09/09/15
キリンとサントリーの統合、明治製菓とポッカの提携、
古くは花王のカネボウ買収、これらパッケージ・グッズ・メーカー間の
統合・提携・合従連衡の動きの背景には海外、
特にアジア地域での事業展開を迫られているという事情があります。
日本パッケージ・グッズ・メーカーの海外事業展開の立ち遅れは明らかですが、
その背景と理由をお話しすることが今日の趣旨です。
第一に、日本のパッケージ・グッズ・メーカーは
人口一億2000万人の国内の巨大な消費市場に自足していました。
しかし、この消費市場が急速に高齢化し、かつ、縮小しつつあり、
これからは、海外、特に近隣のアジア市場に活路を求めざるをえません。
第二に、今日の話の本質に関わることですが、
マーケット・インができていない、ということです。
自動車、TV、デジカメなどのプロダクト・アウト型耐久消費財の
基本的市場ニーズは世界のどこでも同じです。
安全性であり、走行性であり、鮮明な画像です。
一方、パッケージ・グッズの成否は土地土地の
消費者の好みが決定要因となります。
日本のいくつかのパッケージ・グッズ・メーカーは
アジア進出に長い歴史を持っていますが、
ネッスルやユニ・リーバ、P&G、台湾の統一企業といった
大きな成功例を見るには至っていません。
マーケット・インが首尾よく果たせていないから、としか考えられません。
それでは、その不首尾の要因を考えていきましょう。
1. 恐らくは商品への自信から(良い商品だから売れないわけはないという確信から)、
マーケット・リサーチに熱心ではなかった。
マーケット・イン型商品をプロダクト・アウト的に売ろうとしてきた。
2. 広告宣伝費の小出し逐次投入。
P&G、ユニ・リーバ、ネッスルといった企業は、
ビジネスチャンスを確信すれば、一気に必要にして十分な広告宣伝を行います。
広告宣伝投資において重要なことは必要して十分な量の実施です。
広告宣伝が効果を発揮するにはある程度のボリュームが必要で、
一億円の広告効果は10億円の広告効果の10分の1ということにはなりません。
また、逐次、小出しで広告宣伝するより、
短期間に一気に広告するほうが効果が高いことが多いのです。
日本のパッケージ・メーカーは広告宣伝に関しては
臆病な逐次小出し型が多いように見受けられます。
3. 最後に、日本のパッケージ・グッズはキャラが立っていない、ということがあります。
これは品質とは別の話です。
欧米のパッケージ・グッズ・メーカーは商品ブランドを強く打ちだします。
インスタントコーヒーのエクセラ、スープのマギー、
ふけとりシャンプーのヘッド&ショウルダー、などなど。
比べて、日本のパッケージ・グッズの個性は企業名の陰に隠れている感じです。
企業名よりは商品ブランドの方が消費者に近いので、
消費者の心の中にイメージを構築しやすいのです。
以上、日本のパッケージ・グッズ・メーカーの海外に活路を
見出すにあたっての課題を列挙してみました。
日本のパッケージ・グッズ・メーカーの海外進出の立ち遅れには、
これらの他にも、いろいろな事情がありましょう。
日本の市場は飽和し成熟していますから、
海外市場開拓が生き残りの道であることは確かですが、
前途には多くの難関が待ち受けていることは確かです。
分野: 出頭則行教授 |スピーカー: