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政府の有利子負債(財務戦略/村藤 功)

09/07/10


■異常な日本の債務残高比率
今回は政府の有利子負債というテーマでお話させていただきます。
日本政府は他の先進国よりも借り入れが、
少し多いのではないかという話が随分昔からあります。
一体どの位多いのかというと、今年の年末に、
国と地方の長期公債残高が816兆円位になるというほどです。
ところが816兆円といわれても、兆円単位の数字では、
ピンときません。
一方で日本のGDPは約500兆円です。
その168.5%ほどが借金となる見込みなのです。
しかし168.5%と言われても、またよくわかりません。
実はヨーロッパでの借り入れ目標は、GDPの60%だと、
言われています。
日本の3分の1位の数字なのです。

今、長期債務残高のDGP比率は、最悪のイタリアで、
114%。アメリカで78%、イギリスやフランス、
ドイツなどで60%ほどです。
ドイツは60%ではあまりに大きいため、GDPの35%まで、
債務を減らそうという話をしています。
アメリカも78%ですが、これも2013年までに、
財政赤字を半減させると言っています。
これらに比べて最悪の168.5%である日本は、
なぜこれほどまでお金を借りているのかということが問題です。
実はお金を借りなくても税収や社会保障収入などの、
収入の範囲で賄っていれば、政府は借りる必要はありません。
このような状況で、収入の範囲では賄えずに、
発行する国債のことを赤字国債と呼びます。

建設国債は道路や橋を作る目的の資金調達なので、
将来の若者たちも使えるということで、
それならば借りてもいいか、という考えとなっています。
赤字国債の発行は、将来につけを回す特例措置であるため、
原則として発行できないことになっており、
発行には特例法の制定が必要です。
赤字国債とは国民から集めるお金よりも、
大きな行政サービスを提供する場合に、
不足金額を調達するために発行するものです。
しかしそれは将来の若者に後は払ってください、
というものなのです。
要は世代間の負担移転です。
今の赤字国債がどんどん増えてきている原因は、
現在世代に必要な行政サービスを将来世代に、
払ってもらう想定で行っているからなのです。
若者の承認も得ずに若者から借りて行っているわけです。

これをこんなに増やしてはいけないのですが、
相変わらず増え続けています。
赤字国債や国の債務を減らそうという議論をしたところ、
世界金融危機が起こってしまい、
麻生総理が100年に一度の危機だと言って、
山のようなお金を政府が使うことになってしまい、
またどんどん額が増えてきてしまっています。

このような危機的状況なので当面は財政出動しないといけない、
と皆さんお思いかと思います。
しかし実際そんなことはありません。
実際には山のような無駄と、民営化すべき公営事業や、
公的金融機関が数百兆円分あるのです。
そこからお金をひねり出せばいいのですが、
相変わらず赤字国債を発行しているだけで、
工夫がありません。
将来の若者のお金を勝手に借りて、
どんどん使っているわけですから、もっと怒るべき話なのです。
ただ、あまりに額が大き過ぎて、皆気が付いていないのです。


■国債の依存度と調達先
国債依存度とは、一年の単年度で見た場合に、
一般会計に対する新規国債発行の比率です。
2009年度予算は今年の予算では37.6%であり、
4割ほどを国債でまかなっていることが分かります。
つまり皆から集めているお金は6割ほどに過ぎず、
あとは国債で調達して運営しているというものです。

国債は一般の国民が買うだけでこのような巨額になるわけがなく、
誰かが買ってくれるので、国債を発行できているわけです。
実は3つの投資家が国債を買っています。
民間金融機関、財政投融資と日銀の3つです。
民間の金融機関が誰のお金で買っているかというと、
我々の預金です。
一時、不良債権処理で自己資本が少なくなったため、
本来なら貸出を行わなければならないのですが、
貸出だとリスク資産となって、自己資本を、
沢山持たなければならずに大変なので、
貸出を減らして、そのお金を国債に振り替えました。
しかし最近は不良債権処理が一区切りついてきたので、
国債をまた貸出に戻しつつあり、あまり、
国債を持ってくれなくなってきています。
財投(財政投融資)は我々の郵貯や簡保、
年金のお金で国債を買っていました。
しかしこれも財投を縮小しようという郵政民営化という流れがあり、
あまり買えなくなりました。
民間銀行と財投が買ってくれないとなると、
最後の買い手は日銀しかありません。
もし国債を買おうとすれば、お金を刷りながら、
何百兆円でも何千兆円でも買えるというのが日銀です。
しかしあまり日銀に赤字国債を買ってもらっては困ります。
ものが一定なのにお金をどんどん発行すると、
インフレになってしまいます。
インフレになると国民が損をしますし、現在の政府負債の価値が、
あまりなくなり、家計が損をすることになります。
要するにお金をどんどん発行すると、政府の借入だけでなく、
我々の資産も目減りするという困ったことに実はなってしまうのです。


■有利子負債減少のために
これを解消するには民主党が言っているように、
無駄を省くことも必要です。
しかしそれで稼げるのは、ほんの10兆~20兆円ほどです。
数百兆円の借り入れを返すには、政府がほとんどの現業を、
民間に移すということをやらない限り無理だと思います。
財務経営ではPDCAサイクルという、Plan(プラン:計画)、
Do(ドゥ:実行)、Check(チェック:評価)、
Action(アクション:改善)考え方で、
経営すべきであると考えられています。
この考えに基づき、国民の幸せの企画は政府が行い、
現業としての国土交通サービス、インフラ整備、
社会福祉サービス、これらの実行は民間企業が提供し、
それが上手くいっているのかの進捗管理は、
政府が行うべきだと思います。
企画(P)と進捗管理(C)を政府が行い、現業(D)は、
民間が行うというのが原則のはずなのに、
現在は現業部分(D)まで政府が行っているため、
自分たちで自分をチェックできないのです。
企画(P)したとおりに実行(D)しているかどうか、
というチェック(C)を相手が民間企業でなく、
政府なのでできないという、コンフリクトが起こっているのです。
ただ、バブル崩壊があり、今回も世界金融危機で、
大変だったため、民間の体力がなくなってしまい、
代わりに政府がサービスを行うことになってきた、
という過去の経緯は確かにあります。
しかし、現在ではそれがあまりに大きくなりすぎています。
この解消のために、現業を数百兆円単位で、
民間に移す必要があります。
そうすれば数百兆円お金が入ってきて、
それで有利子負債を返せます。
これを早くしないと、財政はさらに悪化していくことになってしまいます。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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