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村藤功教授一覧

中国の変化 (財務戦略/村藤 功)

10/11/26

先日行われたAPECでも大きな存在感を示した中国ですが、
2010年の中国経済は実質8%のGDP成長を達成する見込みです。
また、GDPの額でも2010年には日本を上回ることが確実視されています。
今回は、中国の動向についてお話ししていきます。


■経済成長と後継者問題
2010年は第11次5ヶ年計画の最終年でした。
2011年から2015年の新5ヶ年計画については、
今年10月に開かれた中央委員会第5回全体会議(5中全会)で審議されました。

しかし、この新5ヶ年計画には、成長についての数値目標が含まれていません。
2011年の3月までに拘束性の弱い参考指標として数値目標が設けられる予定ですが、
新5ヵ年計画は、高めの経済成長に拘るのではなく、
環境への配慮や内陸部と沿海州の格差是正といった姿勢を示して、
成長の質を重視しているとみられています。

また、第12次5ヵ年計画の最中の2012年の秋には、
胡錦濤氏が総書記を退任するとみられています。
中国では、総書記の後継者は軍事委員会の副主席に就任することが慣例となっています。
胡錦濤氏の場合には、総書記就任3年前の1999年に軍事委員会の副主席に就任しました。
習近平氏の場合、2009年には見送られましたが、
今年10月の5中全会で軍事委員会の副主席に就任し、
習近平氏が胡錦濤氏の後継者となることが明らかとなりました。

習氏は太子党と呼ばれる高級幹部師弟の出身です。
父親は副首相を務めた習仲勲氏ですが1960年代に失脚し、
文革時代には習近平氏自身も農村で農作業に従事しました。
2008年北京オリンピックの責任者も務め、
胡錦涛氏と異なり高級幹部の子弟である太子党の出身です。

胡錦濤氏も早く後継者氏名をやってしまうと、
自身の求心力が弱まってしまうのではないかと考えていたのかもしれませんが、
総書記の退任を2年後に控え、
これからは習氏に権力の委譲が徐々に進んでいくのではないかと思われます。


■中国経済
中国政府はインフレ目標を3%にしていますが、
2010年7月、8月には3%を上回ってしまいました。
また同年9月の消費者物価指数(CPI)は3.6%でした。
特に食品と住居コストが上昇しており、高すぎるインフレを警戒して、
金融機関の貸し出しと預金の基準金利や預金準備率を引き上げるなど、
中国政府も金融を引き締め始めました。

不動産バブルは特に都市部で目立ちます。
中国では上海や深圳の証券取引所でドルや香港ドルの株式に投資することは可能ですが、
人民元での投資ということになると規制がかかります。
そのため、余ったお金が不動産市場の方に流入しやすい構造になっています。
この不動産バブルの原因は、アメリカの金融緩和の影響で生じた余剰資金が、
中国の不動産にも流れ込んでいるためであると中国はみており、
アメリカの金融緩和に関して批判的に論じています。
実際、アメリカは6000億ドル(約60兆円)の国債を購入するということで、
結果としてリーマンショック前に比べても国内、
海外共にアメリカドルやアメリカドル債の流通は約2倍に膨らんでいます。
中国だけではなく世界中に影響が出ているという状況です。


■日中関係
尖閣諸島問題の発生直後は、中国で大掛かりな反日デモが起こりました。
中国では反日で、日本でも反中国で盛り上がっているという状況です。
この尖閣問題を受けて、ハイブリッド車モーターの磁石に使うネオジウムや、
液晶ガラスの研磨剤となるセリウム、他にもジスプロシウムといったレアアースの、
中国から日本への輸出が停滞するという影響が出ています。

日本はレアアース輸入のほとんどを世界供給の97%を占める中国に依存しており、
輸出制限については日本だけでなくEUからも批判が出ていました。
中国政府は関与を否定していますが、
中国の税関では抜き取り検査ではなく全量検査を実施したり、
書類の不備や価格設定を理由に輸入を差し止めたりしていたようです。
しかし、最近では中国政府も対日輸出の正常化の動きをみせているため、
レアアース不足の解消も時間の問題かもしれません。

日本政府もベトナムをはじめ代替輸入先の開発に乗り出していますし、
レアアースを使わなくて済むようなモーターや磁石も開発され、
様々な分野で対応が進められています。

日中両国はハノイで開催された東アジア首脳会議の前日、
10月29日に外相会談の後に首脳会談を予定していましたが、
外相会談後直前で中国側に首脳会談の開催を拒否されてしまいました。
結局、翌30日に菅首相と温家宝首相の間で非公式会談が行われ、
11月のAPECでは胡錦濤が来日し13日に菅首相と短いながらも会談をしました。

とりあえずは、日中間で会話が再開されて一安心というところです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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