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ノバ(NOVA)の破綻 (財務戦略/村藤)

07/11/23

■ノバの破綻
10月26日にノバが破綻し、
大阪地裁に会社更生法の適用を申請する
という話がありました。
そこで選ばれた保全管理人は、
更生法よりもどこか別の会社に
営業を引き受けてもらった方がよいということで、
ジー・コミュニケーションの子会社である
ジー・エデュケーションに
譲渡することになりました。


そういう意味では、
ノバは会社更生法の適用を一度申請しましたが、
営業譲渡した後にノバ本体は清算されますので、
更生手続きは行わないことになります。
一方、引き受けたジー・エデュケーション社では、
経営破綻前に670あった教室のうち、
まず30くらいの教室で授業を再開し、
年内に100教室、来年中に
200教室体制を目指す予定です。
授業再開は、名古屋から始まって
大都市から徐々に進めるようですね。
九州では、北九州の小倉、佐賀駅前などになります。


■ジー・コミュニケーション社
ノバの営業を引き受けた会社は
どんな会社かというと、
親会社であるジー・コミュニケーションは、
グループ全体で連結の売り上げが459億円、
経常利益が23億円の会社です。
設立してから10年ほどですが、
M&Aを繰り返しいろいろな会社を
買収して成長してきました。


主に外食と教育の2つの事業を
運営している名古屋のグループです。
外食としては、ジー・テイスト(昔あった平禄寿司など)、
グローバルアクト(「ちゃんこ江戸沢」や「えん屋」)、
ジー・ネットワークス(「オムライス亭」)、
焼肉屋さかい、ジーフードなどがあります。
教育系ではEC英会話、
ITTO個別指導学院、がんばる学園を運営しています。


■ノバの概要
今回の経営破綻は、
ノバの経営が悪かったわけですが、
少しさかのぼってノバの設立から
おさえていきたいと思います。
まず、ノバの設立は1981年。
もう20数年経っていますが、
今では生徒数のシェアは業界全体の半分以上と
日本最大の英会話学校になっています。
テレビでも宣伝をやっていますね。
「駅前留学」、「お茶の間留学」、「ノバうさぎ」など有名です。
「We are NOVA-tomo right?」という宣伝は、
今年の初め2月まで流れていました。


ノバは1年を超える長期契約制度に基づく
低価格のレッスン制度を導入しており、
長いものは3年契約の前払金を、
受講料として受講者に支払わせていました。
しかし、講師の確保が追いつかなくて、
受講料を支払っても教室の予約が取れない
という苦情が多発するようになります。
そして予約が取れないのであれば
中途解約をしたいという訴訟が相次いで、
今年4月には、
最高裁が受講者に不利な約款を無効と判断しました。
経済産業省では、1年を超える新規契約は
トラブルが多発するのでやめなさいと、
1年を超える新規契約を
6ヶ月間停止する命令を出すことになります。
これが今年の6月頃です。


■銀行と監査法人の撤退
この辺から
やばいぞという話になり、銀行が逃げだします。
ノバの主要銀行は三井住友、りそなだったのですが、
6月の業務停止命令以降は追加融資にも応じていません。
今年の3月期にノバが2期連続の赤字に転じた時点で、
不良債権として貸倒引当金を積んでいて、
そのまま逃げてしまいます。
その前には、監査法人が逃げ出しています。
監査法人はもともとあずさ監査法人という
大手だったのですが、去年の11月に、
業務量が多いことを理由に辞任しています。
これが本当の理由か嘘の理由かはよく分かりません。
その後は大阪のアクティブ監査法人という
会社が監査を引き受けることになりますが、
銀行も監査法人も逃げだして、
ノバが何をしているのかよく分からない状況でした。


■経営の悪化と前社長猿橋氏の不自然な株取引
ノバの経営は、猿橋前社長のワンマンで
他の取締役達はよく分からないという状況の下、
まず資金繰りの悪化となって表れました。
ノバには、普通の従業員と外国人の講師とがいますが、
両方の給料の不払いや、教室の家賃滞納が発生しました。
この辺りで、大阪の労働基準監督署から
それは労働基準法違反だと言われるようになります。


株については、
猿橋前社長と彼が支配するノバ企画の保有比率が、
9月の半ば時点の71.59%から、
9月の末に19.71%に低下している
ということが判明しました。
もし売ったとすれば、
金融商品取引法(昔の証券取引法)に基づいて、
売ったことについて大量保有報告書というものを
提出しなければいけません。
ところがこれを提出していないということで、
一体何が起こったのか
よく分からないことになっています。
今後、金融庁や証券取引等監査委員会が
本格的に調査することになると思います。


また、コンサルティング会社に
株を預けていたという不自然な取り引きの話もあります。
猿橋前社長とノバ企画が
7月末から8月中旬にかけて、
東京都内の投資コンサルタントに
2200万株を委託したのですが、
そのうち800万株が返還されずに
行方不明になっているそうで、これもさっぱり分からない。


さらに、よく分からない部屋を
社長が持っていたことも明るみに出ていますね。
茶室、サウナ、ミニバー、カウンターキッチン、
そしてダブルベッド付きのベッドルーム、
さらに隠し部屋(和室)もついた
豪華な部屋が大阪と東京にあったそうです。


■更正法申請の引き金
このような状況の中で、
取締役が3人集まり臨時取締役会を開いて、
社長解任、更生法適用の申請を決議したことが
今回の引き金ですね。そして、
保全管理人としては、更生困難と見て
スポンサーの引き受け手を探したのですが、
もともとあった670の教室のうち、
引き受けたジー・エデュケーションは
まず30教室から始めるという話になっています。
これは、ほとんどの教室が再開できないという話で、
受講者、講師・従業員にとっては大変なことですね。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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