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ベスト電器をめぐる戦い(財務戦略/村藤)

07/10/26

M&Aや企業の提携についてはこれまでにもお話してきましたが、
今回は、福岡市にある会社が大きな動きを見せているということで、
ベスト電器をめぐる戦いについてお話をしたいと思います。


■ベスト電器をめぐる戦い
私は、実はベスト電器には特別な愛着があります。
4年半くらい前、九大のビジネススクールに赴任した時に、
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機等の家電製品は
全てベスト電器で調達したからです。
東区の3号線沿いのYou Me タウン博多の横に本社があり、
九大にも近いのです。
ベスト電器は九州を代表する会社のひとつだと思っています。
ところが今、そのベスト電器が揺れています。
まず、今月10月の始めに、
ビックカメラがベスト電器の第三者割当増資を引き受けて、
9.33%を購入することになりました。
ビックカメラといえば、業界2位のエディオンと
お互いに3%の持ち合いをしている状況です。
それを聞いてケンカをしかけているのかと怒ったのが、
業界1位のヤマダ電機でした。
ヤマダ電機としては、
4年くらい前からベスト電器が欲しくてしょうがなくて
提携を持ちかけていました。
実際には、提携というよりも
傘下に納めたいと考えているようです。


ヤマダ電機としては、
郊外型の出店に限界が出てきているので、
九州に強くてアジアにも店舗を沢山持っている
ベスト電器のようなところが
欲しくてしょうがないというところです。
そこで、いろいろと話を持ちかけていましたが、
ベスト電器の方は嫌だと言って拒否していました。
ベスト電器としては、ビックカメラのように、
とりあえず9.33%位は買うけれど、
その後、買い増しはしないと言ってくれるところが
気持ちいいわけです。


■ベスト電器の現状
現状としてベスト電器は
家電量販店では7位という位置です。
先程もお話ししたとおり、アジアにも展開していますが、
それで大きく広げすぎたのが
ちょっと痛かったという話もあります。
しかし、その一方で、やはり九州では小売りで
9年連続ナンバー1という実績もあるわけです。


ベスト電気が今後どうすべきかという問題は、
家電量販店の業界で現在ある10社もの企業全てが、
本当に生き残れるかという問題に関わっています。
放っておくと、東京あたりの大手が攻めてきて、
九州は大きな企業の一部になってしまうというパターンが、
過去にも他の業界でいくつか起こっています。
九州勢としては、これは少し不愉快な話ですから、
できればベスト電器が攻めていって、
トップ3~4社の中の1社になるという形が
望ましいのではないかという感じがします。


そのベスト電器も東京のさくらやを
傘下に納めたということが以前ありました。
今回のビックカメラとの提携というのは、
ビックカメラがカメラ系ということもあって、
さくらやの再建にある程度効果があるはずだと思われます。
特に第三者割り当てで少しお金が入りましたので、
それをさくらやの財務改善、借入返済に使う予定のようです。
さくらやは、買収して再建する予定があまり上手くいかず、
ビックカメラとの提携が役に立ちそうな状況なのです。


■ベスト電器の株主とヤマダ電機の動き
ベスト電器の株主は、
西日本シティ銀行、日本生命、第一生命などが、
2~3%持っている状況で、
機関投資家が中心で所有割合の細かい株主ばかりのようです。
本当は買収されるのが嫌だとすると、
それなりの安定株主をかなりそろえておかないといけないのですが、
むしろヤマダ電機が6.47%まで持っている状況です。
ヤマダ電機は、ベスト電器に買いますよと通告せずに、
密かに市場で買い集めてきたようです。
ある企業の株式を5%買うと、
5%ルールというのがあり、
大量保有報告書というのを出さなくてはいけないため、
5%買った段階でバレることになります。
敵対的な買収をしようとすれば、
まず5%までマーケットでこっそりと買って、
次に大株主から市場の外で相対取引をしたり、
あるいは「市場内立会外取引」といって、
昔ライブドアが使って騒ぎになった方法を使って1/3まで買って、
1/3を越える場合には、テイク・オーバー・ビッド
すなわち公開買付をしなくてはなりません。
そうやってTOBに移るパターンが
敵対的買収をしかける場合の一番普通のルートです。


■ベスト電器とヤマダ電機、両社の思惑
今ヤマダ電機がとりあえず持分法適用会社になるまで
買い増しをしたいといっています。
本当は持分法適用会社にとどまらず、
40%以上買って子会社にしたいようです。
40%を買ってしまったら、
ベスト電器はその実質的支配下に入ってしまいます。
現に共同購入も一緒にやりたいということを言っており、
ヤマダ電機はやる気満々という状況です。
これに対して、ベスト電器がもし
どこかに助けてもらおうという話になると、
ビックカメラが最大株主ですから、
ビックカメラと持ち合いをしている
エディオンだという話になりそうです。
しかしながら、業界2番手のエディオンが助けると言ったら、
ヤマダ電機ではないですが、
エディオンの傘下に収まってしまうという話になりがちで、
これも九州人としては今一つ面白くありませんね。


ベスト電器としては、やはり自分で
本社としての独立性を維持していきたいということで、
防衛策をどうするのか考えている気配があります。
例えばこの春に、20%超の株式が取得された時に、
企業価値が損なわれそうな場合には、
自社株を増やすという防衛策を導入した所なので、
これを使うことを考えているようです。
ただ、同じ業界なので、企業価値が損なわれるかどうかは疑問で、
防衛策が認められるかどうかはちょっと怪しいところです。


ヤマダ電機は、少し時間を掛けても、
隙を見て買い増ししていくという形で、
いずれ傘下におさめてやるという気持ちに見えます。
ヤマダ電機は業界のトップでありながら、問題を抱えています。
ヤマダ電機の郊外型店舗の出店というのは、
これからの少子高齢化時代を迎えて、
限界に来ていると思われるからです。
だから、ベスト電器のように、
九州でそれなりのマーケットをちゃんと押さえていて、
アジアにも進出しているというようなところが欲しいようです。


■今後の家電量販店業界はどうなるか
今後の家電量販店業界がどうなるかといえば、
やはり他の業界と同様に
3、4社しか生き残らない可能性が高まっています。
私も昔、東京では秋葉原の石丸電器という所で
テレビや洗濯機、冷蔵庫などの家電製品を買っていたんですが、
気がつけば石丸電器はエディオンの傘下に入っていました。
ビックカメラもエディオンと提携しているわけですが、
いくつかにどんどんまとまっていってしまうわけです。
消費者としては、家電を買う場合に、
どこで買っても品物はそれほど変わらないので
安いほうが嬉しいわけです。
家電の量販店は規模が大きくなれば、
家電メーカーに「沢山買ってあげるから安くしてくれ」
ということが言えます。
みんな大きくなって家電メーカーから安く買って
消費者に安く売って勝ち残ろうとしているわけです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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