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中国の変化 (財務戦略/村藤 功)

10/09/17

今回は、成長の著しい中国経済の変化について、お話ししていきます。


■GDP
GDPには購買力平価ベースのものと、為替換算ベースのものの2種類があります。
中国の人口は日本の人口の約10倍です。国民の消費も現物では非常に大きく、
どれだけものを購入できるかという購買力平価ベースのGDPでは、
日本は中国にずいぶん前に抜かれていました。
もう一つの為替換算ベースのGDPの方でも、
2010年第2四半期のGDPでついに抜かれてしまいました。
2010年の年間のGDPでも、中国が日本を上回り世界第二位になるだろうと予想されています。

現在、GDP世界第1位はアメリカですが、
中国は為替換算ベースで2030年ごろにアメリカを抜いて世界一になると考えられています。
また、購買力平価ベースでは2015年にアメリカを抜くだろうといわれています。

かつては、アメリカの市場で勝つかどうかで日本の企業の将来が決まるといわれていました。
しかし、今や中国がアメリカのGDPを追い抜くということで、
日本企業の将来は中国の市場で勝つかどうかで決まるという風に変わりつつある状況です。


■所得格差
中国のGDPが日本に追いついたとはいえ、中国の人口は日本の10倍ですから、
一人当たりGDPは日本の10分の1になります。
現在、中国の一人あたりGDPは約3500ドルと、
1970年代の日本の一人当たりGDPの3000ドルに近いものになっています。

しかし、中国国内でも所得水準にはばらつきがあります。
経済発展の著しい沿岸部の沿海州は所得も高く、
例えば上海の一人当たりGDPは1万ドルを越え、1990年代の韓国、台湾の水準です。
一方で、農村の内陸部の方は非常に貧しい状況で、
共産主義で貧富の差があって本当にいいのかという話もあります。
日本は、戦後、皆の所得水準を金太郎飴のように同じにするという方針をとってきました。
所得格差の激しい中国は共産主義ではなく、自由主義と資本主義の国のようで、
日本よりもアメリカに近づいている印象を受けます。


■インフレ
日本は長らくデフレですが、
2010年に入ってからの中国のインフレ率は、消費者物価指数(CPI)では約3%、
卸売り段階の企業間の取引で用いられる工業品出荷価格では約7%に上り、
インフレの傾向をみせています。
不動産価格も10%近く上昇していますが、
野菜や庶民が最も多く口にする豚肉、原油や綿花というように、
不動産だけではなく色々な商品の値段が上昇しているという状況です。

中国政府はインフレ率3%を年間目標にしているため、そろそろ対策が必要な水準にきています。


■労働問題
中国では、外資系企業などでストライキが多発しています。
日本企業が中国人労働者に給与を十分に支払っていないのではないかという説もあります。
中国では2008年に労働者の権利保護を目的として労働契約法が施行され、
そこでは労働組合と協議した上で労働者の賃金を改定しなければならないと定められました。

中国では「中華全国総工会(工会)」が、
共産党が公認する唯一の労働組合として組織されていますが、
工会の労組の組織されていない企業も多く存在します。

実は、そういった正規の労働組合が存在していない企業で、労働争議が頻発しています。
この状況を受けて、工会は、労働組合をきちんと組織し、
低賃金に不満を強く抱えている農民工を労働組合に加入させて、
労使対立を把握するように指示を出しています。

また、大抵の外資系企業では中国系企業よりも少し高めの賃金を設定していますが、
日系企業では中国系よりも賃金が安いところが多数あるといわれています。
他にも、欧米系では、留学経験のある中国人が多く、
社内旅行で中国人幹部と交流を深める機会も多いのに対して、
日系企業では日本人だけでまとまってしまい、中国人ホワイトカラーとの交流が希薄となり、
幹部への登用が少ないことも衝突を招く一因となっています。
そういう意味では、コマツやトヨタ、資生堂、伊藤忠といった日本を代表する企業は、
中国人を尊重し、トップや幹部の中国人比率を高めていく方針を打ち出しています。

とはいえ、日本企業による海外拠点での現地人登用は遅れ気味です。
中国に限らず他の国でも、もう少し現地の人達を尊重しなければならないと思います。


■軍拡と民主化
中国は2009年に輸出でドイツを抜いて世界トップとなり、
輸入でも世界2位となりました。
今や中国は膨れ上がる生産能力の受け皿となる市場を求めて、
南に勢力圏を拡大しようとしています。
パキスタンやバングラディッシュ、スリランカといった国々を支援して、
インド包囲網を築こうとしているという説もあります。

また、アメリカ国防総省の中国の軍事力に関する2010年度年次報告書では、
これまでの台湾に加えて、中国軍による太平洋の小笠原諸島やグアム島などを結ぶ、
第二列島線といわれている太平洋の地域やインド洋にまで、
活動範囲を拡大させるのではないかと危惧されています。

多くの国々は民主主義や法治主義、自由主義、人権尊重という立場をとっています。
一方、中国は共産党の主導のもとに、
マルクスレーニン主義や人民民主主義独裁といった考えで国を治めています。
そのため、中国は世界中で異質な国だと認識されています。

中国にも改革派といわれる人たちがいますが、
中国国内で政府を批判するようなことを言ってしまうと逮捕されてしまいます。
とはいえ、中国も民主主義、人権尊重するべきではないかという声が、
海外では大きくなってきています。

これから、中国が自由主義、民主主義という方へ変化するのかどうか、
問題になってくるのではないかと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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