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九州新経済活性化プランの策定(その2) (国際経営・国際ロジスティクス/星野裕志)

08/05/20

2020年の九州のあるべき姿を描き、
そこに達する道筋を示した
九州新経済活性化プランについて、
前回に引き続き、お話します。


■九州新経済活性化プランのキー・フレーズ
九州新経済活性化プランは、
「九州はアジアの課題克服を
リードするフロントランナーを目指す」
をキー・フレーズとして掲げています。
まず、これまでは
福岡にしても九州にしても、
アジアへのゲートウェイや
窓口といった表現に示されるように、
アジアと九州という位置づけ
であったと思います。
今回のプランの中では、
九州はアジアの中にあり、
そのアジアの成長を取り込むという
ポジショニングが明確にされました。


次に、そのスタンスですが、
無理をして競争優位性の構築を
目指すのではなく、独自の路線で、
協調や住み分けを重視しています。
アジアの市場や企業が
大きく成長を示している中で、
同じ土俵で競争するのは
なかなか困難な現実があります。


最後に、どのようにという
方法についてですが、
九州は課題解決の先進地として、
経験を活かしながらアジアに貢献し、
アジアの中で必要な存在になる
ということです。


■課題解決の対応策を活かした九州の独自性
九州が課題解決の先進地である
ということを、もう少しわかりやすく
説明したいと思います。
九州は、
炭鉱の閉山による産業の転換、
深刻な公害問題を発端とする
安全な環境への希求、
昨日もお話した
急速に進む高齢化問題など、
成長するアジア諸国が
これから遭遇すると考えられる
様々な問題を経験してきました。


こうした問題を解決するための
対応策やノウハウを活かし、
今後のビジネスにつなげていくことが
期待できます。
資源のリサイクル、水、安全な食品、
エネルギーの効率的な活用、
地域医療や高齢者向けサービスなど、
安全・安心・健康な社会づくりによって、
アジアへの展開を図ることが
九州の独自性になると考えられます。


■環境整備の5つの提言
プランの中では、
今後の産業と地域の活性化に
必要な環境整備として、
5つの提言がまとめられています。
まず第1の提言は、
人材の確保と育成です。
例えば、新卒者が九州域内に
定着することを促すための
インターンシップなどの
取り組みが挙げられます。
また、アジアを中心とする
留学生の就職をサポートする
仕組みをつくることも重要です。


第2に、異業種間の連携と促進です。
環境やエネルギー産業と
製造業の組み合わせ、医療と食品、
九州の誇る観光業と医療など、
異業種の組み合わせによる
高付加価値化の追求が
求められています。
それぞれの業種では全国平均を
下回る規模の産業であっても、
その組み合わせによって、
新しい産業の創出を図ることが
期待できます。


第3に、九州における
知の集積を活用することです。
産官学の連携によって、
先端的技術の促進が期待されます。
例えば、九州大学では、
水素の技術に関する
高度な研究が行われており、
自動車についても新たな分野の開拓を
計画しています。
こうした技術を応用してくことが
重要といえます。
また、安全性の基準や
標準化の枠組みの設定
といったことにおいても、
リードできる分野がありそうです。


第4に、必ず指摘される問題ですが、
九州の広域的な発展を図る上で、
社会基盤の整備は不可欠です。
先端的な空港や港湾と同時に、
東九州自動車道や過疎地の
コミュニケーション・インフラの整備も、
全体を底上げするためには必要です。


そして最後に、
九州自体の認知度を向上するために、
九州ブランドを含む
様々な情報を発信するといった、
統合的な取り組みが求められています。
おそらく、アジアにおいて
福岡は認知されていても、
九州はほとんど認知されていません。
九州観光推進機構は
その先駆的な取り組みのひとつですが、
九州としての組織的な取り組みを
行っていく必要があります。


この活性化プランが想定している
2020年の時点では、九州に道州制が
導入されているかもしれません。
九州が独自の発展を遂げていくためには、
東京の動きを見るのではなく、
アジアにしっかりと
根ざしていく必要があるという
考え方を共通の認識としておく
必要があると思います。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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