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村藤功教授一覧

中国の財務(財務戦略/村藤 功)

09/02/20

■株式市場の下落
今回は、中国の財務についてのお話です。
この悪化した経済状況の中で、影響力を増して経済国になった、
中国の動きは気になるところです。
もともと中国経済は、随分昔から、北京オリンピックまでは大丈夫かもしれないが、
その後は一体どうなってしまうのだろう、という懸念がありました。
心配していたところに、世界金融危機が襲ったので、
今、中国は結構大変なことになっています。

上海株式市場の上海インデックスは、リーマンショックで打撃を受けたというよりも、
2007年の秋に6千というピークを付けた後、五輪期間中に、
12%値下がりしたことを含め、ピークの半分以下に下落しました。
これは不動産バブルや株バブルに対して、
政府が金融引き締めをオリンピックの前に始めていたためです。
それが、少しずつ効きはじめたところで、予想外に、世界金融危機が起こり、
更に下落してしまいました。
上海インデックスはピーク時に6千ありましたが、現在は2千位、
つまり3分の1程度まで下落しました。
また香港のハンセン・インデックスも、2007年の秋に3万位のピークとなった後、
1万3千程度まで下落してきた状況です。


■経済政策の転換
中国政府の政策としては、これまでの繊維やおもちゃなど、労働集約型産業、
安い人件費を強みにしていくものを減らして、情報通信や、工作機械など、
付加価値が高いものを生産する創新型国家、
付加価値の高い国家に転換しようということを行ってきました。
研究開発を活発に行う付加価値の高い会社としては、
朱先生が華為(ホアウェイ)のお話をされたと思います。
華為(ホアウェイ)は、ドクターやマスターの資格を持っている人を、
何千人も雇っています。
ところが、繊維やおもちゃなどの労働集約型産業を減らそうとしていたところに、
金融危機が襲い、製品を買ってくれなくなってしまいました。
そのため、おもちゃ工場や靴工場、特に広東省周辺の、
東莞(トンガン)の工場が、ぞくぞくと閉鎖し、皆で夜逃げする、
という状況になってきています。

しかし、考えてみれば、もう随分長い間、中国は、
大変な高成長を遂げているわけです。
1978年に、鄧小平が改革開放を始めてから、もう30年が経ちました。
それが今、どこまできたかというと、2008年のGDPはドイツを越えて、
世界3位です。
これは、アメリカ、日本に次ぐ、第3位です。
人口から考えて、日本に追いつくのは時間の問題で、
いずれはアメリカにも追い付き、追い抜くと言われています。
日本企業は、昔、アメリカに勝つか負けるかを、
パフォーマンスの基準にしていましたが、今後は、中国に行って、
勝つか負けるかで日本企業の将来が決まる、
というようなことが見込まれるようになったという状況ですね。


■成長の鈍化
中国はまだ成長を続けていますが、以前は2桁成長が当然という考え方でした。
しかしリーマンショック以降の去年の第4クオーター、
10月から12月のGDPの伸び率は年率6.8%まで下落しました。
去年一年間で見れば、9%成長ですから、
日本に比べるとかなり大きな成長を継続していますが、
少し心配になってきたところです。
特に、輸出入が、大変な落ち込みを見せ始めています。
中国の輸出入は、日本やアジアから部品・原材料を輸入して、
欧米に輸出するという形で、大変な高成長を持続してきました。
ところが、2009年1月の輸入が、どの程度下落したかご存知でしょうか。
なんと昨年に比べて43%の下落です。
日本からの輸入が43%、ASEANからの輸入も、50%ほど下落しました。
ただ、輸入だけでなく輸出も下落しています。
輸出が輸入を上回れば、貿易黒字になります。
今回、輸出の下落を輸入の下落が上回ったため、
貿易黒字が逆に増えるという状況になりました。


■中国への投資
欧米の投資、特に金融市場に対するものは引き上げが続き、
少し困ったことになってきています。
中国政府は、大きな貿易黒字もあるので、
それならば自分で投資することにしました。

輸出で稼げないのなら、国内で需要を作ろうということで、
4兆元(5~60兆円)のお金を使って、国内で公共投資する、
という方針を打ち出しました。
それに対応して、地方政府も、中央が公共投資を行うのなら、
地方でもやるぞということで、30兆元(約400兆円)という、
中国のGDPをはるかに越える額の投資計画を立てています。
しかし、それが本当に出来るかというと疑問です。
そもそも財源が、地方政府の言っている計画の1割や、
せいぜい3割ほどしかないので、全部出来るわけではないだろうということです。
それから、中央政府が4兆元の計画を打ち出して、皆が驚きましたが、
そのほとんどは、もともとあった計画らしいのです。
どの程度達成できるのかということは、
やってみないとよく分からないという状況ですね。


■家計の貯蓄・社会保障
実は家計の貯蓄は結構あります。
国全体として、輸出が輸入を上回るということで、貿易黒字で、
どんどんお金を溜め込んでいます。
それを、株式市場が調子いい時には、株に投資していました。
しかし株が下落してきたので、株からお金を引き上げて、
銀行預金や郵便貯金に置くことが増えています。
現在は家計の預貯金に対する貯蓄が22兆元位(280兆円ほど)に、
増えてきているという状況です。
日本では家計の預貯金は800兆円ほどあります。

中国は社会保障の整備が遅れています。
もともと年金や医療を、政府がしっかりやってくれないので、
貯金を持たないと危ないと中国の人たちは考えて貯蓄をしてきたわけです。
では、中国の年金や医療はどうかということです。
社会主義国家といわれているわけですが、社会保障は十分ではありません。
少し前までは、都市には社会保障がありましたが、
農村には何もないという状況でした。
ですから農村の人たちは、老後の生活は、
一緒に暮らしている若者に面倒をみてもらわなければなりませんし、
病気になったら、亡くなってしまう事が多々ありました。
農村のなかでは大変なお金持ちでも、大病を一つする人が家族の中に出ると、
あっという間に没落するというような状況だったわけです。
ところが、最近は状況が変わってきました。
実は、地方で、医療制度が導入されはじめたのです。
2003年に、新型医療共済制度が実験的に導入され始めました。
2007年には、国が100億元、千数百億円のお金を使って、
地方の医療保障制度を推進することを決定し、
80~90%の農民が加入するようになったといいます。
これは全ての病気をカバーする制度ではなく、大病に限るものらしいですが、
病気になっても没落しないというような状況にはなってきたわけです。


■中国の資源確保
中国は後発国だったので、アメリカや日本のように、
資源を常に確保してきたわけではありません。
産業発展のための資源をなかなか調達できませんでした。
そこで資源輸出国が多いアフリカ諸国と、経済発展に向けた資源確保のために、
ものすごい勢いで関係を強化しています。
スーダンは輸出の7割位が、中国向けです。
アフリカには産業が他にないため、資源を中国に輸出しています。
去年までの、資源価格が上がっている時は良かったのですが、
現在は価格が下がってしまったため困っています。
中国は、資源を売ってくれる大事な国をなおざりに出来ないので、
アフリカ諸国に対する無償援助や、債務免除を、
一生懸命やり始めている状況です。
中国経済とアフリカ経済は、密接に関っているため、
アフリカの国々は中国経済の好不況の影響を受けていくことになるでしょう。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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