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新司法試験と法科大学院 (国際企業法務/岡田)

07/10/09

■新司法試験の合格発表
今回は、
まず新司法試験の合格発表について
お話したいと思います。
9月13日に、第2回目の新司法試験の
最終合格者が発表されました。
全体の合格者数は1,851名、
そのうち、
九州大学の法科大学院からの
合格者数は29名でした。
全国平均の合格率が
40.2%であるのに対し、
九州大学の法科大学院の合格率は
39.2%です。
これは、なかなか良い数字ではないかと思います。
慶応大学の試験問題漏洩がなければ、
全国平均を超えた合格率を
達成していたかもしれません。


■新司法試験と法科大学院
改めて、
日本の新司法試験のシステムについて、
ご説明します。
これから弁護士や裁判官を目指す方には、
参考にしていただきたいと思います。
2年前から開始された新司法試験は、
以前から実施されてきた現行の司法試験とは、
いくつかの点で異なっています。
第1に、
法科大学院を卒業した者でなければ、
受験資格がありません。
第2に、
試験の受験回数が最大3回までと
限界が定められています。
予備試験を受けた後に、
もう一度受験するという方法もありますが、
原則として3回までしか受験できません。


こうした
新司法試験のシステムの中で、
法科大学院は
非常に重要な位置を占めています。
4年制大学または
それに相当する教育機関を
卒業していれば、
履修した学部を問わず、
法科大学院の入学試験を
受けることができます。
つまり、
学部で法学を履修していなくても、
法科大学院に入学し、その後、
司法試験に挑戦することが
できるのです。
法科大学院には、
どちらかというと
従前に法学を履修していない方向けの
3年制の未修者コースと、
すでに法学を履修した方
あるいは、
これまで司法試験の勉強を続けている方向けの
2年制の既修者コースがあります。
九州大学では、
未修者コースと既修者コースの定員が、
それぞれ50名です。
入学試験は、コースごとに実施されます。


未修者コースの入学試験では、
法律に関する内容は問われず、
全国一律の適性試験と
大学独自の論文試験と面接試験が
行われます。
既修者コースでは、
法律に関するいくつかの科目について、
試験が実施され、
その成績に基づいて
合格不合格が決定されます。
つまり、
2年間で法科大学院を卒業して
司法試験を受験するという道と、
3年間じっくり学んでから
司法試験を受験するという道が
用意されているということです。
どちらのコースを選ぶにせよ、
九州大学を含め、
全国の多くの法科大学院では、
学修室が24時間開放されており、
学生達は死に物狂いで勉強しています。


特に、社会人を経験してから
法科大学院に入学した人達は、
人生の大きな転換ですから、
必死です。
九州大学の法科大学院には、
学生が1学年100名、
全体で300名いますが、
そのうち37、38%が
社会人を辞め、リスクをとり、
貯金を叩いて入学してきた人達です。
今回の新司法試験に合格した
29名の中には、
元社会人の学生が数名いましたので、
本当に嬉しく思います。


新司法試験のシステムは、
いままでの司法試験と同じように、
短答式と論述式で構成されています。
短答式試験に合格した後に、
論述試験を受けて合格すれば、
司法修習生として採用されます。
その後、
全国のどこに配属されるかは
わかりませんが、
各都道府県で約1年間の
修習を行います。
この期間に
就職先を探すことになります。
そして、修習を終えて、
弁護士事務所、検察官、
裁判官などに就職するというのが、
現在の新司法試験を受けた場合の進路です。


■法科大学院制度についての見解
法科大学院制度は、
1980年末から議論されていた
司法制度改革の一環という
趣旨で導入されました。
司法制度改革が起こった理由は、
より広い視野を持つ法曹人、
あるいは国際的視野を持った法曹人、
そして人の痛みが分かる法曹人を
育成しなければならないという
要請に応えるためでした。
その改革の1つとして、
日本にも
アメリカ的な法科大学院を
設立することになったのです。
しかし、残念ながら、
日本の法科大学院は、
試験の波に飲まれてしまい、
徐々に予備校化しつつあるのが現状です。

分野: 岡田昌治准教授 |スピーカー:

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