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日本自動車メーカーのインド市場進出(国際企業戦略論)

09/07/28

インド自動車工業会が6月8日発表した
インドの5月の新車販売統計で、
スズキのシェアが50%を超えました。
小型自動車の新車攻勢が功を奏し
前年同月比10.4%増の7万785台で2位の現代自動車(2万3500台)以下を
大きく引き離しています。
一方、現地メーカーのタタ自動車(1万8000台)やマヒンドラ(8000台)、
米GM(5000台)は前年同月比マイナスとなりました。
インドの自動車市場は80年代前半に進出したスズキが常にリードしてきました。
このため、インド市場は「小型車=低価格」という構図が定着しています。
低価格車に強いスズキ、韓国の現代自動車、地元のタタ自動車の3強で
市場シェアの70%以上を握っています。
こうした中、ホンダは上位3社とは違った戦略を打ち出しました。
ホンダは6月10日、インドで主力小型車「ジャズ(日本名フィット)」を発売、
現地ではセダンに迫る高級小型車として販売しています。
価格は140万円でスズキの2倍です。
インドに根付く「小型車=低価格」という常識の中で
ホンダは富裕層向けの上級車種に特化するプレミアム戦略です。
ホンダのジャズ投入は
あえてインド市場の主流「小型車=低価格」に背を向けた恰好であり、
その成否が注目されています。

トヨタは6月9日、
大型の多目的スポーツ車(SUV)「ランドクルーザー」をインドで発売しました。
2010年末以降の小型車市場への参入をにらみ、
上級車種の投入でブランドイメージを高める狙いです。
日本からの輸入で高率の関税がかかるため約1690万円からとなります。
トヨタは同日、タイなどで販売している中型のSUV「フォーチュナー」を
9月に発売する計画も明らかにしました。

一方、日産自動車は
2010年5月にインド南部チェンナイに工場を稼働させます。
首位を独走するスズキから30年遅れ、
トヨタやホンダにも10年以上の差をつけられての本格参入となります。
日産は来年5月から小型車「マーチ(日本名)」の後続車を生産します。
生産能力は12年を目指す3交代制のフル操業時で20万台です。
その約3分の2を欧州など100カ国以上に輸出します。
品質要求の厳しい輸出主体の工場を
いきなりインドに設けるのは業界初の試みです。
生産現場のインド人リーダー候補者200人に
モノづくりを教え込む研修も日英の工場で始まりました。
日産はインドを小型車の一大拠点に育てる構想を持っています。
日産はブランドをアピールするため
スポーツ車「370Z」(日本名フェアレディZ)を年内に輸入販売します。
しかし、生産開始が近づくにつれ、販売力の強化が課題として浮上しています。
インド市場の半分近いシェアを握り、
価格帯や顧客層の異なる10車種近くを持つ
スズキの牙城に切り込むのは簡単ではありません。
日産は現在販売店5店舗を12年までに販売店を55か所に増やして
先行するトヨタやホンダの現在の店舗数の半分まで持っていく計画です。
「小型車=低価格」が主流のインド市場で
どのような価格設定にするのかも注目されています。

インドの自動車市場を日本企業がどう攻略するかは、
日本企業のBRICS市場への戦略の行方を左右する分岐点となると考えられます。
これまでの高品質・高価格の先進国向けのクルマづくりと
徹底した「小型=低価格」の新興工業国向け専用のクルマづくりの
ダブル・スタンダードでいくのか、
前者だけで行くのかの選択です。
日本企業は今後の世界の成長センターである
BRICS市場にどう向き合うのかが問われています。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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