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ベンチャー企業の戦略:先行者利得(ベンチャー企業/五十嵐)

07/09/17

■ベンチャーの戦略
今日は、具体的な話をしながら
ベンチャーの戦略論を紹介したいと思います。
今後は、戦略だけでなく、
どうやって人間を集めて組織を組立てるか、
どうやって資金調達をするかということも
順番にお話ししていきたいと考えています。
その前提として、今回は
「どうすればベンチャーが勝てるか」
ということをみなさんと考えましょう。


ベンチャー企業は、
大企業を凌駕する可能性と潜在能力を
秘めています。しかし、
ゼロからスタートするわけですから、
最初は誰でもわずかな経営資源のやりくりから
事業化に着手するということになります。
その中でベンチャー企業は、
どうやって大企業と戦って行けば良いのでしょうか。


■新しいマーケットで先行するベンチャー企業と追随する大企業
先週、スキャナの代わりに、
携帯カメラで撮った画像を
きれいにしてくれるベンチャーや
メロディを認識して曲を教えてくれる
ベンチャーの話をしました。
このようなサービスは、
これまでは存在していないマーケットです。
存在していなかったマーケットに関して、
本当にビジネスになるかどうかは誰にも分かりません。
大企業であれば、
失敗すると上司から責任を追及されるので、
新しいマーケットに進出することは難しいと思います。
そこにベンチャーの付け入る隙があります。
一方、ビジネスになると
わかった瞬間に大企業は
必ず参入するという裏返しでもあります。


インターネットのプロバイダーも、
1番最初は小さなプロバイダー会社ばかりでした。
しかし、最終的に残っているのは
SONYがやっている「SONET」だとか、
通信会社や大手家電メーカー等の
やっているものばかりです。
これは必然と考えるしかないでしょう。
では、どうすればベンチャー企業が
後から出てくる大企業と戦って
勝ち残っていけるのでしょうか。


ベンチャーは先行者として、
そのマーケットに入っていますから、
先行者が有利なふうに動けばいいということになります。
先行者有利が働くことによって、
後から入ってくる物に対してガード出来れば
良いわけです。そういう考え方を
「First-mover Advantage(先行者利得)」といいます。


■先行者利得をいかに守るか
では、どのようにして
先行者の利得を守るのでしょうか。
先行者は、先行者自身が有利になるよう
しむけることと同時に、後から続く追随者(フォロワー)が
どうして有利なのかということを、
両方見ておく必要があります。
つまり、先行者が有利で後から続く者が
不利になる戦略を考えていくことになります。
ケース・バイ・ケースで絶対にこれだ
ということはありませんが、
少なくともそういうことを考えながら
常に動く必要があることを、確認しておく必要があります。


■先行者を有利にするための方法
先行者利得を守るためには、
3つの手法があります。まずは、
技術的なリーダーシップを取ることです。
その中で大きなテーマの1つは特許を取ることです。
そして、先行して誰もやらなかった技術を
持っているわけですから、それだけ
人より先にいろいろな知見が蓄積されています。
それによって、人よりも先に行くことができますね。
だからどんどんと人より先に行き、
技術的なリーダーシップを確保してしまう。
ある意味ではスピード勝負です。
そういった考え方が1つあります。
気を緩めることはできません。
1回勝ったといっても、大企業は、
物量に言わせてお金と人をどんどんかけてきますから。


3つ目には、経験曲線です。
ものを作るとき、最初に作るときには、
経験がないので時間がかかります。
しかし、たくさん作れば作るほど、
作り方に慣れてきますので、
それだけ安く大量に作ることができますね。
これを経験曲線といいます。
他社がその経験曲線に到達する前に、
自分のところが経験曲線によって
より上手く作れるようになれば、
コスト競争力が増し、技術的な有利性を高めることができます。


今のお話、大体先行して
リーダーシップを取っていくという事に
なりますけど、それ以外だとどんなことがありますか。

他にも、希少な資源を先取りすることも重要です。
例えば、九州の熊本産の牛乳。
これが1番おいしいとします。
しかも阿蘇山脈の南麓かどこかの牛が1番おいしい。
であればその南麓の牛から牛乳を取る権利を
全部契約で取ってしまいます。
そうすると、他のメーカーは、
そこの阿蘇山の南麓の牛のお乳というのは
出すことが出来ません。それによって
先行者利得が確保できますね。


■考慮すべき先行者の不利な点
一方で先行することで、
不利になることも4つほどあります。
1つ目は先行会社が投資をしているため、
後発の会社がただ乗りできるケースがあります。
例えば、バンドエイドというものを
ジョンソン&ジョンソンが消費者に広めてくれた場合、
バンドエイドを張って傷の手当てできることを
消費者は教育されます。ですから、
他社が同じような商品を出すときには、
あのことかと分かりますので、
消費者を教育する手間がいりません。


2つ目に、ある技術で出来れば、
それが出来たことによってこれも出来るということが分かります。


3つ目には、1度出来上がった
お客さんのニーズは時代とともに変わることは
よく起こります。その場合には、
先行者がニーズの変化について行けないということも
起こります。昔のメインフレームの
大型コンピューターのメーカーが、
パソコンに出ていかなかったというように、
成功すれば成功するほど、
なかなか変えられないということも起こります。
そういった場合にはかえって
後発の方が有利ということになります。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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