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温暖化対策(財務戦略/村藤功)

08/05/09

■京都議定書と温暖化対策
京都議定書の約束期間が始まり、
日本でも2008年4月から目標の6%削減に向けて始動しました。
日本は、2008年から2012年の5年間に
温暖化ガスを1990年の基準年の数値に対して
6%削減することを約束しています。
しかし、2006年の段階で排出量は
1990年から6.4%増えている状況でしたので、
6%に6.4%を足して12.4%の排出量を
2006年に比べて下げなければ約束を守ったことになりません。
そのため、さまざまな温暖化対策を行っています。


自国で排出量を削減するのが一番いいのですが、
自国で出来ない場合には仕方がないので
海外から排出権を買って来るという枠組みもあります。
また、発展途上国の取り組みを支援するために、
基金の設立も予定されています。
例えば、アメリカ、イギリス、日本で、
5千億円位を基金にして、風力発電や太陽光など
環境に負担のかからないような発電技術を
先進国から途上国に普及させようという計画があります。
これも、各国が3年位かけて
1-2千億ずつ出しあって進めていく計画です。


■キャップ&トレード
そもそも排出権とは何なのか。
EUで「キャップ&トレード」という制度が今できています。
「キャップ&トレード」の「キャップ(Cap)」とは、
個別の企業毎に付けられる上限のことです。
この位までは温暖化ガスを排出してもいいよ、
という上限の枠が設定されるのですが、
個別企業毎に排出の上限枠を超えて、
更に排出する場合には、排出権をどこかからか
買って来ないと欧州委員会が制裁金を
取る仕組みになっています。今、排出権を買うと
トン当り22ユーロ、大体3,500円位必要となります。
このように、個別企業毎にキャップを設け、
それを超えた分の排出権を買ってくるという方式ですが、
他の国は導入するのかどうか。


■キャップ&トレードに対する日本の反応
日本は最初嫌がっていましたね。
日本では環境対策を長年やってきたので、
これから上限を設定するということになると、
今まで環境対策をさぼっていた会社に大きな
上限枠がセットされることになり、
環境対策を頑張ってきた会社にとっては不公平になると、
日本は個別企業に対する上限枠の設定に反対していたんですね。
ところが最近ちょっと情勢が変わってきて、
まず経団連がいいんじゃないのと言い始め、
次に経産省が個別企業毎の上限枠の設置を
やってもいいと容認しました。


日本政府としては、経団連が容認したので、
個別企業毎の「キャップ&トレード」を
導入することを考える一方で、外から買うことを考えています。
そもそも京都議定書で約束している6%の削減目標の内、
1.6%位は海外から排出権買って来ようという話になっていて、
もう既にインドやスリランカ、エジプト辺りで、
ODA事業で排出権を購入する話になりつつあります。


■排出権をめぐる民間企業の取り組み
日本の民間企業でも排出権の取引を既に始めています。
最近では、「カーボン・オフセット」といって
商品から出るCO2を海外調達した排出権で相殺する方法があります。
三菱オートリース社は、排出権を付けた
営業車リースを始めようとしています。
営業車リースは今までにもやっていて、
営業車を利用することによって排気ガスを排出しますが、
三菱商事が海外から購入した排出権がセットになったリースなので、
営業車を利用することで排出されるCO2が
リースの顧客企業でゼロとみなされることになります。


■世界会議の流れ
世界でもいろいろな流れがあり、
会議がとにかく頻繁に行われています。
日本とEUでもまた新たな国際枠組みを設置すると
最近のニュースで伝えられましたが、
去年の12月にバリ会議があり、
今年の1月にはダボス会議、そして3月には、
G20という主要20ヶ国閣僚級会合がありました。


去年12月のバリ会議では、来年末のデンマーク会議で、
京都議定書の後の合意をしようというスケジュールが決まりました。
そういう意味では、バリ会議やダボス会議、G20や何かで、
デンマーク会議に向けた交渉という戦いが続いているといえます。
日本としてはダボス会議で、
産業別に温暖化ガスの削減可能量を積み上げたらどうか、
と提案して、4月にフランスがいい提案だと乗ってきました。
どうもヨーロッパと日本とで組んで、主導権を取ろう、
ということも考えているようです。
7月には洞爺湖サミットあり、日本としては主導権をとりたいと
思っているところだと思いますが、
本当に上手くいくかなというところです。
先進国と途上国、中国やインド辺りで
かなりのせめぎ合いが続いているような状況ですから。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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