しい会計基準が設定されているため、
会計の概念フレームワークは非常に重要なものです。

その中でも特に、会計目的は重要な位置にあります。

会計目的とは、例えば資産・負債の定義や認識、測定、表示など、
全ての出発点に当たるものです。
そのため、概念フレームワークにおいては、
次のような会計目的を理解することが非常に重要となってきます。


■会計目的
では、一般的なIFRSに限らず、会計目的にはどういうものがあるのでしょうか。
会計の歴史を遡ると、会計は取引を記録して報告するというところから始まっています。
会計の種類にも色々あります。
例えば、外部報告会計である財務会計では外部の株主等に意思決定情報を提供し、
他方、内部報告会計である管理会計では経営者の意思決定のための情報を提供しています。
このうち、IFRSが対象としているのは外部報告会計、すなわち財務会計です。

企業などの経済主体が行った経済活動の質と量について、
質の方を例えば現金勘定や売上勘定のような勘定として、
そして量の方を貨幣金額としてそれぞれ認識して測定し、
利害関係者である株主等が適正な意思決定を行えるように財務情報を、
財務諸表を通じて報告するというのが財務会計の会計目的です。


■情報提供目的と利害調整目的
この会計目的は更に細かく分けることが出来ます。

代表的なものの一つが情報提供目的です。
財務諸表をみて過去の利益の傾向値が分かれば、
株の購入や売却、保有について、株主も適正な意思決定を行うことが出来ます。
そのような意思決定のための情報提供機能を財務会計は会計目的として有しているのです。

もう一つ代表的なものとして利害調整目的があります。
会社は利益を上げると配当金や税金を支払いますが、
この場合、株主と銀行などの債権者の利害は必ずしも一致していません。
例えば、会社が利益を上げた場合に、株主は配当金を支払って欲しいと思います。
一方で、債権者は経済情勢が昨今のヨーロッパ経済のように悪化してしまい、
企業が赤字に陥ってしまうという可能性があるので、
貸付金を期日に安全に返済して欲しいと思います。

こういう場合に、株主と債権者の利害が対立していると、会計ではみなします。
このような利害対立を調整するために、配当可能利益を会計上決定していくのです。
また、税金の支払いについても、株主と国との利害関係が対立しているとみなして、
その利害を調整していくために会計情報が利用されています。


■会計数値の差異
ところが、会計数値が利害調整で求める会計数値と、
情報提供機能が求める会計数値では性格が異なります。

まず第1に、会計数値の硬度です。
先ほど例としてあげたように、配当や税金の支払いでは利害が対立しているため、
利害調整のためには、計算された数値に客観性が要求されます。
それに対して情報提供目的は、必ずしも客観的な数値を必要とせず、
意思決定に有用であれば問題とはなりません。

また第2に、会計数値の源泉でも両者の性格は異なります。
利害調整の場合は、必ず複式簿記で、実際の取引に基づいて行われた取引を記録して、
その数値を基に利益を算出し、配当や税金の額を決定します。
しかし、情報提供を目的とする場合には、取得原価ではなく時価で報告することが認められています。
つまり、情報提供目的の場合、意思決定に有用であれば、
会計数値の源泉として必ずしも過去の実際の取引に基づく継続記録を用いる必要はありません。
期末で実際にあるものを棚卸して、時価評価を行い、それに基づいた数値での情報提供も可能です。

次回は、IFRSの会計目的の基準について、より具体的にお話ししていきます。

分野: 岩崎勇教授 |スピーカー:

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