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岡田昌治准教授一覧

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企業のコンプライアンスと企業内弁護士(国際企業法務/岡田昌治)

08/11/04

■弁護士の就職問題

学生たちの一番の問題は、司法試験という1つの関門を
くぐらなければいけないということがあり、
その関門の合格率が、だんだん下がってきたことにあります。
それに加えて、もう1つの関門として、就職の問題があります。
今、実際に学生たちの間では、
自分の働きたい弁護士事務所、裁判所、検察庁で
働けるのだろうかという不安が非常に高まっています。
なぜならば、前回申しましたように、以前まで
1200人だった合格者が、3000人に増える予定になっています。
今年の新司法試験の合格者が2065名、プラス旧司法試験も
含めると、2500~2600人と増えていまして、増えた部分について
このままでいくと、合格者であっても失業者になるという、
実際の就職については、かなり悲観的な人が多いようです。


■司法試験後の受け皿

普通に考えると、司法試験合格者を増やすのであれば、
その受け皿をまず用意すべきなのです。
例えば、裁判官のポストを増やす、検察のポストを増やす、
あるいは弁護士事務所に対して、雇用を促進するような
何らかの対策をこうじるべきですですが、
ほとんど、何もなされていません。
さすが、法務省と文科省という感じがします。
実際は、裁判官や検察のポストは、そんなに増えていません。
あるいは、弁護士事務所自体、
もともと、弁護士の方々は事業計画なんて無縁な世界ですから、
事業計画もなければ、そこに採用計画もありません。
どれ位、自分の弁護士事務所の弁護士を
増やしていいかなんて、あまりお考えになっていません。
そのようなところに、ポンと合格者が増えてきても困るわけです。
弁護士の方々から見ると、
単に競争相手が将来増えるのではないか、
あるいは、クオリティは保てるのか、
などの疑問を持たざるを得ないことになるのです。


■懲罰的賠償の導入

もし僕が法務省にいて、一番ダイレクトに、
弁護士の数を増やそうとするならば、
懲罰的賠償の導入を図ると思います。
要はアメリカ的な仕組みで、あそこまで極端ではなくていいのですが、
何か損害賠償が起こった時に、被害者ではなくて
加害者を見るということです。
加害者を見て、その加害者がいくら賠償を払えば、
二度とこういうことはやらないだろうという賠償を行うのです。
日本は、直接賠償で被害者を見ています。
例えば、被害者の体の怪我、あるいは精神的なダメージを
ケアするためには、いくら被害者がもらわなければいけないか
ということで見ています。
懲罰的賠償額というのは、膨大な額になります。
ハンバーグ屋さんで、コーヒーをこぼしたおばあちゃんに
何千億円という額を支払わなければならないということにもなります。
そして、この加害者の懲罰的賠償額の10%、20%、
あるいはそれ以上の額かもしれませんが、
それが弁護士の成功報酬、すなわち、収入になるのです。


■懲罰的賠償とコンプライアンス

今は、限られたパイの中で、弁護士業務を行っています。
そのパイを広げるという意味では、
懲罰的賠償を導入する意義があります。
もう1つは、その懲罰的賠償を導入することになると、
企業が真剣にコンプライアンスを考えるようになります。
今は、日本で何か企業が不祥事を起こしても、
企業の人たちが何を考えるかというと、
カメラの前で何秒頭を下げればいいのか、を考えて、
その後、例えば人のうわさも75日でカムバックできるというのが、
日本におけるコンプライアンスの考え方です。

しかし、懲罰的賠償が入ると、
1度、悪いことをすると、もうそこでお陀仏です。
だから真剣に、その会社のコンプライアンスを
考えるようになります。法令遵守、倫理遵守が整います。
そして、そのために必要な弁護士、企業内弁護士を
企業の中にきちんと持つことになります。
あるいは、法務部法務室を作って企業の
コンプライアンスをきちんと行おうという気になります。
でも、今は、それがないので、コンプライアンスといいましても、
多くの場合、例えば、コンプライアンス委員会などが、
年に1回か2回開かれるのが関の山です。
これは、福岡の企業に限らず、
東京の企業でもそうです。
だから、そこに、懲罰的賠償を入れることによって、
企業内弁護士を採用する仕組みを作るのです。
前も申し上げましたが、企業内弁護士を
持ってない企業というのは日本くらいです。
他のアメリカや欧米ですと、
企業の中の法務部の社員は皆弁護士です。

アメリカでは、企業内弁護士の数と、
外の弁護士の数というのは同じ位です。
そのような背景のあるアメリカのロースクールのシステムを輸入して、
同じよう制度だけ作ろうとしても、所詮、無理な話です。
法科大学院、新司法試験については、
まだまだ考えなくてはいけない部分が多いので、
次回お話させて頂きたいと思います。

分野: 岡田昌治准教授 |スピーカー:

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