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増田健太郎准教授一覧

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対人援助職のバーンアウトの対処と予防 (臨床心理学・教育経営学/増田)

08/02/06

今回は、
対人援助職のバーンアウトの
対処と予防についてお話します。


■対人援助職(ヒューマンサービス従事者)のバーンアウト
まず、対人援助職とは、
看護師、学校の教師、臨床心理士、
福祉職など、人を援助する仕事
をする職業を指します。
バーンアウトは、
燃え尽き症候群とも呼ばれ、
これまでは一生懸命に仕事や勉強に
取り組んできたのに、ある日突然、
燃え尽きてしまい、意欲を失い、
感動もしなくなるといった状態のことです。
バーンアウトは、
対人援助職に多く見られる現象で、
特に看護師さんに多くみられ、
研究が進められてきました。
看護師さんは懸命に看護をする中で、
患者の死に直面し、
自分の努力は一体何だったのかという
自問自答を繰り返して、
急に意欲を失ってしまうこともあると思います。


対人援助職の方の場合、
自分が一生懸命に行ってきた仕事に対して、
その結果が自分の職務満足感に
繋がらないことも多々あります。
例えば、
臨床心理士の仕事は、人の悩みを聞いたり、
その人が一生懸命に生きていけるように
援助する仕事です。
カウンセリングを続けても
すぐに効果があらわれないこともあり、
また、相談に来た方は、
心の健康を取り戻して元気になると、
当然ながら相談室には来なくなります。
これは喜ばしいことなのですが、
臨床心理士は、喪失感を感じて、
自分の行ったことを問い返すこともあります。
学校の先生の場合も同様に、
子どもたちのために懸命に尽力しますが、
うまく行かないことも多々あるかと思います。
また、卒業させた途端に、
子どもたちとの関係は途絶えてしまいます。
その時に、これまで行ってきたことを、
うまく自分の中で整理できればよいのですが、
虚しさが残ってしまうこともあります。


現在では、
バーンアウトは対人援助職に限らず、
どの職業でも起こりうるといわれています。
今はちょうど受験シーズンの最中ですが、
受験生の方も一生懸命に勉強して、
受験を終えた後に全てやり尽くしたという形で
目標を失って、意欲を失ってしまう
可能性もあるでしょう。


■バーンアウトの対処と予防
燃え尽きてしまい、エネルギーもなくなると、
うつ病になってしまうこともあります。
バーンアウトを予防するためには、
まず仕事を終えたときの
充実感を大切にすることです。
自分ではその仕事の意味や充実感を
感じられないことも多いのですが、
周囲の人の一言で、多忙感が充実感に
変わることも多いものです。
そして、しっかりと休養をとることも重要です。
あるいは、お酒を飲みながら
友人や同僚とコミュニケーションを交わすことも、
適切なコーピングだと考えられます。
逆に、誰ともコミュニケーションをとらず、
自分のストレスを紛らわせるために、
一人孤独にお酒を飲むことが習慣化すると、
アルコール依存症になる危険もあります。


ストレスの場合と同様、
燃え尽き症候群を防ぐためにも、
他者とコミュニケーションをとることは重要です。
職場や家庭で、ストレスについて
日常的に話題にするようにしましょう。
自分の中だけで、ストレスを
抱え込んでしまうことは、最も危険です。
バーンアウトは個人要因だけでは解決できない、
社会構造、職場の問題であることを
もっと認識すべきでしょう。


前回、
学校の先生たちのお話をしましたが、
現在の社会は、教師だけでなく、
企業も子どもたちも全てが多忙化しています。
人とゆっくり話をするための時間が、
なかなか確保できないと思います。
だからこそ、あえて意識的に、
人とゆっくり話をする機会をつくるのです。
愚痴も含めて、
人と様々なことについて話をすること自体が、
重要なストレスコーピングになりますし、
燃え尽き症候群の予防にもつながります。
同僚や家族など、
話をすることができる相手を、
常に見つけておくことが必要です。


仕事が終わった際には、
必ずシェアリングを行うことを
提案したいと思います。
シェアリングは、
反省会とは性質が異なります。
反省会では、
どうしても悪かったところの指摘に
終始してしまいます。
シェアリングは、
情緒と情報の共有を目的とし、
悪かった点だけでなく、
良かった点を必ずフィードバックすることが
重要なポイントです。
このように、話をする相手と仕事の意味を
共有する機会を確保することが重要です。


■公開講座 対人援助職のバーンアウトの対処と予防
「対人援助職のバーンアウトの対処と予防」をテーマに、
九州大学大学院人間環境学府
実践臨床心理学専攻の主催で、
文部科学省「社会人の学び直しニーズ
対応教育推進プログラム委託事業」と
「九州大学専門職大学院コンソーシアム公開講座」
の一環として、2月24日(日)に
特別講演会(公開シンポジウム)を開催します。
教職員、対人援助職、福祉職、保健医療職の
バーンアウトがどのようなものか、
またその予防と対処の仕方について、
専門家を交えてディスカッションを行います。


講師 教師のバーンアウト
      新井 肇先生(兵庫教育大学大学院教授)
    福祉職とバーンアウト
      川﨑二三彦先生 (子どもの虹情報研修センター 研究部長)
    保健・医療職とバーンアウト
      田中マキ子先生(山口県立大学大学院 教授)
    総括コメント
      荒木登茂子先生(九州大学大学院 教授)


2008年2月24日(日)13時-16時30分
九州大学 医学部百年講堂 大ホール
入場無料 参加申し込みの必要があります。
対   象 臨床心理士、教職員、看護職、
       福祉職、企業の人事担当者、管理職の方です。
申   込 九州大学総合臨床心理センターの
       ホームページをご参照下さい。


Eメールまたは、
ファックスで受け付けています。
申し込み締切りは、2月10日(日)必着です。
2月6日現在、まだ、座席に余裕があります。
早目の申し込みをお願い致します。


問い合わせ先
 九州大学 スキルアッププログラム 事務局
 manabpde@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp
 FAX専用 092-642-3588
  担当 岩山 真理子

分野: 増田健太郎准教授 |スピーカー:

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