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台湾企業の特徴と実力 (国際経営/永池 克明)

11/07/05

これまで、台湾企業や台湾の経済についてのお話をしてきましたが、
今回は台湾企業の特徴と実力についてお話ししていきます。


■資金調達力
半導体や液晶パネルなどのIT関連産業は、
毎年設備投資や研究開発など巨額の先行投資が必要となります。
日本企業は多角化している企業が多いため、
特定の分野に毎年大規模な投資を行うということはなかなか大変です。

その一方で、韓国企業や台湾企業は半導体や液晶へ巨額の投資を実現しています。
韓国系のサムスンのような財閥系企業は、
非常に強力なトップマネジメントを行っており、
オーナー会長の鶴の一声で投資が決まってしまいます。
しかし、サラリーマン経営者が多い日本企業ではそうはいきません。

一方、台湾の場合、韓国のように財閥系企業はありませんが、
巨額の資金調達を可能にする資本市場があります。
日本の場合の資金調達は未だに銀行による間接金融が中心ですが、
台湾は個人貯蓄率が極めて高く、潤沢な資金力を有する資本市場が形成されています。
同時に投資意欲も非常に旺盛で、有望な企業に対しては、
思い切った投資を躊躇しない投資家が多数存在します。

このような台湾の国民性のため、
最近の半導体や液晶パネルでの比較的巨額の設備投資の資金調達が可能となっています。


■台湾企業間で形成する産業連関
台湾には、国営企業を除いては財閥系のような大企業は存在せず、
ほとんどの企業は中小企業から出発しました。
そのため、日本の東京都大田区のように、中小企業同士が非常に固く結びつきあっています。
台湾では、多くの産業で原材料から部品、中間製品、完成品の組立までの、
いわゆる川上と川下の産業連携が形成されています。
鎖のように仲間内で協力関係ができあがっているのです。

この傾向は中国に投資する場合でも同様で、
現地中国でも台湾系同士の部品のサプライチェーンが形成されています。
また、華僑同士のネットワーク等様々なネットワークでも結ばれており、
縦横にネットワークが築かれています。
台湾企業の連携は、特に広東省や江蘇省で著しく、
パソコンなどでは現地調達率が80%と、非常に高い比率となっています。


■本社と製造の分業体制
台湾企業は、本社機能を台湾に置き工場は中国に置くという、
役割を分担させる体制を構築しており、この点では日本企業ともある種の共通点をみせています。
また、現地企業には最大限の裁量権が与えられています。

台湾企業の経営者はアメリカに留学したことのある人たちが多いということも特徴です。
そのため、本社は台湾で研究開発拠点は米国シリコンバレー、
生産拠点は中国というトライアングルを形成しているパターンもあります。
やはり、経営者にアメリカ留学組が多いということが、
国際化やグローバル的なセンスに結びついているのではないかと思います。


■徹底した現地化
また、現地化の徹底も特徴としてあげられます。
例えば、世界第3位のパソコンメーカーの宏碁電脳(エイサー)は、
中国で大規模な販売拠点網を構築しており、
自社ブランドのパソコンや周辺機器を販売しています。
エイサーは、ヒト、モノ、経営はもとより、カネの現地化も推進しています。

つまり、上海市場、深セン市場、シンガポール市場から資金調達を行っているのです。
これら市場にも華僑のネットワークが存在し、強力な投資家が控えているのです。
また、技術も現地化が進んでおり、中国の主要大学と連携しています。


■その他の特徴
もともと台湾の人たちも中国系の人たちですから、
文化はもとより言葉のことまで中国のことをよく知り尽くしています。
加えて、台湾企業は経営資源、ヒト、モノ、金、情報などの経営資源を世界中から集めています。

例えば、台湾だけではなく中国やアメリカ、ヨーロッパ、
日本の企業の優秀な人材を積極的にスカウトしています。
日本人の場合は、有力な技術者や退職した技術者などに声をかけているようです。

カネも台湾の国内資本市場だけでなく、
シンガポールなどの資本市場からも調達をおこなっています。
そして、情報は世界中の華僑ネットワークを活用して集められています。
また、思い切った決断とスピーディーな遂行力に基づくスピード経営も、
台湾企業の大きな特徴となっています。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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