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国吉澄夫教授一覧

中小企業が気をつけなければならない中国のPE課税(国吉澄夫/中国経済と産業)

11/08/03

今日は少し細かい話になりますが、「PE課税」という話をします。

聞きなれない言葉ですが、貿易取引において、世界中、国と国との間では
租税条約が結ばれ、その国に源泉のある特定の取引活動(営業行為など)
に対して課税権を認めています。その目安が、「恒久的施設」(Permanent Establishment)を有しているかどうかで、これが「PE課税」と言われている
ものです。例えば、日中間では、「日中租税条約第7条第1項」に「一方の
締約国の企業が他の締約国内にある恒久的施設(PE)を通じて、その他方
の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利益のうち、そのPE
に帰せられる部分に対してのみ、その他方の締約国において租税を課す」と
されています。

■連絡事務所の活動がPEとみられる
実は、昨今中小企業の中国との貿易取引や事業進出が増えるに従い、連絡
事務所を設立したり、現地で法人を設立するといった、いくつかのケースで、
当局より「それはPEだ!」と指摘され、思わぬ追徴課税の危機に直面する
事が増えてきています。古くから進出している大手商社、メーカーなどでも、
1980年~90年代、中国各都市で、連絡事務所を構えて取引を開始しようと
していた時期に、当局より課税を指摘されたため、営業活動を自粛したり、
現地法人に切り替えたりして対応してきましたが、中小企業の進出が急増
しているここ数年、改めて連絡事務所の営業活動に対して、2010年税務当
局よりの課税管理強化方針が打ち出され、それに対して、中国進出の経験
の浅い中小企業に戸惑いが生じているというものです。

■PEが指摘される3つのケース
最近PEが指摘されるのは以下の3つのケースです。1つは、今述べた駐在員
事務所の営業行為に対してです。支店や事務所に限らず、プロジェクトの
現地サイト、作業場も対象になりますから注意が必要です。2010年以降は
原則として事務所の関係帳簿を提出して納税申告を行うことに変更になり
ました。(以前は営業活動を行う場合に限り申告でした)。次に、本社から
現地法人の技術指導を行う人員を派遣する場合など、6ヶ月以上になるとPE
に認定されるリスクが高まりますので、これも要注意です。3番目に、給与
の関係ですが、現地小会社への出向者の給与の一部を本社で負担する場合、
現地子会社から送金を行う場合、その補てん額に差異があると「役務対価を
得ているのでは」としてPE認定されてしまう危険があります。

いずれにせよ、余り意識せずに、「そこに大きな市場があるから」という
だけで進出すると大きな落とし穴が待ち受けています。このPE課税問題
に限らず、国際間の取引にはさまざまな課税要件が絡んできますので、
専門家の意見をよく聞いて事前の慎重な対応が重要です。

これから更に中国をはじめとしたアジアの新興国に、日本の中小企業が出て
いくというケースは増えると予測されていますが、現地の商習慣以外にも
文化など細かいことを理解する必要があります。

8月4日午後1時半から3時半まで、アクロス福岡6階の会議室で北京の
著名な弁護士、呉鵬さんを招いて、中国ビジネスにおける法的問題の新しい
動きについてのセミナーを開催します。呉鵬さんは九州大学の卒業生で日本
語も堪能、そして北京中倫律師事務所という1中国で1番有名な弁護士事務所
の方です。私はコメンテーターとして登場します。

インターネットで財団法人福岡アジア都市研究所のホームページにアクセス
してください。夜は懇親会を予定していますので、昼間都合の悪い方は夜でも
結構ですので、ご参加ください。

分野: 国吉澄夫教授 |スピーカー:

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