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「アジア共生への道」―朝日社説からアジア・中国を考える(中国経済と産業/国吉澄夫)

10/02/22

■1月4日朝日社説
旧聞になりますが、1月4日新年早々仕事始めの日の
朝日新聞の社説に、「アジアとの共生、手携え人づくりの大循環」と、
こういうタイトルを付けた社説が掲載されました。
大変短い文章ではありますが、東アジア共同体に関連して、
比較的的確にアジアと向き合う我々日本人がどうあるべきか、
ということが書かれた内容だったので印象的でした。
私が以前から述べているような話とも若干重なるところもあり、
我が意を得たりというところもあるので、少し紹介します。

■アジアとの融合と社会つくりに寄与
この社説の中で最初に「米国の過剰消費に
世界がもたれかかれば何とかなるという時代は終わった」とあります。
「危機を克服するには、各国の協議と内需振興による自立的発展が前提」、
と述べた後に、「日本経済はアジアとの融合を図らなければならない、
近隣諸国の豊かな社会作りに寄与し、結果として
生まれる市場の果実を得ることができる」と冒頭で述べています。
アジアビジネスにおいても、売買双方が利益を得るのは勿論大事ですが、
同時にCSR(企業の社会的責任)や、社会の発展への貢献も重要であり、
その結果としてビジネスの果実を得るということを
アジアとの共生の中に求めていくことができます。
以前にも申しましたが、昔の近江商人が、
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、
「三方よし」という哲学は今のアジアの時代にも
通ずるということを今日感じています。

次に、「求められるのは最先端技術ではなく
蓄積されたものを適切に組み合わせる、
あり合わせの力だ」ということです。
「IBMという会社が大きく飛躍できたのは、
需要と供給の微妙な食い違いに気付いて、
コンピュータの技術を学術計算から事務処理に
発展させたところにあった」と言っています。
なるほど,日本の企業というのは技術開発力に優れていて、
多くの研究開発成果を持っていますが、
実際に商品化されているのは、ほんの2・3割にしか過ぎず、
それ以外は商品化されずに埋もれてしまっているのです。
そういう埋もれた技術を応用の力で生き返らせるかということを
真剣に企業の中で事業化を考えております。
切り出すという意味の 「カーブアウト」という言葉を使っていますが、
そういう経営手法で、戦略的に企業の技術や事業を
切り出して外部の資本や経営資源とマッチングさせて、
ベンチャーを起こし、それらをアジアでも展開していくことが、
これからのビジネスに求められているということです。

■アジアの人々と手を携え、大きな人つくりの連鎖と循環を
更に社説で続けて述べているのは、
「日本の再発見が大事だ」ということです。
大分県の一村一品運動を例にしながら、
地域の力を評価する、あるいはブランド化する、
持てる資産を自覚する「日本の総棚卸し」を提言しています。
アジアとの関係では、「アジアに開かれた社会に脱皮し、
観光客や留学生を増やし働き手を受け入れていき、
外の目によって日本を再評価し、日本の自力の再生」
ということを述べています。
更にアジアの人々と手を携えて、大きな人づくりの
連鎖と循環を生み出そうと述べています。
最後に中国のGDPは今年中に日本を
追い越すだろうということにも触れて、
「GDP第3位になる日本を悲観するのではなく、
中国を含むアジアの跳躍に日本の人と技術を生かし、
これで共生の道を切り開くことが大事だ」と結論付けています。
確かに少子高齢化と人口減少が進んでいけば、
当然国としての活力も落ちてきます。
そこで日本がより世界に開かれた国として、
優秀なアジアの若者たちをどんどん受け入れていけば、
日本の再生も可能だということです。
ただ、短期的にどっと海外から人が流れてくると、
色んな問題を引き起こしますが、長期的な視野に立って
それをどうするかということは大事だと思います。

前回観光の話に触れましたが、
溝畑さんという大分トリニータの監督だった方が、
観光庁長官になられました。
最近の記者会見の中で、中国人の個人ビザの発給要件に、
年収の基準が大変厳しく中国人にはあまり評判よくないのですが、
それを撤廃する方向で政府内で調整すると言われています。
中国人の富裕層だけで海外出国者は年間4,500万人と言われています。
日本人で外国に行っている人が1,700万人ですから、
その2.5倍位はいるのですが、そのうち100万人しか
日本に呼び込めていない現状は確かに考え直すべきと思います。
そういう意味で中国からの海外旅行のブームが近々
どっとくることも予測されます。
昔、日本人がどんどん海外に出た頃は、
「ノウキョウサン」と呼ばれましたが、
これからは中国にもそういう流れが出て来るので、
それはきちっと受け止めなくてはいけないと思います。
新しい時代が到来し、我々もアジアの目線で
日本を見直していくことが大事だという意味では、
新年の朝日新聞の社説は1つの視座を与えてくれたといえるでしょう。

分野: 国吉澄夫教授 |スピーカー:

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