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ハブ&スポーク システム(国際ロジスティクス・国際経営/星野 裕志)

09/12/08

■ハブ&スポークシステムについて

最近羽田空港の国際空港化や国内の貿易を支えるコンテナ港湾の
必要性から、ハブ空港、ハブ港湾の議論が高まっています。
正式には、ハブ&スポーク システムの一部を、ハブと言っています。
改めてこのハブ&スポークというシステムについて考えてみたいと思います。

例えば福岡から首都圏に住む友達に、宅配便を送ることを考えてみてください。
自宅に荷物を受け取りに来た同じドライバーが、
直接に目的地の友達に届けることはありえません。
まず自宅に荷物を受け取りに来た人は、福岡にある配送センターまで輸送する、
次に福岡から東京まではトラックや最近であれば貨物列車を使って輸送し、
東京にある配送センターからは別のドライバーによって、
最終目的地まで運ばれることになります。
最低でも3人の手を経ていることになります。

つまり市場の中心に設置された配送センターに一旦貨物が集約されて、
それから目的地に近い配送センターに輸送された後に、
貨物が仕分けをされて運ばれるという輸送方法です。
この輸送システムの形状が、ちょうど自転車の車輪の中心にある車軸=ハブと
そこから放射状に出ているスポークと似ていることから
ハブ&スポーク システムと呼ばれています。


■考案者はフェデックスの創業者

このシステムを考案した人は、国際航空貨物のフェデラル・エクスプレスの
創業者でありCEOのフレデリック・スミス氏です。
もともとスミス氏が、1965年に米国のエール大学の学生だった時に、
この構想をレポートとしてまとめられたそうですが、
教授はそのレポートに「C」つまり優・良・可の、可の成績を与えたそうです。
レポートを評価した教授は、面白いけれども、
現実性に乏しいということで、Cを与えたそうです。
普通でしたらそれで終わるところでしょうが、彼はエール大学を卒業し、
ベトナム戦争に従軍した後の1973年に、テネシー州のメンフィスに
置いたハブを中心に、フェデラル・エクスプレスのビジネスを開始します。
初日の荷物は、わずか186個だったそうですが、
現在は220カ国以上にサービスを広げています。


■ハブ&スポーク システムの利点

ハブ&スポーク システムの利点を考える上で、
それ以前の輸送方法との比較で考えてみたいと思います。
貨物であっても旅客でも、従来の航空輸送であれば、
出発地から目的地までの間を直行便で輸送されていました。
そうなると、需要のある大都市間(例:羽田-福岡間)であれば、
毎日何便というように高い頻度でフライトが運航されますが、
それほど貨物や旅客の移動が望めない空港間(例:花巻空-福岡間)であれば、
ほとんどサービスがないか、頻度が低いと言うことになります。
またカバーできる都市も限られてきます。

それに、路線がそのような2地点の組み合わせであれば、
運航のクルーも整備士もメンテナンスのパーツも、それぞれの地点に
置く必要ができますし、多くの空港で施設に対する投資も必要になってきます。

その点、ハブ&スポークというシステムであれば、それほど需要の
大きくない空港からは小型機、中規模の都市からは中型機、
大都市であればワイドボディの大型機を必要に応じて
ハブまで運航して積み替えることで、
需要に合わせて広いエリアをカバーすることが可能になります。
また、ハブ&スポークというシステムでは、必ず1日に1回は
ハブに寄るので、ハブの所在地に集中的に投資をすることができ、
これは非常に効率的かつ利便性の高いシステムです。

そのために、フェデックス以来UPS、DHLといった国際貨物便の企業だけでなく、
世界中のほとんどの航空会社や海運企業、トラック会社なども、
自社のビジネスの中心地にハブを置きながら、
このハブ&スポークというネットワークを作り上げてきたといえます。
例えば、アメリカでユナイテッド航空だったらシカゴ空港に、
ドイツでルフトハンザドイツ航空であればフランクフルト空港にハブを置いて、
同じような放射線状のハブ&スポークシステムを作ってきました。


■ハブ&スポーク システムの問題

これほど多くの企業が追随するほどに優れたシステムではありますが、
問題もないわけではありません。
例えば、さきほどの直行便との比較で考えてみると、
二地点間の輸送に代わって必ず積み替えが生じます。
旅客であれば、中間点で乗り換えが生じます。
これらを接続輸送といいますが、巨大なハブ空港での接続には、
直行に比べて目的地までかえって時間が掛かり、
余計な手間と言うことになりますし、接続ミスの可能性も生じます。
またハブという一点に集中化することで、テロやストライキや
天災などのリスクが集中することにもなります。
ハブに障害が発生すると、全てのネットワークの機能が
停止してしまい、大変なことになります。


■ハブ&スポーク システムに対する見直しの気運

ハブ&スポーク システムは、輸送機関のスタンダードになっているので、
まだまだこれが主流ではありますが、それに対する見直しの気運もあります。
アメリカのサウスウエスト航空やヨーロッパのライアンエア、easyJetなどの
ローコスト・キャリアと呼ばれる格安航空会社は、需要のある区間を
中心に直行便を運航することで、大きくビジネスを伸ばしています。
これらの航空会社であれば、途中で乗り換えもなく、安く運行できます。
巨大なハブ&スポーク システムに対して、
ニッチとしてこのような動きも出てきています。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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