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高田仁准教授一覧

MITレポート (その1)(産学連携/高田仁)

09/11/04

09年9月より、ロバート・ファン・フェローとしてMITの
ビジネススクールであるスローン・スクールに滞在しています。
具体的には、スローンが設立母体となった
MIT アントレプレナーシップ・センター
(http://entrepreneurship.mit.edu/)という
全学の起業家教育のセンターを拠点として、
講義やセミナーに参加したり、教授陣や外部の専門家あるいは
学生とコミュニケーションをとり、起業家教育手法を学んでいます。

そもそも今回の教員派遣プログラムは、九大の工学部の卒業生である
ロバート・ファン氏(スローン・スクールの卒業生でもある)の御寄附により、
5年計画でスタートしました。
Synnex Co.(http://www.synnex.com/)というIT系のベンチャー企業を設立し、
年商1兆円にまで成長させたファン氏は、九大への恩返しの意味と、
九大から優れた起業家が輩出されるようにという思いで、
このプログラムをスタートさせることになりました。

■MITのアントレプレナーシップ・センター(E-センター)の設立経緯
1990年にエド・ロバーツという教授が、スローン・スクールのディーンに対して
全学的な起業家教育提供の拠点づくりを提案したことに端を発しています。
MIT創立以来の精神でもあるラテン語の“Mens et Manus
(頭と手を両方使う=理論だけでなく実践を重んじる)”に従い、
MITが全学的に有するカルチャー(研究成果の商業化に熱心)や
起業家教育に対する要求を踏まえて、
実務的な教育の提供を重視したセンターとして設置されました。
E-センターの“生みの親”はスローン校だが、
優れた技術の商業化を担う人材を育成するという観点から、
全学組織として位置づけられており、いわば“相乗り型”の組織となっています。

■E-センターの教育と学生
E-センターは、スローン・スクールの学生に対して
“アントレプレナーシップ&イノベーション・トラック(E&Iトラック)”を
提供しており、このトラックに入る学生が150人/年程度います。
ちなみに、スローンの正規学生数は350人/年程度です。
このE&Iトラックを修了した学生には、MBAに加えて、
特別な修了証が授与されます。
この修了証をもらう学生数は50人/年程度と
参加人数に比して少ないのですが、
学生はこの修了証をもらうことを目的とするよりは、
各科目で学べる内容に魅力を感じ、
それぞれに履修科目を選択して学んでいます。

また、E-センターは全学組織であるため、
スローンの学生のみならず工学部をはじめ
他部局からも学生が学びに来ています。
スローン以外の学生には、一部を除いて基本的に単位は出ませんが、
学生には技術の商業化手法を学べることがインセンティブとなり、
E-センターの科目を積極的に受講しています。

更に驚きなのは、ハーバード大学やタフツ大学など、
周辺の大学の学生もちらほら講義に混じっていることです。
講義を行う教員は、学生の構成に多様性を持ち込むことに
メリットがあると考えているフシがあり、
これら他大学の学生を排除することはありません。
このような学生は口コミで集まって来るとのことですが、
MITの内外には数多くの学生が自主的に立ち上げたクラブがあり、
そのようなクラブが学生の情報共有や意識を高める場となっています。
例えば、MITエナジー・クラブ(http://www.mitenergyclub.org/)は、
近年の地球環境問題とクリーン・テック産業の盛り上がりを踏まえて
活動を活発化させており、このようなクラブに所属する学生が、
E-センターの講義に高い意識で参加しています。

ちなみに、E&Iトラックで学んでいる学生によると、
2009年の実績では、同トラックで学んだ学生のうち
60〜70%が卒業後に既存のスタートアップ企業で働き、
また卒業生によって16社の新規企業が卒業段階で設立されたとのことです。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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