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アジアの成長と福岡 (国際経営/星野裕志)

10/06/30

アジアの成長と福岡

今年、福岡は空前のクルーズブームです。
博多港に年間で86回、クルーズ船が寄港します。
中国から来る回数が66回と、今年の3月から11月にかけて、
毎週2回ぐらいのペースで、クルーズ船が寄港しています。

福岡だけでなく九州全体では、今年164回といわれていますから、
その半分近くが、博多港に寄るということです。小型のクルーズ客船だと
1隻で1,080人、大型船であれば乗客は2,000人を超えるので、
1回で千人を超えるお客さんが天神に来てくれるということですから、
やっぱり中国の経済成長というのは元気だと感じます。

今年の1月に福岡市が、このクルーズ船の経済波及効果を計測したのですが、
昨年1年間で10億6千万円といわれていました。クルーズ船が寄港することにより、
1年間で所得効果は3億7千万円、福岡市の税収増は2,440万円、
76人の雇用を新たに創出したと言われています。国内の景気が落ち込み、
消費が冷え込む中で、海外からこれだけの人が来て、ショッピング・観光・
飲食をしてくれるのは、非常にありがたいことです。

去年の寄港数の24回に対して今年の86回は3倍以上ですから、
さらに大きな経済効果が見込めるでしょう。消費の内訳ですが、
一番多く購入されたのは電化製品だそうです。次に化粧品・医薬品・食料品が続き、
一人当たり33,276円消費したことになり、それはそれで大変に有難いのですが、
私の考えるところ、一人当たり33,000円程度では全然足りないということです。

デジカメ1台買ったら33,000円になってしまうわけですが、
せっかく福岡に来られて、それだけしか買っていただいていないので、
もっと潜在的には消費の可能性があるではないかというのが、私の今日のテーマです。

去年来られた人の約8割が中国人でしたが、一つのパターンとして、
上海を出帆して釜山、済州(チェジュ)島へ寄って、博多に寄って帰って行きます。
大体この4泊で博多に寄って上海に戻るコースですが、
これで買い物をする場所は、釜山か博多か、どちらかになりますが、
済州島は観光の場所ですから、福岡という場所でもっと買い物して、
食事して、観光してもいいのではないかと思うわけです。

それがなかなか大きな消費につながらない理由は、寄港時間が8時間程度と
短いことが最大の理由として考えられます。つまり、朝入港して上陸をして、
夕方出港するまでの間に観光も買い物もしたい、お昼も食べなくてはとなると
時間もありません。では個人で動くとなると、天神へのアクセスとか
言葉の問題考えると、なかなか自由に行動できるわけではありません。
私の見るところ、その結果が33,000円にとどまっているということです。
もう一つの原因は、環境整備にあります。

釜山も滞在時間は同じようなものですが、昨日ご紹介したように、
釜山に世界最大のデパートがあり、食料品からブランドものまで
全て揃っているとなれば、そこで自己完結的に買い物が済みます。
心理的にも、最後の寄港地だということで、ここで使ってしまおう
ということになりますが、福岡はそれほどの作り込みが
できていないのではないかなと思います。

買い物ができる場所があるとすれば、どうやってそこに行くのか、
そこでは言葉の面でも来られた方の対応ができて、
どこに売り場があるのかと、自分で行けるような仕組みが必要です。
そのようなサービスがあってはじめて、購買につながると思います。

それは買い物だけではなくて、飲食も観光もそうだと思いますが、
それがまだ福岡では足りないではないかと思います。
それを改善していくとしたら、単に1つの企業などがやるだけではなく、
むしろ官公庁、地元自治体あるいは民間など、様々なところが連携しながら、
主体的に努力をして呼び込むような仕組みを作ること、あるいは選択肢を提示して、
望むコースを選んでもらうようにして、そこに色々なものがパッケージとして
組まれていること。そのような作りこみをしていかないと、
なかなか消費にはつながらないのではないかなと思います。

中国からの人が8割と言いましたが、必ずしも乗客の多くが本当の富裕層
というわけではありません。クルージングで来られる人たちですから、
中国では明らかに豊かなクラスであることはまちがいないのですが、
やはり海外旅行をする余裕ができてきたという人たちでしょう。
今後のリピーターとして福岡への再訪や日本でなじんだ
製品の購買に繋げる努力も必要です。

それ以外にも多国籍の人が乗船している欧米の客船も来ていますから、
多くの来訪者が福岡に求めるものをきちんと提供できる仕組みが
大事ではないかと思います。国際都市といわれ、色々な取り組みがされていますが、
まだ行き届いていない部分があるという気がします。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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