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言葉資源の豊かな企業は強い(2)(出頭則行/マーケティング)

11/08/23

渋沢栄一は論語、ベンジャミン・フランクリンはプロテスタンティズムという
バックボーンを持っていますが、それらを語る自分のユニークな言葉をもって
いました。渋沢栄一もベンジャミン・フランクリンもまさしく天才といえる人
たちですが、ユニークな自分の独自の言葉を持っている企業(言葉資源の豊か
な企業)は強いのではないかという話を、今日はしてみたいと思っています。

まずは松下幸之助さんの水道哲学ですが、1932年第1回創業記念式で述べて
いる言葉です。ご存じない方もいると思いますが、パナソニックの従業員は皆
知っている話だと思います。松下幸之助の水道哲学を要約すると「産業人の使
命は、貧乏の克服であり、そのためには物資の生産に継ぐ生産をもって富を増
大しなければならない。水道の水は値あるものではあるけれども、通行人がこ
れを飲んでも咎め立てられたりしない。水は量が多くて価格があまりにも安い
からである。産業人の使命も、水道の水のように物資を無尽蔵にすることにあ
る。無体に等しい(非常に低廉な)価格で物資を提供することによって、人生
に幸福をもたらしてこの世に楽土を建設することができるのであり、松下電器
の使命もその点にある。水道のように世の中に便利を普及させたい。」水とい
う例えが現今正しいかどうかは別ですが、現在のパナソニックの「ideas for life」
につながっている思想です。水道の水のように、人々に便利を与えていきたい
というのは、独自の哲学です。

松下といえば、並び称されてホンダが出てきますが、本田宗一郎さんも独自の
言葉を伝えています。彼は、得手に帆上げてということを言っています。つま
りトンカチはトンカチ屋に、算盤は算盤屋に任せるということです。完璧な人
間はいないのだから、自分の得手を十分に発揮できるような会社にしたいとい
うのが、ホンダイズムのエッセンスなのです。ホンダではよく六割任官といわ
れています。10人中6人くらいが、「あいついいんじゃない」といったら昇格
させる、得手を発揮できればいい会社になるのではないかということです。得
手に帆上げてというのもホンダらしい独自の言葉で、ホンダの強さを支えてい
るのではないかと思います。

パナソニック、ホンダときたら、次はソニーです。ソニーにも社員なら殆どの
人が心している言葉があります。それは、井深大さんが起草した東京通信工業
(ソニーの前身)の設立趣意書です。長文ですが、ソニーの創業精神のエッセ
ンスが書か込まれています。いくつか例示すると、第一に会社設立の目的は、
自由闊達にして愉快なる理想工場の建設だということです。経営方針は、他者
の追従を絶対に許さざる境地に独自なる製品化を行うことです。今のソニーが
これを満たしているかどうかは別にして、自由闊達で愉快な理想工場と、他の
追従を許さない商品の製品化はソニー創業の原点と言えるでしょう。

そして最後に、私の出身会社である電通の第4代社長・小倉出身の吉田秀雄の
鬼十則。これは社員に向けたものではなく、吉田秀雄が自分の行動指針として
筆で書きあげたものでした。それを見付けた友人の経営者が、面白いから俺に
もくれといって広まっていったものです。私も電通出身ですから、鬼十則は当
然知っていますが、教え込まれたということはなく、創立記念日に唱和するよ
うなこともありませんでした。但し、仕事を遂行する上でかけがえのないガイ
ドラインとなっていました。どんなものかというと、「仕事は自ら創るべきで、
与えられるべきでない」、「大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小
さくする」、「周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永
い間に天地のひらきができる」、「摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母である」
などなどです。吉田秀雄本人の行動指針だったものが、電通の人間なら誰でも
共有する言葉となり、電通という会社の個性の形成に大きな役割を果たしてき
ました。

今日は、自社ならではのユニークな言葉を持つ企業(言葉資源の豊かな会社)
は強いというお話でした。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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