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航空業界のビジネス環境 2(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

10/01/20

前回は、航空会社のビジネスは、自国の政府の方針、
乗り入れる相手国との二国間の協定、そして民間航空を
規定する国際間の協定という大きく三段階の枠組みの中でのみ
認められているという説明をしました。
そう考えるとたとえ競争力のある企業でも、世界の市場
具体的には路線やネットワークを独占することもできないことになります。
いわば航空会社同士の国際間の競合関係は、ある程度
規制に守られた中での競争ということかと思います。


■オープンスカイ協定

それが、従来の米国と日本の間に締結されてきた航空協定では、
路線、輸送量、航空会社について相互の承認が必要でしたが、
昨年12月に日米間で合意された航空自由化協定、
いわゆるオープンスカイ協定では
これらの事項が、原則的に自由になります。
2010年10月までに、航空会社間の
競争のルールが変わることになります。

米国の航空会社の羽田への就航も今年の秋には見られるでしょうし、
国内の多くの空港を米国の航空会社に開放することで、
人や物流を促進し経済効果が高まることにもなりますし、
利用者にとっては航空会社間の自由競争が促進されることで、
運賃値下げなど利便性の向上が期待できます。
ただそうなると、今までの規制が緩和されることで、
航空会社が厳しい国際競争にさらされることにもなり、
日本航空の再建にも大きく影響することが予想されます。
航空自由化の波には逆らえなかったとはいえ、
なぜこのタイミングなのかという疑問もあります。


■アライアンスについて

あくまでも自由競争になるというよりは、以前この航空業界では
競争と協調が両方側にあり得るという話をしましたが、
アライアンスという言葉をよく聞くようになりました。
つまり、これからの国際的な戦略的提携である航空会社の
アライアンスが、どのような意味を持つことになるのか
ということ大変に注目されているのです。
アライアンスとは、航空会社同士のネットワークで、
世界にアライアンスは3つあります。
世界最大のスターアライアンス、日本航空も参加しているワンワールド、
それからデルタ航空を筆頭とするスカイチームと、
3つの国際間の戦略的提携のアライアンスがあります。
全日空が参加する「スターアライアンス」は、1997年に
ユナイテッド航空とルフトハンザを中心とする5社で設立され、
現在世界の26の航空会社が参加することで、
合計175カ国に乗り入れています。

日本航空が現在加盟する「ワンワールド」は、
1999年に締結されたアメリカン航空と英国航空を
中心とする11社のアライアンスで150カ国をカバーしており、
2007年からは日本航空も参加しています。
日本航空はもともと非常に独立性の高い起業でしたから、
実はあまり前からアライアンスに入っているわけではなく、
2007年からの加入です。

そして3つ目が、「スカイチーム」です。スカイチームは、
日本ではあまり加盟している会社がないので、
名前を聞く機会はないですすが、世界の規模でいうと
2番目に大きい、スターアライアンスに次ぐネットワークです。
最も遅い2000年に、アメリカのデルタ航空が中心として
エールフランス、大韓航空、アエロメヒコの4社で設立されました。
このアライアンスの強みは、デルタ航空が太平洋線では
非常に実績のある航空会社であるノースウエスト航空を
2008年に買収した結果、日米間で最も高い市場シェアを
持つということと、ほぼ全世界にネットワークをもつことです。
日本航空に積極的なアプローチをかけた結果、
日本航空はワンワールドからスカイチームに入ると言われています。

オープンスカイで、競争のルールが変わると言いましたが、
デルタ航空のような競争力のある航空会社は、
これからは日本の各地に米国から独自の戦略に基づいて、
自社の路線を持つことができるようになるわけです。
そうなるとなぜあえてライバルである日本航空の再建に
手を差し伸べるのかということになりますが、
そこが昨日と今日にお話した航空業界を巡る規制によるものです


■アライアンスの利点

以前にこの番組でも、ハブ&スポーク システムについて
解説しましたが、このシステムは様々な利点がある反面、
このようなグローバルなネットワークを持つことの
コストとリスクは、非常に大きいといえます。

海外の航空会社が、例え日本の地方空港に乗り入れる権利を
得たとしても、それほど需要の高いとはいえない路線を
単独で維持することは容易ではありません。
たとえば、デルタ空港はかつて福岡空港にポートランドから
乗り入れていましたが、わずか11ヶ月で撤退したこともその一例です。

そう考えると、日米間の太平洋線でデルタ航空と日本航空が、
スカイチームという同じアライアンスの中で提携することで、
圧倒的なシェアを持ちながら、共同運航を一歩進めた形の
オペレーションをすることで、日本の主要都市からアメリカの主要都市に、
柔軟なスケジュールでフライトを持つことができます。

また日本航空の国内線への接続便も活用することができ、
より広い範囲がカバーできます。あえて競争環境の中で
協調することで、他の航空会社を圧倒し、自社の強みの
あるところで勝負するということになるのでしょうか。

なかなか難解とも思われる航空会社の国際競争について、
さまざまな規制の枠組みにおかれた航空業界の
ビジネス環境の視点からお話しました。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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