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永池克明教授一覧

韓国企業の躍進の基礎にあるもの (国際経営/永池 克明)

11/01/03

明けましておめでとうございます。
日本企業には2011年こそ持ち直して欲しいと思いますが、
お隣の韓国企業の近年の内外における躍進には目覚ましいものがあります。
やはり国をあげてオープン経済ポリシーを、
積極的に行っていることが影響しているのではないかと思います。
今回は韓国の企業がこれまでたどってきた道のりと現在の躍進の理由、
そして今後の課題についてお話ししていきたいと思います。


■狭隘な国内市場
韓国企業にとって国内市場はGDPで比べると日本の5分の1程度の規模と狭く、
国内市場依存だけでは限界がありました。
この限界を打破するために、早い時期から海外に目を向け、
積極的に貿易立国、輸出立国を国と財閥そして金融機関の、
三者一体の協力体制で国を挙げて推進してきたという歴史的な経緯があります。
現在の韓国全体の輸出比率は50%と極めて高い水準にあります。


■新興国への着目
やはり、韓国企業は日本企業と比べると、常に一歩先にいる印象を受けます。
サムスンやLG、ヒュンダイといった韓国企業は欧米先進国で急速にシェアを高めています。
また、欧米やアジア、中国だけでなく、インド、ベトナム、中近東、
東ヨーロッパ諸国、ブラジル、アフリカにもいち早く進出し、
日本企業の影の薄い地域でも存在感を高めてきています。

サムスンは社内に「地域専門家制度」などを設け、
毎年200から300名の若手社員を現地へ派遣し、社内業務から解放し、
1年間、新興国各地域の生活習慣や文化などを徹底的に肌で学ばせています。
現在、このプログラムを終えた社員は総計で3800名にのぼり、
彼らがアフリカの奥地や中近東といったところの市場開拓を進めています。
歴史的みても韓国は色々な国にコミュニティーを作り上げており、非常に積極的です。


■通貨危機以後の改革
韓国と日本の企業でよく似ていた点として、
事業を多角化した企業が多かったことを指摘することができます。
ヒュンダイやサムスン、LG、大宇のような財閥が様々な分野に手をひろげていましたが、
1997年から98年のアジア通貨危機で韓国は国全体が破綻状態になってしまいました。
その際、韓国財閥の雄、大宇や中小財閥の多くが解体や廃業を余儀なくされました。

その後、IMFの支援と指導の下に思い切った改革を金大中大統領主導で断行しました。
各財閥企業は企業も過度に多角化した事業構造を抜本的に改め、選択と集中が徹底しました。
金融機関も不良資産や不良債権の縮小を断行、何万人単位のリストラを行いました。
また、政府も小さい政府に方針を転換しました。
強い政府、強力なリーダーシップで一挙にやるという韓国の姿勢は、
開発経済学でいうところの開発独裁にあたります。
日本も同じようにリーダーシップを発揮してはいますが、
日本企業は未だに選択と集中と言っています。

現在、韓国の立場が最も端的に表れているのは貿易戦略です。
貿易でFTAを次々と積極的に締結しています。
このままいくと日本は韓国企業に対して競争力の面で益々不利な立場に置かれてしまいます。
韓国企業はFTAを締結した国では関税が撤廃されます。
しかし、日本企業は関税で差をつけられてしまうと、
円高とウォン安という為替レートのハンディというダブルパンチを浴びることになり、
大変厳しいものになってしまいます。


■今後の課題
しかし、韓国にも課題は存在しています。

1つは国内雇用が深刻な状況にあるということです。
国をあげて海外に投資も人も注ぎ込んできたため、国内が手薄になっています。
大学を卒業しても就職先が見つからず、特に高学歴の若年層の失業率が高い水準にあります。

また、韓国のシンクタンクの予想によると、
韓国企業の技術水準は5年前後で中国に追い付かれてしまいます。
サムスングループ前会長の李健煕(イ・ゴンヒ)氏もこのことを非常に懸念して、
社員に発破をかけています。

第3に、これまで韓国は裾野産業が弱いということが言われてきました。
例えば、材料や部品や中間財・半製品、
さらに半導体などハイテク製品の生産設備といった資本財は、
ほとんどを日本やアメリカから輸入しています。
そのため、完成品を輸出すればするほど、
それに必要な部品・半製品などの輸入も増えてしまいます。

限られた数の財閥企業は強いけれども、それを支える地場の部品産業など、
いわゆる裾野産業(中小企業)がなかなか育たずに弱いままです。
これが未だに解決されていません。

これらの要素が韓国にとってのネックではないかと思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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