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ソーシャル・ビジネス1(国際経営・国際ロジスティクス/星野裕志)

09/12/30

■ソーシャル・ビジネスとは

新しい公共ということが言われています。
ソーシャル・ビジネス(SB)とは、社会的な事業として、
福祉、教育、環境や地域の活性化などの分野において、
社会が抱える様々な問題への解決に向けてサービスを提供することです。
またそのようなビジネスを作り出す社会的起業家(ソーシャル・アントレプレナー)
という存在も知られるようになってきました。

従来の公共サービスであれば、地元の自治体などの行政が
提供することが一般的であったとすれば、様々な要因から、
NPOや市民活動団体がその担い手になることもあれば、
営利企業なども参入して、自立型の公共事業のあり方が模索されています。


■ソーシャル・ビジネスが注目される理由

ソーシャル・ビジネスが注目されてきている理由とは、
指定管理者制度などの新しい枠組みの設定、
参入規制の緩和とか税制優遇などのポジティブな促進要因もそうですが、
財政赤字や非効率性から公共機関よりも別のセクターが
サービスを提供することが期待されていることでもあります。
また行政の重視する公平性にこだわることなく、多様なニーズに
柔軟に応えることが求められているという状況もあります。

通常のビジネスとの違いはどこにあるかというと、
ソーシャル・ビジネスは従来の枠組みを超えた
事業であるということがいわれています。
2008年の4月に経済産業省のソーシャル・ビジネス研究会の
まとめた報告書によると、ソーシャル・ビジネスの定義として、
社会性・革新性・事業性の3つの要件を満たす活動とされています。
つまり単に営利を目的とせず社会的な課題に取り組むことであり、
ミッション性を有することであり、サービスや価値というものを
創造するという成果と仕組みが問われています。


■グラミン銀行とビッグイシュー

この番組でも岡田先生が紹介されたノーベル平和賞受賞者の
ムハマド・ユヌスさんの展開されるグラミン銀行は、
もちろん世界でも最も知られた存在ですし、
貧困の解消を目指すと同時に環境に配慮しながら
現地で調達した商品を販売するフェア・トレードの取り組みや
民間セクターによる介護サービスなども
最近ではよくみられるようになってきました。
以前に雑誌の販売を通じて、ホームレスの自立を応援する
ビッグイシューという活動を説明させていただきましたが、
これらは社会性・革新性・事業性の観点から、
まさにソーシャル・ビジネスといえます。


■ソーシャル・ビジネスの問題点

しかし、寄付などのチャリティや行政の支援に依存するのではなく、
自ら収入を得て持続可能な仕組みを作ることは簡単ではありません。
自立性と持続性が求められるとはいっても、資金、人材、専門性や
組織や事業のマネジメント能力などまだまだ十分ではありませんし、
一般の認知度も高いとはいえません。

先ほどご紹介した経済産業省の報告書によると、
ソーシャル・ビジネスを提供している団体のほとんどは、
年間収入が5,000万円未満、スタッフ4人以下と言われていますから、
ほとんどが中小企業の域をでていないといえます。
また日本での市場規模は、2,400億円程度と言うことですから、
社会的なインパクトは決しておおきくはないかもしれません。

ソーシャル・ビジネスでは、ビジネスとして
いかに自立できるかということを考えなければなりませんが、
日本での問題は、環境整備にあると思います。
そういう活動を十分認知し展開できるだけのまだ枠組みがないのです。
経済産業省が注目して、ソーシャル・ビジネスの環境整備を
始めていますが、今後行政が十分なサービスを
維持していくことができないだろうと言うことを考えると、
まさに新しい公共といわれる民間セクターによる
サービスの展開が不可欠と言えます。
ソーシャル・ビジネスが、1つの商機につながることになるかもしれません。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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