QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

永池克明教授一覧

中国小売市場における日系小売企業の動向  (永池克明/国際企業戦略論)

10/06/16

日系企業はその業態を問わず、20代・30代の中間所得層に的を絞っています。
具体的なイメージとしては、外資系あるいは大企業に
勤めている共働きの夫婦、あるいは就職したてのホワイトカラーなど、
若年中間所得層、つまり世帯年収でいうと、3万5千元から
10万元くらいの20代、30代です。この人たちは、
これまでの世代と消費スタイルがかなり違います。
日本などとよく似ていますが、同時に高学歴者が多くて、
しかもインターネットを活用している率が高く、
外国の文化やライフスタイルに対して柔軟に対処するだけでなく、
むしろ歓迎しているようなライフスタイルの人たち、
つまり沿岸都市部の人たちということです。

一人っ子政策が開始された79年以降生まれた世代は、
ある意味経済的にも家庭的にも恵まれた人たちが多く、
このような20代が約2億人いるので、20代だけでも
日本の人口より多いと言うことです。
日系企業の強みが発揮しやすい消費者として
そういう人たちが注目されていますが、
日本でよく売れるから、中国で同じものが売れるとは限らない
ということを日系の小売企業も考えなくてはなりません。

販売が好調な代表は化粧品と衣料品です。
化粧品市場だけでも、上海では過去10年間で市場規模が8倍になりました。
中国の衣料品市場ですが、日本ではユニクロがよく知られていますし、
ハニーズ、スペインのザラ(ZARA)、スウェーデンのH&M、
アメリカのGAPなどが、ベスト5というところです。

衣料品の他は中食で、オフィス街でビジネスマンの利用が増えているようです。
最近は、結婚する一人っ子政策の世代の人たちが結構増えていますが、
マンションやアパートの需要が高まり、コンパクトで
しかも品質がいいので日本製の家具が売れています。

日本の小売企業のポジショニンは、新しいライフスタイルの
顧客層を主要な顧客層として取り込んでいるわけですから、
注目すべきですが、それ以上のシェアを上げていくのは難しいので、
日本の百貨店、総合スーパーは苦労しています。
1つは、安心、安全な商品ということを際立たせることです。
また、日本独特のきめの細かいサービス施設とか、
あるいは環境を整えるというわけです。
例えば、衛生管理、明るい照明を作る、
店内の品揃えに欠品がないようにする、
エステルームなど店内の無料サービスを充実させる、
幼児の遊びスペースなど工夫を凝らして、差別化するということです。

今後も大きな成長は見込まれるとは思いますが、
障害になるものが3つあります。
1つは、新しい労働契約法が2008年に施行されましたが、
これには細かい条件が必要なので、業績評価あるいは解雇の場合
相当詳しい理由等を書く、あるいは契約に盛り込む必要があります。
次に、不動産価格が非常に高くなっているので、
土地を有効な場所を見付けたとしても高い、
あるいは中国の地場小売企業がコネで優先順位が高くなり、
せり負けるような問題があります。
3つ目は、現地での人材育成の問題ですが、
いわゆる日本式のビジネスを、直接日本人の駐在員が
中国人の従業員に教えるのは、なかなか難しいのです。
そこで、中国人従業員との橋渡しが出来る人材、
QBSの学生のような日本への留学経験者、
あるいは台湾人の従業員は比較的日本人の考え方に似ているので、
現地の従業員に日本的経営或いは日本人の意思決定の仕方、
カルチャーなどを説明してもらうということです。

市場については、沿海部の上海、天津、北京あるいは広東が中心でしたが、
今後潜在的な成長性が更に高いのは、四川省の成都、武漢、重慶など、
内陸部の巨大都市で人口が2千万というところが、
未開拓のフロンティアになっているわけです。
新しいセグメントとして、そこにどうやって乗り込んでいくかが、
日本企業の更なる中国におけるマーケティング戦略の大きな課題です。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP