QTnet モーニングビジネススクール

QTnet
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QTnet モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録

村藤功教授一覧

新銀行東京(財務戦略/村藤)

08/04/18

■新銀行東京
新銀行東京(以後、新銀行)については、
石原都知事の責任問題も含めて連日の報道がされました。
今日はその件について詳しく話をしていきます。
まず新銀行は、東京都が1千億円を出し
2005年4月に設立され、現在、破綻の瀬戸際にあります。
東京都が経営をするわけですから、
公的金融機関にしておけばよかったのですが、
民間銀行のような業務をさせたため予想通り失敗したともいえます。


新銀行は400億円の追加出資がないと、
自己資本比率が今年度中に4%を切り、
金融庁の業務改善命令の対象となる
水準に急低下する見通しになります。
東京都は、400億円の追加出資を要請し、
都議会では自民党、公明党が中心となって、
まあ仕方ないと3月末に賛成多数で可決しました。
とりあえず400億円を出すけれども
またお金なくすなよ、というようなことを
言っているわけですね。


■設立の経緯
2005年4月に新銀行は設立されました。
そもそもは、その2年前の2003年4月に、
石原知事の都知事選挙があり、
石原知事の公約として、民間銀行が貸さない先にお金を貸す
銀行を作ることを掲げています。
この公約を実行するために、
新銀行東京が設立されたのですが、
設立当初、新銀行を開業3年で1兆6千億円の
総資産を持つ銀行、規模で言えば
地銀中位行並みの銀行にするという
無謀な拡大目標が掲げられました。
これが間違いのはじまりでしょう。
無理をした結果、
とんでもない不良債権を抱えることになったわけです。

では、設立当初のマスタープラン等は
どのように作られたのでしょうか。マスタープランの骨格は、
石原知事と大塚副知事、そして津島新銀行設立本部長の
3人で作られました。その後、新銀行のトップを務める
代表執行役として、仁司さんをトヨタから招いています。

石原知事は、自分達で銀行の
マスタープランを作っていながら、
今回のように破綻が近くなってくると悪いのは
自分達やマスタープランではなく、
これを実行した仁司さんであると言っているところが、
納得のいかないところです。


■責任の所在
もともと新銀行は石原さんが作った銀行です。
石原知事に責任がないわけがありません。
石原知事と横にいる大塚副知事の2人のトップが
言うことは石原大塚案件という天の声ですから、
他の人達は何を言っても仕方がなく、
知事らの言う通りになることもあったようです。
最初にあったマスタープランは仁司氏ら旧経営陣でなく、
石原知事、大塚副知事、津島本部長が作ったものですから、
マスタープランそのものが評価されるべきもののはずです。
東京都が調査報告書を作り、マスタープランは
すばらしいが実行者としての旧経営陣ら仁司氏が悪いと、
外部者である仁司氏の民事責任や刑事責任等を
問う話が出ていますが、マスタープラン作成者である
石原知事達の責任がなぜ問われないのか分かりません。


石原知事は、トップダウンでの知事の指示が
あったのではないかという議会での指摘に対して、
「私の独断で都政が動くわけではない」と
はっきりと発言していますが、1千億の予算を出して、
自分の公約で銀行を作っているのですから、
指示がなかったとは思えないですね。
石原知事、大塚副知事、
そして今回代表になっている津島さん。
この最初のマスタープランを作っている方達が、
自分には関係ないと責任回避の発言をしていることは、
到底理解できません。


もちろん、仁司氏もプランの実行をした人ですから、
全く責任がないとは言えません。
ただ、東京都が自分達でマスタープランを
作った後に連れてきた仁司氏に対して責任を転嫁し、
自分達には責任がないというのは、どうにも解せません。
仁司氏にも責任があるかもしれませんが、
その前に、マスタープランを作った知事達の責任はどうなるのか、
これを明らかにしないと、不公平な話になると思います。


■今後の新銀行東京の方向性
今後の新銀行の方向性ですが、
議会で400億円を出資することが決まりました。
現在まとめられている再建計画では、
今後は貸し出しを約80%、預金を約95%減少させて、
貸出金を400億円と規模を信用組合並みにすることになっています。

東京都としては、うまくいかないことが
分かったので、なんとか逃げたいという気持ちのようです。
本当のところは、縮小してどこかに引き取ってもらおうと
思っているという見方があります。
これまでに11くらいの金融機関に提携を打診して
すべて断られているようですし、縮小しても、
引き取ってくれるかどうかはわかりません。


一部には、清算したほうが
いいのではないかという声もあります。
今、新銀行東京が何をやろうとしているのかが
わからなくなっています。もともとは東京都の税金ですから、
公的金融機関として、民間金融機関に
できないことをすることができましたし、そうすべきだったと思います。
石原知事の立場から言えば、公的金融機関ではなく、
東京都ブランドの民間銀行でけしからん
民間銀行を叩きつぶすために、新東京銀行を作りたかったようです。
そこがそもそも大間違いだったのでしょう。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP