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国吉澄夫教授一覧

中国のカラーテレビ産業の動向 (中国ビジネス/国吉澄夫)

08/07/21

今日は中国のカラーテレビ産業の動向についてのお話です。
テレビの生産とそれを販売する市場の
2つに焦点を当ててお話を進めていきます。

■カラーテレビ生産国「中国」
まずテレビ生産についてみてみましょう。
中国は、世界最大のカラーテレビ生産国です。
世界生産の約40%が中国で生産されています。
台数でいうと、2007年には、8,800万台が中国で生産されました。
ブラウン管型や液晶型、プラズマ型のテレビが製造されています。

中国の国内でのテレビの販売台数は、約3,900万台です。
日本が約1,000万台の市場ですから、
それと比べると約4倍という大きな市場です。
実は、この中国市場が現在、デジタル放送の時代を迎え、
液晶やプラズマ型テレビが、急速に普及しています。
つまり、中国は現在、従来のブラウン管型から
薄型に移行しているというわけです。

中国のカラーテレビ市場で主役を占めているのは、
基本的には中国の地場のメーカーであり、
日本メーカーのシェアは高くないのが現状です。
中国のメーカーがここまで大きくなるにあたっては、
日本メーカーが様々な形で協力しています。
過去ずっと協力しながら、相互補完関係を作ってきた
という話を少しみてみましょう。


■中国のカラーテレビ技術導入の歴史
中国では、1978年の改革開放を契機に、
「カラーテレビの国産化」という大きなプロジェクトがスタートしました。
これは、テレビそのものだけではなく、
テレビを構成しているブラウン管、IC、プリント基板、チューナー
あるいは、フライバックトランスといった部品も全て、
中国の国内で作るというもので、
外国企業からの協力を受けて始まりました。
その中に、日本の企業も入っており随分と技術協力をしてきました。
それから、キットの供給といった形で、
中国のテレビ国産化に対して協力し、1985年頃までに、
中国国内で、カラーテレビ類が生産できる体制が整いました。
その後も、中国企業は、日進月歩の技術に追い付くために、
引き続き日本やオランダのフィリップス社から
技術をどんどん導入していきました。
そうした中で、中国のメーカーの設計技術の向上に
大きな役割を果たしたのが、日本や欧州の半導体メーカーです。
この回路の応用技術者が、
様々な形で設計指導したことが大きく寄与していると思います。
彼らは、中国のテレビメーカーの設計部門に共同開発室を設け、
自分たちの新型チップを紹介しながら、技術指導を行っていきました。
このようにして支援を受けながら成長したメーカーが、
以前に紹介したことがあります四川省のメーカーのチャンホン(長虹)、
あるいはTCL、康佳(コンカ)、ハイシン(海信)、スカイワースです。
これらの有力なテレビメーカーが、技術力を高めていき、
中国の国内でシェアを獲得していきました。
こういったメーカーが使用しているテレビの部品の大部分が
日本製、あるいはヨーロッパ製という状態が長らく続いていました。

日本のメーカーの工場も、もちろん中国にあります。
1990年代半ばから、カラーテレビの中国国内で製造・販売に対する
許認可が下りるようになりました。
日本のメーカーも松下、ソニー、東芝、シャープなどが
中国のメーカーと合弁を組み、進出を果たしました。
しかし、広大な中国マーケットでは後発組であり、
販売網の構築と代金回収の困難というハンディーキャップに加えて、
価格競争の厳しさも相まって、シェアは伸び悩みました。
評論家然とした人は、
「世界に冠たる日本のテレビメーカーは、中国では劣勢」といいますが、
こうした参入に対する障壁が背景にあるわけです。
加えて、法体系も日本と中国では異なるということも踏まえておくべきでしょう。

■液晶テレビの普及
しかし、最近の2,3年で中国の国内市場に大きな変化が起こっています。
劣勢だった日本のメーカーを含めた海外のブランドが売れ出しているのです。
この理由としては北京オリンピックを間近に控え、
液晶やプラズマの薄型テレビの需要が高まっているということがあげられます。
もう1つ重要な要因として、
中国のメーカーが心臓部に当たる液晶のパネルや映像や
信号系のICなどを輸入に頼っているということがあげられます。
つまり、コスト管理をうまく行えないのです。
このような所に、海外メーカーが参入し、
例えばサムソンやソニーが、現在、液晶テレビでは金額ベースでトップに立っています。
こうした傾向が、今後しばらく続きそうです。
アナログ放送からデジタル放送に中国市場が大きく変化し、
市場が広がっている現在、
デジタルコア技術や薄型テレビの機能、
部品の生産技術などの優位性を武器に、
日本のメーカーにも大きなビジネスチャンスが広がっていると思われます。

分野: 国吉澄夫教授 |スピーカー:

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