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産業界の求めるグローバル人材とは(1) (産学連携マネジメント/高田 仁)

11/07/18

景気低迷が長く続いていることによって、大学生の就活にも大きな影響が及んでいる。2011年1月18日の朝日新聞では、大卒の就職内定率が68.8%で1996年の調査以来最低と報じられた。就職浪人を強いられる3割は、そのまま翌年に就職活動する学生の母数に上乗せされるので、劇的に就職口が増える可能性も低い現在の状況だと、毎年厳しさに拍車がかかることになる。

なぜ就職が決まらないかという理由は様々だろうが、そもそも企業が求める人材像とは如何なるものなのか?

経団連は「産業界の求める人材像と大学教育への期待に関するアンケート調査」を実施し、2011年1月に公表している。

この調査の特徴的な点は、先ず第一に「グローバル人材」について取り上げてあることだ。つまり、グローバル化なくして企業の未来はなく、それを担う人材確保と育成が急務だという産業界の危機感を端的に現していると考えられる。実際に、調査の中では、回答企業584社の約半数が「海外展開を行っており、今後も拡充する」と回答している。ただ、具体的な方策として「海外赴任を前提に日本人の採用と人材育成を行う」を挙げる企業が、「国籍を問わず採用する」と回答した企業を上回っている。日本本社における外国人比率は現状2%台で推移しており、日本企業のヘッドクォーター機能は純粋に日本人のみによって担われていることが判る。当然ながら海外の現地法人は現地人材を充てることが多いであろうが、あくまでも事業を企画立案し、全社的な指揮命令系統の中枢にいるのは日本人なのである。

一方、外国人を採用していない企業がその理由として挙げているのは、「採用後の受け入れ体制が整っていない」、次いで「外国人人材の能力の判定が難しい」、「制度・手続き面の問題や制度面の制約」、「求める専門能力を有する外国人がいない」といった項目である。ただ、外国人の採用に占める中途採用が減少し、逆に留学生の採用が増加する傾向にある。

以上の調査結果を見ると、「企業はグローバル化を進めており、更に進める必要があるけれども、その中枢機能を担うのは大多数が日本人である。ただ、留学生の採用は増加傾向にある」という姿が見える。

先日、名古屋の某ものづくり中小企業の会長に話をうかがう機会があった。その会社はニッチな製品ながら世界的に高いシェアを維持している優良企業だが、2003年の本格的な中国進出に伴い、現地の幹部候補の中国人管理職を8年間ずっと自分の側に置き、日本的な慣習やものの考え方、価値判断、自社のビジョンや企業戦略などを徹底的に教え込んだうえで、現地法人社長として送り込んだという。逆にそこまでしないと、パッと採用した優秀そうな外国人にいきなり自社の経営の中枢を担わせるのはリスクが高くてとてもできない、と話していた。この考え方は、多くの日本企業の経営トップが感じていることではないだろうか。

QBSでも毎年数名の留学生を受け入れており、彼らの中には日本企業で本社採用されたいと考えて就職活動を行う人も少なくない。本社採用にこだわる理由は、ステイタスおよび給与面での格差が現地採用との間で大きいことがあるようだ。先に述べたように、日本企業が留学生の採用を増やしつつあることは嬉しい話だが、依然として本社人員における外国人比率が2%台では、真にグローバル化を軌道に乗せ収益化を図ることが本当に可能なのだろうかと心配にもなる。留学生の採用にもっと積極的になっても良いのではないか。

次回は、グローバル化に向けて企業が大学にどのような教育を期待しているかについて考えてみたい。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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