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日本の金融再編(財務戦略/村藤 功)

09/06/26

■3メガの動き
今回は日本の金融再編というテーマでお話しさせて頂きます。
金融危機が始まった当初、アメリカの金融機関は大変だけど、
日本は大丈夫だと皆が言っていました。
しかし実際は株式市場も大きく下がり、三菱UFJ、みずほ、
三井住友銀行の3メガが揃って大赤字となり、
金融も更なる再編が進んでいます。
証券会社も、山一證券が破綻してからしばらくそのままでしたが、
シティの破綻など、新たに動き始めています。
日本で10数行あった都市銀行は再編が進み、もう3つしかありません。
その3つの銀行自体が変わるわけではありませんが、
自己資本への心配があり、それぞれが自己資本を、
自分で調達するという動きが起こっています。

資本増強を行った3メガは、3年ほど前には、
公的資金で注入を受けた分を完済していて、
基本的には更なる公的資金を受けることが嫌でした。
3メガとしては、公的資金を受けて金融庁の下にいては、
金融庁から経営に介入されるので、借金を完済して、
前向きに攻めていこうというところでした。
三菱UFJがいつもやられていたモルガン・スタンレーが、
危なくなったのでつい嬉しくなって株を買ったりしたのもその一環です。
しかし、金融危機は日本にも及び、保有株や不良債権処理で、
大きな損失を出してしまったために3メガとも大赤字に陥ったことを、
認めざるを得なかったのです。
その結果、それぞれ一兆円ほどの増資をしたということです。


■新生銀行とあおぞら銀行の統合の動き
金融業界の動きでは3メガの自己資本調達の動きに続いて、
新生銀行とあおぞら銀行、これは昔の長銀(日本長期信用銀行)、
と日債銀(日本債券信用銀行)ですが、この両行の統合問題が、
浮上してきました。
その昔、長期信用銀行の三兄弟と呼ばれた銀行がありました。
長兄が興銀(日本興業銀行)で、真ん中が長銀、
一番下の弟が日債銀というものでした。
その日債銀と長銀が潰れてしまい、次は興銀だと言われていましたが、
第一勧業銀行(DKB)と富士銀行と合併して、
みずほ銀行となり、生き残ることができました。

一方で破綻した長銀と日債銀はリップルウッドやサーベラスなど、
様々な外資系投資ファンドが株式を取得し、日本の感性では、
取られてしまったと感じるような状況に一時期なっていました。
それがここに来て、来年統合しようというような話が出てきたのです。
現在では長銀が新生銀行、日債銀があおぞら銀行と、
名前が変わってしまっていますが、昔から続く両行の統合計画です。
両行で共同持ち株会社を作って、そこに兄弟としてぶらさがる計画を、
来年の夏に実行しようという話になってきました。


■證券業界の動き
再編の動きは銀行だけではなく、証券業界でも起こっています。
山一證券がなくなった後、証券業界は野村・大和・日興の、
三大証券となりました。
しかし日興コーディアル證券は、日本で初めての、
三角合併の対象になってしまい、シティグループの一部に、
なってしまいました。
ところが、世界で1、2位を争う金融機関だったシティ銀行が、
今回のリーマンショック以降危機に陥り、つい最近、
上場も廃止となってしまいました。
そのような状況の中で、シティは、これからのコア事業と、
ノンコア事業を分けて、コアのシティコープと、
ノンコアのシティホールディングスとしました。
そのシティホールディングスの中に、日興コーディアルと、
日興アセットマネジメントを入れて、そちらを売却することになりました。
日興コーディアルを売却するということになったもので、
日本の金融機関としては色めきたち、皆が欲しいと手を挙げました。
三菱UFJ、みずほ、三井住友の3メガも揃って手を挙げました。
その中でも三井住友グループが一番高い値段を提示したため、
優先交渉権を得て5450億円強で買収することになりました。
しかし落ち着いて考えてみると、三井住友グループは、
大和証券と非常に親しく、既に大和証券SMBCの40%と、
個人向けのSMBCフレンド証券を持っています。
大和證券としてみれば、我々がいるのに、
日興コーディアルを買って、一体どうするつもりなのかと憤っています。
また3メガの内の1つに過ぎない三井住友が、日興と大和と両方抱えて、
一体どうするのかということですが、どうも三井住友は、
最終的に両方を統合させるということを考えているようです。
一方で日興と大和証券は、一緒になるのが嫌なので、
なんとか別々でいようという戦いを行っているといいます。
しかし三井住友としては、メガ証券が二つあっても仕方がない、
と考えているようで、これからもこの戦いは続くと思います。


■信用金庫と信用組合の区分撤廃
信用金庫も信用組合も、小さなところは相互扶助で助けることが、
基本となっています。
信用金庫の場合は、中央機関である信金中金がありますし、
信用組合の場合には全国信用協同組合連合会というものがあります。
政府としては、信金中金や全国信用協同組合に資金を注入して、
両方を助けようと当初は考えていましたが、そもそもこれは、
2つ必要なのかという議論になりました。
そこでお互いに相互参入を認めて業態を超えた再編を行い、
1種類の金融機関にするという動きを金融庁が始めたところです。

最近、景気の底が見えてきたという話も出てきていますが、
景気の底が見えてきたと言う人が出てきただけで、
景気が回復し始めたかどうかは別問題です。
15~6%のマイナスだったGDPをマイナス14%に修正する、
と発表してもあまり意味はありません。
所詮10%以上のマイナスだということに変わりはないのです。
また業界の統合や供給先をこれまでの半分にしよう、
というような大手企業の動きが全て止まったわけではありません。
このように、怖い話が一区切りついて株式市場の底が見えた程度で、
これからも様々なことが起こっていくことは避けられないと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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