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サブプライムのコントロール (財務戦略/村藤 功)

08/08/15

■サブプライム問題の現在

サブプライムに関しては
何度もお話させて頂いていますが、
今日はサブプライムのコントロールというテーマです。
コントロールといっても、
全然コントロール出来ていない、という話です。
コントロールが出来ずに、
最初はたいしたことないと言っていた損失が、
どんどん膨らんでいます。
世界中の株式市場で1000兆円株価が下落したり、
日本で200兆円株価が下落したりしました。
このようなストック価値の下落は
フローの損失としてだんだん現れてくる
というような話を、以前させて頂いたと思います。


■政府系住宅金融機関の問題

今度はついに、GSEといわれる、
Government Sponsored Enterpriseという
政府系の住宅公庫に問題が波及してきました。
日本でも、財投資金を使って住宅ローンを出している
住宅公庫というところがありました。
アメリカだと、ファニーメイ(Fannie Mae)と
フレディマック(Freddie Mac)がそれに当たります。
ファニーメイという米連邦住宅抵当公社と、
フレディマックという米連邦住宅貸付抵当公社がありますが、
Mortgage Associationと付く方が
MAですから通称ファニーメイで、
Mortgage Corporationが付く方が
MCですから通称フレディマックです。

この2つの機関が発行している住宅ローン証券や
第三者が発行した証券に対する保証を全部合わせると、
500兆円位あります。
その500兆円というと、日本のGDPと同じです。
アメリカのGDPの半分位にあたると思います。
その内、160兆円は海外で外貨準備として持たれています。
海外の政府や、日銀のような中央銀行が
外貨準備として持っているわけです。
その格付けはトリプルAなので、国債と一緒です。
いざという時は、アメリカ政府が何とかするだろう
ということを前提に、この格付けは成り立っています。

この2つの政府機関のようなものが
破綻する訳がないと皆思っていました。
この2つは公的機関だと思っている人も
結構多いと思います。
公社と言うので、公的機関に見えますが、
2つともニューヨークに上場しています。
ただ、政府系機関で、政府が色々なことをやるので、
民間とも公的機関とも言えない中途半端なものです。
政府系でもあり、それから、株も上場している。
でも、日本の日銀も公開して有価証券報告書を
提出しているので公開しているだけでは
必ずしも民間とはいえません。
アメリカのこの2つの機関は半官半民といっていいでしょう。

みなさんご承知のように、民間がサブプライム問題で、
大爆発してしまいました。
この状況で民間の金融機関は、もう勘弁してくれと言って、
住宅ローンや、住宅ローンを証券化したものを
マーケットで損をしてでも売却しました。
それを引き受けていたのが誰かというと、
このファニーメイとフィレディマックというわけです。

アメリカ政府がファニーメイとフィレディマックに、
何十兆円も民間の損失分を買えと指示しました。
民間が逃げて来るのであれば、
しょうがないから引き受けろと。
とにかく国民の住宅なのだから、
支えなければならない、というようなことを言ったので、
この二つが引き受けた訳です。

すると、あっという間に破綻寸前となってしまいました。
住宅ローンの証券化市場ではもともと政府系が
全体の80%位を占めていましたが、
民間の分を引き受けたので、
政府系のシェアは99.8%まで拡大してしまいました。
つまり、ファニーメイとフィレディマックが
住宅ローンを証券化したものを
ほとんど全て持っているというような状況になったため、
民間のトラブルがこちらに移ってきてしまい、
株価が暴落してしまったわけです。
アメリカでは会計基準として、
今まで帳簿に載せていなかった保証債務を
貸借対照表に計上しようという話が出ています。
しかし、そうすると、公社における必要なリスクに対して
何十兆円も自己資本が不足し、
これは破綻じゃないかという話になってきました。
格付けはトリプルAですが、
2つとも破綻しているのではないかという噂が流れて、
株価が暴落し、助け船を出さないと
もう破綻だという危ない状況になっています。

もし、これを破綻させるとどういうことになるかというと、
世界中の政府や中央銀行が
外貨準備として公社の証券や保証付き債券を
160兆円ほど持っていますから、これを投売りされれば、
世界中が金融恐慌に陥ってしまいます。
アメリカのポールソン財務長官は、
日本と違ってアメリカでは危機に瀕しても、
政府から自己資本の注入なんてしないと言っていました。
しかし、ここに来てアメリカから世界中に
恐慌を持ち込んだと言われたくない
ということで慌てはじめ、何とか助けるという決断をしました。
ファニーメイとフレディマックに対して貸出しもするし、
自己資本も注入すると立場を変えたわけです。

ポールソン財務長官は、往生際が悪く、
公的資金を投入するが、
納税者の負担にはならないようにする
というようなことを言っています。
しかし、税金をつぎ込んだら、
納税者の負担にならないわけがないので、
数十兆円位は、アメリカ国民の税金つぎ込むという話になりそうです。


■アメリカ経済の将来

この話は大変重要であり、
アメリカの大統領選挙で
共和党と民主党のどちらが勝つのか、
マケインとオバマの、どちらが大統領になるのか
ということにも大きく関わってくると思います。

アメリカの経済は復興、回復に向かっていて、
来年の春位には、サブプライム問題も
何とか解決に向かって行くのでは
という楽観論もありますが、
そんなに早くいく訳はないと思います。
住宅価格の下落もあり、雇用が悪化していますし、
原油価格はまだ高いままです。
そのため、個人消費が失速しています。
インフレが起きると、本当は金利を上げたいわけです。
ヨーロッパもついに我慢出来なくなって、
金利を上げました。
しかし、アメリカはもう上げられない状況です。
FRBは2007年の8月以来続けてきた利下げを
2008年の6月についに停止しました。
インフレ率は4%程度と明らかに2%のFF金利や
2.25%の公定歩合より高いので、
既に実質金利はマイナスになっています。


■新興国と日本の経済予測

新興国も結構困ったことになってきています。
欧米に輸出しているので、
国外で売れる分が減っていますが、
内需が盛り上がって拡大しているので、
いまのところある程度補っています。
しかし、内需で外需の減少全てをカバーできるとは、
到底思えません。
中国GDPの実質成長率もちょっと下がって、
それでも10%位あるのですが、
インフレが8%を超えてきました。
中国も結構大変な状況になってきたということです。

欧米経済のインフレと比べると
日本のインフレはマシかもしれませんが、
日本経済の全体像はかなり困ったことになっています。
日本は、これから人口が半分に減っていきます。
原油高・資源高、食料高で、
消費者物価は上がってきています。
中小企業は価格転嫁が出来ませんから、
結構大変なことになっています。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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