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村藤功教授一覧

税制改革(財務戦略/村藤)

08/01/04

今日は、新年1回目ということになりますが、
毎年、年が変わる頃になると、税金の話が盛り上がります。
税金は、もちろん悪という訳ではないのですが、
それがどのように運用され、使われているのか、
そして、そもそも税金というのは、
どういう原則に基づいて行われている制度なのか、
そういったところから改めてお話ししていきたいと思います。


■「租税三原則」と税収の見込み
税金には「公平」、「中立」、「簡素」という
「租税三原則」というものがあります。
ところがアメリカで「中立」をやめて
「成長」に変更しようという動きがあって、
日本でもそれに追随しようという議論が出てきました。
「成長」ということになると、
経済成長などの政策目標に合わせて
税制を変更しようという話になってくるわけですが、
そうすると、成長のための政策減税に対して
チェックが甘くなると困るなどの議論が起こり、
結局「中立」のままで行きましょう
という話で現状は落ち着いています。


そもそも予定通りの税収が得られるのか
ということについては、
最初、政府としては結構いけるのではないか
というようなことをいっていました。
しかしながら、2006年度の税収は予定を下回ってしまい、
2007年度の収入見込みも非常に怪しくなってきています。
政府は、企業の景気が回復しているため
税収も伸びるはずだと考え、
税収の見込みは保守的なので
見込は絶対に達成できるはずだと考えていました。
ところが、突然サブプライム問題が爆発してしまったのです。
そのために、グローバルにいろいろなところがやられて、
株式市場が下がって、円高になって、
景気の見通しが厳しくなってきたという中で、
あっという間に、国税の収入が見込み通り取れないだろうと、
地方税も無理ではないか
というような状況に今なってきているのです。


■「成長路線」から「増税による財政再建」への転換
安倍前総理が「成長路線」と言ったわけですけども、
そもそも財政再建のための選択肢は成長しかないのでしょうか。
元々、安倍総理や中川幹事長が成長路線を支えていたわけですが、
安倍総理が福田総理に変わって、
その裏で力を付けてきたのが、
与謝野財政改革研究会長とか、谷垣政調会長といわれる、
増税で財政を再建しようという人たちです。
最近は、成長なのか、増税による財政再建なのか
という戦いになってきて、
いなくなってしまった成長路線派に対して、
増税による財政再建派が力を強めているという状況です。


特に、2009年度から基礎年金の国庫負担を
1/3から1/2に引き上げるための財源を
どうするのかというところで、
消費税を、他の国に比べて日本は低いですから、
上げようという意見が強くなってきています。
本当は、それしか選択肢ないのかというと、
そんなことは全然ありません。
財政再建は、別に消費税を上げずに、
公営事業を民営化して小さなバランスシートを
作ることにより行う選択肢もあるのですが、
そういう声はぜんぜん聞こえてきません。
これは私がずっと言い続けていることなのですが、
誰も当たり前のことが見えないという状況で、
困っているところなのです。


■納税者番号制の導入問題
税金については、そもそも「納税者番号制」を
どうするのかという問題も残っています。
これは昔、プライバシーの保護の観点から
問題があるといって一度つぶされた経緯があります。
しかしながら、一体誰のプライバシーを保護しよう
というのでしょうか。
脱税しようとしている人たちのプライバシーを
保護することに大きな意味があるとは思えません。
海外を見ても、イタリアには納税者番号があるし、
アメリカやカナダは社会保障番号
すなわちソーシャルセキュリティナンバーを
納税者番号に使っています。
スウェーデン、デンマーク、韓国、シンガポールでは、
住民登録番号というのを納税者番号に使っていますので、
実はほとんどの国で、納税者番号を実質的に保有しているといえます。
そういう意味では、脱税した人のプライバシーを守る必要などないということで、
再び納税者番号制が盛り上がってきています。
私個人としては、納税者番号制は導入すべきだと思っています。


■「道路特定財源」の使い途
年末から盛り上がってきたのが、
道路特定財源をどうするのかという問題です。
特に、石油の値段が上がってきたので、
どうして車のガソリンがこんなに高いのかを考えると、
150円のうち50円くらいはそもそも税金ではないかということです。
揮発油税を初めとし、軽油引き取り税や自動車重量税などを
全部含めた「道路特定財源」は、5兆6,000億円あります。
その5兆6,000億円の使い途について、
国土交通省、道路関係議員、地方自治体などは、
道路を作りたいと言っています。
それに対して、小泉さんたちは、
そんなのは要らない道路ばかりだからもう止めて、
一般財源化して借金の返済に回したらどうか、
というような話を始めていました。
また一方で、ガソリンがあまりに高くなってきたので、
一般財源化するのではなく、
暫定税率を廃止して高いものを
安くしたらいいのではないかという意見も出ています。
揮発油税は暫定税率ということで
元々の税率の2倍になっており、
この揮発油税についての暫定税率の期限が
来年の3月くらいに切れるのです。


■3つの利害関係者
そういう意味では大きく分けて
3つの利害関係者がいます。
道路整備をしたい人、一般財源化したい人と、
それから暫定税率を廃止したい人という
その3つが戦っているわけです。
民主党がまだ暫定税率廃止の方向で
戦うつもりのようですが、
政府と自民党のあいだでは合意が12月に1回なされました。
これはどういうものかといいますと、
道路建設については、使うお金を
ちょっと下げてやろうということになりました。
10年で65兆円と国土交通省が言っていたのを、
ちょっと下げて59兆円以下でやりなさいということで、
これについては、多少下がりましたが、
ほとんどそのままといっていいでしょう。


それから一般財源化については、
2007年度は1,800億円一般財源に回したのですが、
2008年度は1,800億円超にして、
少し増やしなさいということになりました。
ただ、全体から見てみると増分は
ほんのピーナッツみたいなもので、
小さくて目に見えない様なものです。
一般財源化はほとんどしていません。
それから暫定税率を廃止しろと言っているのは、
高速道路を使っている利用者等が
あんまり高いので怒っているということです。
これに対して、暫定税率を廃止したくないのは、
財務省も国土交通省も一緒です。
そちらのほうで手を組んで、
じゃあ高速料金をちょっと下げるということで
理解してくださいということで、
夜間だとか長距離利用者向けの
高速料金を下げるということで、
10年くらいで2兆5,000億円位に高速道路料金を
下げにまわそうというあたりで、
とりあえず妥協を図りつつあります。
全体にしてみれば、道路を造る、
ばらまき行政がどうも復活しつつある
という状況のようです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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