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ストーリー作りのチェックポイント(マーケティング/出頭則行)

09/05/26

■『Made to Stick』 

昨日に引き続いての話になりますけれども、良いアイデアを出すために、
良いスピーチをするために、良いプレゼンテーションをするために、
良いマーケティングコミュニケーションを作るために、良いストーリーが必要で、
その良いストーリーを作るためのチェックポイントとはどういうことなのだろう、
という話をしたいと思います。

最近、アメリカで評判になった、ベストセラーで、『Made to Stick』という本があります。
「stick」というのは、「貼り付く」という意味なのですが、「貼り付けさせる」つまり
「心に記憶させるためには」という表題の本です。
ヒース(Chip Heath/Dan Heath)という兄弟が書いている本で
『アイデアのちから』というタイトルで日本語にも翻訳され出版されています。
この中で、心に貼り付けさせるためのチェックポイント、要点が書かれていて、
私も大変に感心したものがあります。

■success(サクセス) 

それは「success」(サクセス)という言葉で、スペリングで言うと、S・U・C・C・E・S・Sです。
この「success」の頭文字がチェックポイントになっています。

心に貼り付くようなストーリーを作るためには、どういうものでなければならないのか。

最初の「S」は「simple」(シンプル)、単純なものという、シンプルのSです。
ストーリーラインは複雑怪奇なものではなく、単純なものがいい、これが第一です。

次の「U」は、「unexpected」(アネクスペクテッド)のUです。
予想されてない、ちょっと意外な、というような要素が必要です。
いい意味で期待を裏切るような、驚きがそこにある、ということです。

3つ目の「C」は、「concrete」(コンクリート)。コンクリートというのは、具体的なという意味です。
抽象的でなくて、具体性がそのストーリーにあるということが大事です。

4つ目の「C」は、「credible」(クレディブル)。クレディブルというのは、
信じることができるという意味です。
そのストーリーが信じられる、意外だけれども、なるほど、と思わせるものだということです。

次の「E」は、「emotional」(エモーショナル)です。抽象的ではなくて、
感情に訴えるものであるということです。

それで、最後のSは「story」(ストーリー)なので、そのようなお話だということです。

すなわち、シンプルで、簡潔で、ちょっと意外で、具体性があって、信じることができて、
感情に訴えるようなストーリーであれば、心に貼り付きますよ、と言っています。

■本田宗一郎の「success」 

昨日も紹介した、本田宗一郎の言葉で、彼はまだホンダが町工場だった時に、
「マン島で優勝し、世界一のオートバイメーカーに我々はなるんだ」と公言します。
これはすごくシンプルです。

ですけど、町工場ですから、「世界一」とは意外です。
当時、オートバイメーカーの中で世界50位とか60位にもなっていないだろう、
それが「世界一なの?」というのは意外性があります。

そして「マン島だ、世界一だぞ」というのは具体的です。まさにコンクリートです。

クレディブルというのは、あの本田宗一郎がそういうことを言っているんだ、という意味で、
少なくとも従業員たちは、「あのおっさん、信じようよ、ついていこう」と思ったと思います。
一緒になってマン島に行きたいというので、ホンダに入ってきた人間がいると思います。
世間は笑っていたかもしれないけど、一部の人たちは、
それをクレディブルなものとしてとったと思います。

そういうところはとてもエモーショナルで、熱い何かを感じます。

そして、一緒にやっていきたいな、というストーリーです。

こういうシンプルで、意外で、具体的で、信じることができて、
感情に訴えるようなストーリーであれば、「心に貼り付きます」と言っているのです。

そういう意味では本田宗一郎は、技術者ではあるけれども偉大なマーケターでもあると言えます。

盛田昭夫にしても、松下幸之助にしても、
それぞれ出自はエンジニアだったりするのですけれども、
そういう意味では、創業者たちというのは神話をつむいでしまう、
偉大なコミュニケーターという感じがします。
そして、彼らの言葉が、社内で神話となって、行動規範や理念につながっていると思います。

■マーケティングプランのチェックポイント 

皆さんは、スピーチを頼まれたり、プレゼンテーションをしなければならないことがよくあると思います。
私の仕事でいうと、いいマーケティングプランを作る、このような時に、
このチェックポイントがとても役に立ちます。

つい、我々は頭の中でこねくり回して、抽象論にしてみたり、
シンプルの反対の「complicated」(コンウリケーテッド)な、複雑なものにしたりしますけど、
そういうものは、決して心に貼り付くことはありません。

シンプル(simple)なのだけれどもちょっと意外性がある。意外性(unexpected)がないと、
やはり人は覚えてくれません。意外ではあるが、具体的(concrete)であり、
信じられる(credible)。更に感情に訴える(emotional)話(story)。
即ちSUCCESが良いスピーチ、良いプレゼンテーション、
良いマーケティングプランに必要な要素ということになります。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

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