QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

出頭則行教授一覧

持続的成長とマーケティング①(マーケティング/出頭 則行先生)

09/02/09

■持続的成長

毎年、正月の元旦の各新聞には、
二部刷り、三部刷りというサプリメントを付けて、
大変多くの企業広告が掲載されています。
今年の元旦の企業広告の多くは地球環境の話や
資源節約の話、エコがテーマでした。
このような不況下で、あまり景気のいい話もできない
という背景があるとは思いますが、ほとんど全ての
企業広告が、エコ、地球資源というテーマを
扱っている現状に、やはり時代の節目を実感します。

持続性を英語で言うと、サステナビリティ(sustainability)、
持続的成長はサステナブルグロース(sustainable growth)と表します。
サステナビリティは、今の時代のキーワードだと思います。
CO2が本当に地球温暖化に影響しているのか、
温暖化が地球の生態に本当に悪い影響を与えているのか
という辺りは、政治的な問題でもあるので、
諸説紛々していて、科学者や識者の間に、
コンセンサスは得られていないようです。
しかし、地球資源が有限で、
その有限の資源を大事に使い、
リサイクルして、リユースして、リデュース(節約)する、
すなわち、国連が提唱している
三つのRの活動(Reduce, Reuse, Recycle)なしには、
持続的成長はできないということは、
世界のコンセンサスとなっています。
諸説紛々としていますが、この持続的成長が必要である
ということは、もはや、皆が共有している考えだと思います。


■ウィンウィンの時代

少し前に、日本はバブルを経験していまして、
再度また不況に突入してしまいました。
このバブルの時代に、よく使われた言葉に、
勝ち組、負け組がありました。
その中で、お互い、負け組にならないように、
ウィンウィンの関係を築こうという言い方をされてきました。
合併やアライアンスを行う時は、よくウィンウィンな
関係を築くというようなことが言われていて、
非常に流行り言葉になっていたことがありました。
今でも、その余波で使われていることもありますが、
このウィンウィンという言葉は、
その時代を表す象徴的な言葉だと思います。

アメリカの経営者の中には、
ストックオプションも含めると、
年収が何百億という人々が存在します。
彼らは、株価が上げられれば、
株主も儲かるのですから、
自分が多額な報酬を得ていても、
どちらも勝ち組になって、
ウィンウィンではないかと言っています。
しかし、この株価を例にとりましても、
実際の株価は、終局的には実体経済に
リンクしていて、株価は無制限に
上がり続けるわけではありません。
つまり、株は、青天井に、
永遠に上がることはないわけで、
バブルはいずれ破裂する運命にあります。


■共存、共栄する社会へ

株の世界でも、実体経済にリンクしている以上、
株価は青天井ではなく有限なのです。
そのような中で、特に今、この金融不況下で、
大きなパラダイムの変換が起きているのではないか
と私は感じています。
有限な世界では、ウィンウィンは
永久に続けていけるものではなく、
それは部分最適の論理なのです。
部分最適というのは、お互い勝ち組になろうとして、
企業は勝ち組になるために、すごく努力しますが、
その背後には、色々な負け組がいるかもしれない
ということです。
つまり、勝つためには、時には資源を過剰に
使用したりすることも厭わなかったり、
意図せずとも、水を汚染したり、土壌を汚染したり、
空気を汚してしまうこともあるのです。
社会が負け組みになってしまうわけです。
経済学では、このような社会にかかる負担は
社会コストと言われています。
各個人や各企業が勝つために無理をした分、
幸せのしわ寄せみたいなものを、
社会が負っている構図が存在しています。
しかし、バブル経済の破綻や金融大不況を契機に、
持続性が真剣に考えられるようになり、
部分最適な有様から、社会コストまで含めて
全体を見るようなパラダイムのシフトが起きています。

その流れで、過剰な幸せではないかもしれないけれども、
それぞれ、分をわきまえた豊かさがあるのではないか
という考えがでてきています。
一人が年収で300億も稼ぐ必要はないのではないか、
もう少し、各個人が共存、共栄して、
分をわきまえた豊かさというものを
追っていこうではないかということに、
時代が変換してきています。
ウィンウィンからウェルウェルへの転換といいますか、
分をわきまえた豊かさへの転換が行われようとしています。


■これからの社会

富の配分が一部に集中しても
繁栄は底辺の生活レベルが上げるとして、
勝ち組の論理をサポートしている時代がありました。
しかし、どうやらそのような考え方に
多くの人が違和感を持ち始めたようで、
勝ち組が多くをとってしまい、
世の中に公平に幸せを分配しない社会に
なってしまっているのではないか、
もっと、生きている人間が応分な幸せに
あずかれるような社会であるべきではないか、
という考え方に、今は変わってきていると思います。

資本主義経済の、マネーゲームの果てに
今のような不況が起きているとも感じています。
マーケティングも、世の中を映し出す鏡のような
ものですから、この大きなパラダイムシフト
というものを敏感に反映しています。
明日は、マーケティング分野に、どのように、
パラダイムシフトが反映されてきているか
という話をしたいと思います。

分野: 出頭則行教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP