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アントレプレナーの機能と定義 (中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

08/11/10

今日はアントレプレナーの定義とその機能
について、基本的なことからお話します。
まず、最近どうしてアントレプレナーに対して
かなり注目されているのかということについて、
若干お話したいと思います。
近年、新規事業やベンチャービジネスの必要性が
提唱されている中で、その担い手としての
アントレプレナーの役割が再び注目されています。
アカデミックな分野においても、以前は
アントレプレナー研究というのが若干傍流になっていた
という流れもありましたが、最近は主流になりつつあります。
基本的には3つの質問があるではないかなと思われます。
まず誰がアントレプレナーなのか。
次に、それが一体どのような機能を果たしているのか。
そして、一体どこがいいのかといった、
3つの質問があると思われます。
今回は、この3つについて順次にお話ししていきます。

■誰がアントレプレナーなのか

まず初めに、誰という質問です。
これは恐らく、聞く人によって答えが
それぞれ違ってくると思われます。
一般的なイメージとしては、やはりリスクテイキングとか
非常に野心を持っているとか、あるいは
例えば自己実現意欲が非常に強いといった
個人が想定されていると思われます。
例えば、個人の名前を挙げていきますと、
ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、
あるいはグーグルなどが割と最近注目されているような
様々な名前が挙がってくるように思われますが、
実は明確な定義がないというのがひとつの現状です。
だからこそ、人によって、全然
答えが違ってくるのではないかと思われます。
伝統的なシュンペーターの定義では、
アントレプレナーというのは経済発展の原動力をなしており、
もっと具体的にいうならば、制約されている資源、
市場リスクあるいは、技術の不確実性の中でいかに
その技術的な機会を見出して発見して、それを実現していくのか、
というのが基本的な定義になっています。
非常に理屈的な話で難しいのですが、
例えばここの1つのキーワードとして、
「技術的機会というのはどこにあるのか」
ということがありますが、これはなかなか難しく、
自分で1つのことをやっていく中で探すしかないです。
よく事後的に成功したアントレプレナーに話を聞きますと、
そのスタートした時点において、機会があった
と答える可能性かなり高いです。
しかし、その時点に立ち戻って考えると、
本当にその機会があったのか、
またどのくらいの機会があったのかというのは、
結果的にそうだったということがいえるだけで、
実際にはかなり難しいです。

■アントレプレナーが果たしている機能
次に、「アントレプレナーが一体どういった
機能を果たしているのか」ということです。
再びシュンペーターの定義になりますが、
企業家の果たす機能というのは、既存のレジュームを
破壊するようなものである。つまり、
シュンペーターが強調している、
「これまでにあったものではなく、
それを壊していく」といったイノベーションの役割が
かなり期待されているということになります。
また、イノベーションという言葉ですが、
通常狭く捉える傾向があります。例えば、
新しい製品(プロダクト)であるアイフォン、
あるいはちょっと前のアイポッドなどですが、
これらがイノベーションだというのは、
非常に分かりやすい例です。しかし、
シュンペーターが定義しているイノベーションの本質
というのは、既存の枠組みを超えて、何か新しい、
例えば、事業とか思考の枠組み、体系を生み出していく
というのが本質です。一言で言うならば、
「新しい結合」のことです。イノベーションにはもちろん
新製品も含まれていますが、今まで実用化、
開発されてない新しい生産方式も含まれます。
例えばトヨタ生産方式という例が挙げられます。
更に、これまで参入していなかった
市場への開拓なども含まれます。
日本の企業が海外に行って、海外の企業が日本に来ると、
これもやはりイノベーションの一種です。
もう一つは新しい原材料、供給源の獲得です。
最近の例でいうと、バイオ、繊維の新しい材料などが
開発されており、こうした事もイノベーションの一種になります。

■組織のイノベーション
最後は、新しい組織という例です。
組織というのは実は非常に重要な要素として、
イノベーションの範疇に入っています。
例えば、1920年代にビジネスの歴史の中で、
初めて事業部制を導入したデュポン
という会社の例があります。
最近、ほとんどの大企業では、事業部制、カンパニー制、
あるいは分社化を実行していますが、
それを実は初めて導入したのがデュポン社であり、
元々は火薬と爆薬の専用メーカーでした。
戦争が終わってしまうと、生産設備への投資が
余剰資源になってしまいました。その余剰資源を利用して、
何か民生関係の分野に進出できないかと考え、
いわゆる多角化戦略をとるようになりました。
そこでの1つの問題としては、
それまでとっていた職能別組織です。
つまり職能別組織が、新しい多角化で生まれた
新しい市場に対して対応できなくなってしまったのです。
現在で考えみると、組織は戦略に従うということですが、
この事例自体が今から70年前の話ですので、
やはり試行錯誤や、様々な岐路の中で、
事業部制という1つの結論に達しました。
現在でももちろん、組織は、こういうふうに組み替えた方が
よりいいものが出来上がっていくのではないか、
よりチームワークが高まるのではないかなど、
様々なことが言われています。

そういった面を幅広く解釈すれば、
1つのことに当てはめてしまわないことこそが
イノベーションという解釈に繋がるのではないかと思われます。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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