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戦略とバランススコアカード(その3)(産学連携マネジメント/高田仁)

08/08/25

今年1月の放送で、バランススコアカードについてご紹介しました。
今日は、その続きとして、
大学がどのようにバランススコアカードを使いこなしているかについて、
イギリスのリーズ大学で調査を行いましたので、その概要についてお話しします。


◆バランススコアカードとは?

バランススコアカード(BSC)は、
1990年代に米国ハーバード大学のキャプラン教授等により民間企業の
経営手法として開発されたもので、企業戦略の構築と組織内での共有、
さらには戦略の遂行管理を行うためのツールで、
『戦略マップ』や『スコアカード』といったツールから構成されています。

通常、民間企業のBSCでは、まず、ミッションやビジョンの設定や
SWOT分析(強み/弱み分析)にもとづいて戦略マップを描きます。
このとき、『財務』『顧客』『プロセス』『人材』も4つの視点から
戦略を整理して、それぞれの関連づけをしたマップを描きます。
『財務』すなわち収益を上げ、従業員に給与を支払い株主に利益を
還元できるようにするためには、『顧客』の満足度を高める必要があり、
それを実現するためには、組織内部の業務の進め方、
すなわち『内部プロセス』をより良いものにする必要があり、
内部プロセスを良くするためには、
組織の『人材』が学習し成長することが必要である、
というつながりを分り易く1枚のマップで表現しています。

戦略のひとつひとつに具体的な活動内容とKPIと呼ばれる指標が設定され、
それらをスコアカードにまとめて管理しています。KPIが上がったとか下がったとか
モニタリングすることによってマネジメントする点が特色です。

現在では民間企業に留まらず、
病院や自治体など公的機関においても活用されるようになってきており、
1月の放送では九大QUEST-MAPの取り組みも紹介しました。


◆リーズ大学のBSCの取り組み

イギリスのリーズ大学は、学生数約3万人、教職員8千人の総合大学。
学生や教職員数は九大よりも大きいですが、予算規模や学部構成は
九大と比較的近いです。

2004年にマイケル・アーサーという学長が就任し、様々な大学改革への
取り組みをスタートしました。リーズ大学は、イギリス国内の研究大学では
トップグループで7、8位に位置していますが、資金獲得や学生獲得競争の
激化という厳しい環境のため、油断をすると第2グループに落ちてしまう
という危機感から、アーサー学長が改革に取り組んでいます。

そんな中、2005年からBSCの戦略マップづくりを開始しました。
その過程で、BSC開発者であるハーバード大学のキャプラン教授の
助けも借りながら、2006年に『Strategy 2006』を完成させました。


◆リーズ大学のBSCの特徴

リーズ大学のBSCの特徴を整理すると、下記の通りとなっています。

(1)「2015年までに世界で上位50位以内に入る」という
アグレッシブでわかり易いビジョン(2005年は103位)
(2)「教育」「研究」「産学連携」「国際連携」の
4つの視点から戦略を整理(→企業と異なる視点)
(3)31のKPIとその中で最も重要な9つの「Gold Measure」の設定

まず(1)の世界50位に入るというビジョンについて。
世界の大学ランキングでは、イギリスのタイムズ紙が発表しているランキングが
有名ですが、リーズ大学は、2005年は103位、2006年は121位でした。
これが、2007年には一気に80位までランクアップしました。
(九大は、2006年ランキングは128位で、リーズ大学と
ほぼ同ランクでしたが、2007年は伸び悩んで136位。)
単純にBSCの取り組みだけでランクアップしたとは考えづらいですが、
現地でのインタビューを通じて、「世界50位内の大学になるんだ!」
というトップの意思は、学内でかなり広く共有されている印象をうけました。

次の(2)の「教育」「研究」「産学連携」「国際連携」の4つの視点ですが、
これは、冒頭で述べたように、企業の「財務」「顧客」「内部プロセス」「人材」の
視点とかなり異なり、大学らしい視点となっています。この4つの視点の設定は
九州大学でも同じであり、それなりの規模の総合大学/研究大学であれば、
これら4つの視点についてバランスよく向上を図ることが求められます。

最後に、31のKPIと9つの「Gold Measure」について。
Gold Measureは、「学生満足度」「学生/教員比率」「留学生比率」
「研究レベル(英国研究アセスメント調査)」「ポスドク/教員比率」
「黒字の部局数」「教職員レビューへの参加率」
「リーダーシップと変革マネジメントに対する教職員評価」から構成されます。
これらの指標は、カウンシルに報告されます。大学にとって欠かすことの出来ない
最も重要な要素を、ゴールドメジャーとして常にモニタリングしているのです。

明日は、リーズ大学がこのようなBSCを使ったマネジメントを
具体的にどのように実施しているのかについてお話します。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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